武器は膨大な読書量と抜群の記憶力…服役中も中国古典を読破した

武器は膨大な読書量と抜群の記憶力…服役中も中国古典を読破した

府中刑務所から出所し、名古屋駅に到着した、山口組の山清司若頭(C)日刊ゲンダイ

【山口組分裂と抗争のキーマン 高山清司という男】#3

 6代目山口組の司令塔として畏怖される山清司若頭だが、その素顔は意外と知られていない。

 それもあって、世間を賑わせた昨秋の出所以後、反対勢力からその恐怖イメージを増幅させる情報が盛んに流されている。

 そのひとつが、「出所直後に直系組長が揃って出迎えた放免祝いで執行部や直参を叱責、宴会が凍りついた」というもの。ところが、裏を取ってみるとそんな事実はなかった。

 山若頭の服役中に直参に引き上げられた、身内の弘道会出身で旧知の某直系組長に「なんでおまえがここにいるんだ、そこに立っておけ」と冗談を飛ばして笑いを誘う場面があったのは確かのようだ。

 関係者が口を閉ざすので山若頭の実像が伝わってこないことをいいことに、「暴力至上主義の冷酷な戦略家」という虚像が独り歩きしているのが現状のようである。

 ところが、実際にその横顔に触れたことがある関係者から話を聞くと、それらの評が一面的なものに過ぎないことがわかる。山若頭と祝いの席を共にした人物が言う。

「祝いの席で初めて会った。弘道会の身内ばかりだったこともあってか、山若頭は終始上機嫌で、冗談も含めて部下にも気さくによく話しかける人でした。会う前とまるで印象が変わりました。家族主義という雰囲気を感じた」

 ただし、家族主義が身内贔屓という批判を呼ぶことにもなる。

 身内の弘道会で見せる素顔と違い、上部団体である山口組で見せる統率者としてのそれは、時として「厳父」に映るようだ。別の事情通が言う。

「山口組が3分裂するよりかなり以前のことですが、総本部で行われる盃事の前に、当日遺漏のないように関係者を集めてリハーサルをしたことがあった。会場のしつらえに不備を見つけた山若頭は責任者を皆の前で面罵し、一からやり直させたそうです。司6代目が仕切る盃事に少しでも不備があってはいけない、という姿勢を感じた。あえて憎まれ役を買って出ることで、『あの山若頭が忠誠を誓う司6代目』と演出し、配下の間で司6代目を神格化させる意図さえ感じられました」

 部下を人前であえて叱責した上で、次期リーダー候補者としてとりなす、といった腹芸など、造作ないらしい。希代の軍略家と言われる素地はどうして生まれたのか。

「学者もかくや、というほど読書家で、戦史など歴史好き。服役中も中国の古典を読み漁り、服役後、組織づくりに生かすという話も伝わっている。それに記憶力が抜群にいい。相手が過去に話したことと矛盾があると、すかさず指摘し、自然に優位に立っている。任侠史など、全国津々浦々の親分や縄張りの沿革にまで通暁しているそうです」(前出の事情通)

 軍師は一日にしてならず、のようだ。 =つづく

(山田英生/ライター・編集者)

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