隠し玉なしの饒舌ゴーン 世界が注目する「逃走劇&政治家の実名」はダンマリ

隠し玉なしの饒舌ゴーン 世界が注目する「逃走劇&政治家の実名」はダンマリ

妙にハイテンションだった(C)ロイター

■肩透かしだった2時間半会見

「400日以上もこの日を待ち望んでいた」――。気合に満ちた表情でこう語った割には、とんだ肩透かしだった。金融商品取引法違反の罪などで起訴され、保釈中にレバノンに逃亡した日産前会長のカルロス・ゴーン被告が8日、首都ベイルートで記者会見に臨んだ。

 会見場にはゴーン被告が「選別」した12カ国、約60社のメディアのみが入場。東京地検特捜部が逮捕状を取った妻キャロル・ナハス容疑者も姿を見せた。濃紺のスーツにピンクのネクタイで決めたゴーン被告は、冒頭から1時間超にわたって“独演会”をぶった。顔を紅潮させ、身ぶり手ぶりを加えながら自らの無罪を主張。日産と日本の検察に対し、予想された批判を展開した。

 日本の検察の捜査手法を「公平ではない」と断じ、検察官の取り調べについて「一日8時間にも及んだ」と問題視。「独房の中で一人でクリスマスを過ごした」「正月休みもない」とこぼし、「『自白しなければもっとひどいことになる。家族も追及する』と言われ、絶望した」「家族は想像を絶する苦しみを味わった」と、感情に訴えかけるように日本の“人質司法”を痛烈に批判した。

 さらに、2018年11月の突然の逮捕は「日産と検察に仕組まれたもの」とし、会社から自分を排除するのに関与した人物として、日産の西川広人前社長など6人の実名を挙げ、苦々しい表情を浮かべ「17年間尽くした会社に裏切られた」と吐き捨てた。

■日本のODA「200億円」が効いたか

 約2時間半に及んだ会見で感情的にまくし立てたゴーン被告だったが結局、最後まで世界を揺るがす“隠し玉”は一切出てこなかった。さすがに、元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士は共同通信に「恨み言を述べているというのが第一印象だ」「逮捕後の経緯を話しているだけで批判にもなっていない」とコメントしている。

 しかも、記者が一番聞きたかったことには、ダンマリを決め込んだ。日本からの「逃走劇」については、複数のメディアから質問が飛んだが「どうやって日本から脱出したのか、興味があるでしょうが、今日はそれについて話しません。なぜ日本から脱出したかについて話します」とポツリ。「私は不当な政治的迫害から逃れてきた。ほかに選択肢がなくなった」とした上で、「日本で死ぬか、脱出するしかなかった」と妙に力を込めて訴えていた。

 会見に先立って、ゴーン被告は米メディアに逮捕・起訴に関与した日本政府関係者の実名を公表するとも予告していた。ところが、こちらも“不発”。「私は日本政府関係者の名前を挙げることができる。しかし、(発言することで)レバノンを困難な状況に追い込みたくないため、沈黙を守る」と発言した。

「逮捕・起訴に日本政府のトップが関与したと思うか」と問われても、「トップとは『アベサン(安倍首相)』のことか? アベサンが関与したとは思いません」と言うのみだった。日産幹部の実名は挙げたのに、政府関係者については「想像だけで発言すると、更なる緊張を招く」としおらしく口をつぐんだのだった。

「日本はレバノンに対し、約200億円のODA(政府開発援助)を実施してきた。レバノン経済は低迷しており、今後も日本からの支援は必要不可欠。レバノン政府は、これからも金満ニッポンとは仲良くやっていきたいのが本音です。レバノン政府関係者から『余計なことは言わないでくれ』と口封じされたか、ゴーン氏が政府の意向を“忖度”し、口をつぐんだ可能性がある。逆に言うと、ゴーン氏はレバノン政府に生殺与奪権を握られている裏返しです」(外交関係者)

 果たして、ゴーン被告の“本音”が飛び出す日は来るのか。

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