「大家族主義」を徹底 組員の子供には自転車の入学祝い

「大家族主義」を徹底 組員の子供には自転車の入学祝い

府中刑務所か品川駅に到着した高山若頭(2019年10月18日)/(C)日刊ゲンダイ

【山口組分裂と抗争のキーマン 高山清司という男】#4

「コンピューター付きブルドーザー」と称された田中角栄を思わせる軍師、山清司若頭の力の源泉のひとつが、司6代目と手を携えてみずから手塩にかけて育てた最強軍団「弘道会」にあることは言うまでもない。事情通が言う。

「山若頭出所の8日前、神戸山口組の中核組織・山健組の組員2人が、弘道会系組員に銃殺される事件があった。実行犯が68歳の老ヒットマンだったことは衝撃だった。生きて社会復帰できない可能性があるのに、顔も身分もさらして仕事をやってのける。空恐ろしさすら感じた」

 一方の神戸山口組では、中心人物の若頭代行がみずからヒットマンを買ってでるという信じがたい暴挙に出たとして、検挙されている。人材の厚みだけをくらべるなら、その差は歴然だ。弘道会の地元・愛知県の企業経営者が言う。

「司6代目と会食をした人物から聞いたんですが、高級焼き肉屋に同席した際、カルビやタンには見向きもしなかったそうです。理由を聞いたら『(ぜいたくすると)懲役に行っている若い衆にすまないから』と。健康志向で野菜好きというのもあるのでしょうが、弘道会の一枚岩の結束の秘密に触れた気がしました」

 組織のために体を張った組員を何より重んじる気風は末端にまで行き渡っている。冬場でも薄手のセーター姿で本部周辺を警備する若い衆を見かける。「務め(懲役)に比べれば大したことではない」という士気ゆえだという。

 一般施設を利用できない組員のために、本部事務所内にスポーツ施設まで完備していると伝えられるのも、山若頭の「大家族主義」ゆえだろう。敵と身内を峻別し、身内を手厚く遇する。論功行賞においても躊躇しない。それなくして、ヒットマンの輩出はもとより、軍事組織の統率は成り立たない。前出の地元の企業経営者が言う。

「本部事務所の近くの自転車店から聞いた話ですが、かつては毎年春の入学シーズンになると、弘道会から大量の子供用自転車の注文が入ったそうなんです。組員の子弟の入学祝いだったそうで、なんとも家族的だなあと感じ入ったものです。そうそう、山さんのファンが集まるカタギ会の席でも山さんは冗談好きで笑顔を絶やさない人。一緒に団体旅行に行く仲でしたが、さすがに今は遠慮しています」

 山若頭の抜群の記憶力について前回触れたが、あるとき旧知の知人にこう漏らしたことがあるそうだ。

「俺は日本中の子(分)の現状もすべて頭に入れていないといかん。何があっても駆けつけて手を打つ。それが親の仕事だがや」

「裏方」「黒幕」に徹する一徹さは角栄の弟子、小沢一郎にも通じる気がしないでもない。 (つづく)

(山田英生/ライター・編集者)

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