湖南発のトラック運転手は高速道路を1週間以上走り続けて力尽きた【新型肺炎 阿鼻叫喚の中国“極限生活”】

湖南発のトラック運転手は高速道路を1週間以上走り続けて力尽きた【新型肺炎 阿鼻叫喚の中国“極限生活”】

通行規制された高速道路(SNSから)

【新型肺炎 阿鼻叫喚の中国“極限生活”】#3

  1月7日に湖北省を出発したトラックが、新型肺炎の流行により、自宅のある湖北省に戻れなくなった。ドライバーの肖紅兵さん(50)は、なんと帰路1週間以上も高速道路をひたすら走り続けていたという。

 肖さんが発見されたのは1月29日、湖北省に隣接する陝西省の地方都市・漢中市の高速道路上だった。肖さんはここから寧夏回族自治区と福建省を結ぶ福銀高速道路に乗って、一路自宅を目指していた。漢中から湖北省の武漢までの距離は848キロ。さらに武漢から肖さんの自宅のある荊州までは228キロ。実に東京から北九州市・門司港までの距離だ。

 ところがこの高速が封鎖された。肖さんが、湖北省で新型コロナウイルスによる感染が拡大していることを知ったのは、すでに春節に入った1月26日のことだった。高速道路では瞬く間に交通規制が敷かれ、一般道に降りるに降りられない事態になった。湖北ナンバーの車両には誰も近づきたがらず、サービスエリアにさえも停車させてもらえない始末だった。1月29日、ついに力尽き果て、肖さんは緊急車両用のレーンに車を停止させた。そこに人民警察が取り締まりにやってきて「同志よ、どこへ行くんだ」と声をかける。

■都市封鎖が生んだ人間ドラマ

「もう疲れた。本当に疲れた。俺は1週間も走り続けている。おカネも使い切ってしまって、ろくな物を食べていない。どこかで車を止めて、ゆっくり寝たい。もうそれだけでいい……」

 トラックに積まれているのは、カップラーメンと牛乳などのわずかな食料だった。齢50の肖さんの顔には深くシワが刻まれ、日ごろの苦労がにじみ出る。涙ながらに語る肖さんの孤独な走行と想像もしていなかった顛末に、この人民警察は心を打たれた。

「ウイルスの蔓延はいかんともしがたい。だが、こんな状況で唯一できるのは助け合いだ」と人民警察が慰めると、肖さんはあふれる涙を袖でぬぐった。その後、人民警察は車と肖さんを消毒場に誘導し、肖さんを休ませる手続きをとった。

 都市封鎖という類いまれな強硬措置に国民は面食らったが、封鎖が生んだ人間ドラマは数知れない。 =つづく

(姫田小夏/ジャーナリスト)

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