遅々として進まない捜査とは裏腹な菅官房長官の「宣言」【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】

遅々として進まない捜査とは裏腹な菅官房長官の「宣言」【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】

菅官房長官の拉致問題への「宣言」が掲載されている政府のパンフレット(写真)友永翔大

【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】#25

 プルトニウム製造係長 竹村達也さん

  ◇  ◇  ◇

 警察は竹村達也の捜査に本腰を入れていないのではないか。竹村がいた茨城県東海村を管轄する警察署の元署長は、竹村の失踪自体を知らなかった。

 一方の大阪府警は竹村の捜査を継続してはいるようだ。天王寺高校の同級生たちに電話で竹村の情報を求めている。ただ普通、本気で情報を得たいと思っていたら足を運ぶ。私が訪ねた天王寺高校の同級生の自宅は、大阪府警察本部から電車で10分ほどだ。決して遠くはない。

 だが、そうした実態とは裏腹に、菅義偉官房長官は今年1月、ある「宣言」を出した。これは政府の拉致問題対策本部のパンフレットに掲載されている。菅は拉致問題担当大臣を兼任しており、拉致問題に取り組む責任者としての言葉だ。

■「全力で行動してまいります」

「2002年に5人の拉致被害者が帰国されて以来、一人の御帰国も実現していないことは痛恨の極みです。被害者御本人も御家族も御高齢となる中、御家族の切実な思いと『もはや一刻の猶予もない』との切迫感を共有しております」

「正念場が続いております。拉致問題は、安倍内閣の最重要課題であり、政府の責任において最優先で取り組んでいくべき課題です。御家族の皆さまともしっかり意思疎通を行い皆さまの気持ちに寄り添いながら、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、冷静な分析の上にあらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動してまいります」

 担当大臣は「認定の有無にかかわらず」拉致問題に取り組むと強調した。「認定」とは、横田めぐみさんら政府が拉致被害者として認定した17人のことで、それ以外でも拉致の疑いがあれば捜査することを約束しているのだ。当然、竹村もそのひとりとして含まれる。しかも竹村は国家の安全保障に関わる核科学者だ。その行方は何としても押さえておきたいところだろう。

 しかし、警察の動きは鈍い。菅の言う通り拉致問題は時間との闘いだ。1935年生まれの竹村の場合、存命であれば85歳。かなりの高齢である。

 何か手がかりはないか。例えば、竹村と同じように北朝鮮が欲しがるような技術や知識を持っている人物が失踪しているケースはないか。

 私はワセダクロニクルのメンバーたちと共に、警察庁が都道府県警ごとの情報をホームページにアップしている「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」を全て洗い直すことにした。 =敬称略、つづく

(渡辺周/「ワセダクロニクル」編集長)

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