北が欲しがるリストに掲載されたロボット・工作機械の人材【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】

北が欲しがるリストに掲載されたロボット・工作機械の人材【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】

警察庁のリスト(写真)友永翔大

【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】#26

 プルトニウム製造係長 竹村達也さん

  ◇  ◇  ◇

 プルトニウムの技術者である竹村達也と同様、北朝鮮が欲しがる人材が警察の「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」の中にいないか。私はワセダクロニクルのメンバーと共に、リストに掲載された人物をシラミつぶしに調べていった。過去の新聞記事や、失踪者の拉致の可能性を調べている民間団体「特定失踪者問題調査会」の調査結果を、警察のリストに載っている名前と照合した。

 すると、大学生や大学院生、国家公務員、自衛隊員などの肩書を持った人たちが出てきた。大学生と大学院生は56人、公務員は動燃の職員だった竹村を含め11人、自衛官は退職者も入れて5人いた。

 この中で特に気になったのは2人の人物だ。

■軍事技術に役立つ可能性

 1人は横浜市金沢区の河嶋功一。警察のリストでは、失踪当時23歳で無職、身長は167センチくらいだと記して、こう書かれている。

「昭和57(1982)年3月21日、大学卒業に伴う実家(浜松市)への引越のため、自家用車で迎えに来た両親とともに車で実家に戻る予定でしたが、急きょ電車を利用することになったため両親と別れた後、行方不明となっています」

 新聞各紙の報道はもっと詳しい。例えば河嶋の地元である浜松市に東海本社を置く中日新聞は2014年、次のように報じている。

「河嶋さんは関東学院大学工学部でロボット制御を研究。卒業した1982年3月、横浜市金沢区の下宿を引き払った後、行方が分からなくなった」

 つまり、警察は「無職」としか公表していないが、河嶋は大学でロボット制御を学んでいたのだ。軍事技術に役立つ可能性がある。

 もう1人は、鳥取県の矢倉富康だ。警察のリストでは職業が「漁業」。1988年に境港を漁船で出て行方不明となり、竹島沖で漁船が発見されたとしか書かれていない。

 だが、特定失踪者問題調査会によると、矢倉は失踪する3年前までは精密工作機械を製作する国内トップメーカーに勤務していた。海外にも技術指導を行っていたが、会社が倒産して漁師になったという。矢倉の両親は2007年、矢倉が北朝鮮関係者に拉致された疑いが強いとして、被疑者不詳のまま国外移送目的略取容疑で米子署に刑事告発している。

 政府が拉致被害者として認定しているのは今のところ17人だ。しかし、拉致被害の全容が明らかになった時、北朝鮮の軍事技術に貢献する人材が多く含まれているということはないだろうか。 =敬称略 (つづく)

(渡辺周/「ワセダクロニクル」編集長)

関連記事(外部サイト)