核兵器開発に役立つ技術 失踪した製造係長は「第一世代」【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】

核兵器開発に役立つ技術 失踪した製造係長は「第一世代」【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】

警備が厳重な日本原子力研究開発機構(撮影:友永翔大)

【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】#27

 プルトニウム製造係長 竹村達也さん

  ◇  ◇  ◇

 ロボット制御を研究していた若者に、精密工作機械会社の元社員で海外で技術指導までした男性――。警察庁の「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」には、竹村達也の他にも軍事技術に貢献できる人材が含まれていた。

 では、動燃の「プルトニウム製造係長」だった竹村が身につけていた技術や知識は、北朝鮮の核兵器開発に役立つとしたらどのように使われる可能性があるのか。

 私は、旧動燃のプルトニウム燃料部で竹村の部下だった2人の科学者に聞いた。

 ひとりは、まずこう断った。

「竹村さんは、原発の燃料にするためのプルトニウムの酸化物を扱っていたが、原爆を造るにはまた別の知識がいる。そんな簡単なものではない」

「仮に竹村さんが北朝鮮に行って、そういう仕事をさせられていたとして、核兵器開発をするには20年はかかるものだと思う」

 その上で言った。

「やるとすれば、(核兵器に使う)プルトニウムの取り扱いをやるんだと思う。プルトニウムの金属は温度が変わると結晶形態が変わり、重さも変わる。シミュレーションの計算が非常に難しく誤差が出やすい」

 もうひとりの竹村の部下も、プルトニウム取り扱いの腕が役立つ可能性を指摘する。

「核兵器の開発にはプルトニウムが必須ですが、プルトニウムは1粒か2粒体内に入るだけで肺がんを引き起こします。そのため、専用の密閉容器『グローブボックス』を使う技術が必要。北朝鮮はその技術を持つ人材が必要だったはずです」

 そして、この部下は竹村のことをアメリカの研究所に留学して技術を吸収した「第一世代」と呼び、懸念を隠さない。

「もし北朝鮮で核兵器の開発に携わっていたとしたら、かなりの役割を担っているんじゃないだろうか」

 警察庁も北朝鮮と日本企業の取引に神経をとがらせてきた。2006年11月以降は、日本の原材料を使った北朝鮮からの加工製品の輸入も禁じている。例えば07年には、兵庫県警が石川県内の配管製造業者を摘発している。ステンレスの原材料を北朝鮮に輸出し、平壌市内の工場に継ぎ手製品に加工させて輸入したためだ。

 このことは、警察庁が09年に出したリポート「『特集』〜対北朝鮮措置に関連する取締りの現状及び北朝鮮による拉致容疑事案等〜」に摘発事例として書かれている。

 一方で竹村の失踪については、まともに捜査している形跡がない。あまりにアンバランスだ。 =敬称略、つづく

(渡辺周/「ワセダクロニクル」編集長)

■旧動燃の科学者だった竹村達也さんの失踪事件について、独自取材で迫ります。竹村さんについてご存じの方は、ワセダクロニクル(contact@wijp.org)か日刊ゲンダイ(rachi@nk-gendai.co.jp)まで情報をお寄せください。

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