台湾・蔡英文総統が語った「ワクチンデマ」対策 鍵は「情報公開の在り方」

台湾の蔡英文総統が2021年8月10日発売の月刊誌「文芸春秋」9月号のインタビューで、日本からの新型コロナウイルスワクチンの提供に改めて感謝した。

中国の脅威についても多く言及。話題は、中国が新型コロナをめぐる偽情報(いわゆる「フェイクニュース」)を流して社会の分断を図っている疑いにも及んだ。蔡氏によると、偽情報の流布は「ある程度阻止」できているという。それはなぜなのか。

■ワクチン初便到着直後に「偽情報」多発

蔡氏はインタビューで、偽情報などの「政治工作」への対応策に触れた。インタビューでは、聞き手が「日本寄贈のワクチンで死者が急増している」と1例を挙げただけだったが、それ以外にもワクチンをめぐる偽情報は流された。とりわけ多かったのが、日本からのアストラゼネカ製ワクチンの初便が到着した直後だ。

初便の到着は6月4日。その2日後の6月6日には、アストラゼネカ製のワクチンの容器の写真つきで

「日本から送られたワクチンは2021年5月に有効期限が切れる」

の文字が入ったLINEのスクリーンショットのような画像がSNSで拡散された。仮にこれが事実であれば、期限切れのワクチンを送った日本に対する批判が出ることになる。だが、ファクトチェック団体「台湾ファクトチェックセンター」の調べでは、(1)拡散されたワクチンの写真は3〜4月に報じられたワクチンに関する記事についていたもので、日本から送られたものとは関係ない(2)拡散されたワクチンの画像ではキャップの色が、日本から送られたワクチンのものと違っている(3)日本から送られたワクチンの有効期限は10月14日、という3つの理由を根拠に、拡散された情報は「誤り」だと判定している。

■「中央感染症指揮センター」が毎日会見して「透明性の高い情報公開」

6月7日には、茂木敏充外相が国会で

「台湾政府は(ワクチン供給を)多くを望んでおらず、6月には(輸入を)ブロックする」

などと発言したとする画像が拡散。ネット上には、台湾当局がワクチンの受け入れを断ったとして非難する声が出た。

ただ、実際の茂木氏の国会での発言は

「台湾国内においては、7月以降は国内での生産体制というのは、またかなり整ってくると考えており、当面の緊急のニーズというのが台湾にあると、このような認識でいる」(6月3日、参院外交防衛委員会)

というもので、「台湾政府は多くを望んでいない」といった発言はしていない。

こういった偽情報の検証(ファクトチェック)は、台湾のヤフーニュースにも配信されるなどして拡散されている。

蔡氏はインタビューで、「透明性の高い情報公開」がカギだと説明。新型コロナの対策本部にあたる「中央感染症指揮センター」が毎日記者会見を開いて当局の感染症対策を説明し、記者とのやり取りも可視化することで「フェイクニュースの流布をある程度阻止することに成功している」としている。さらに、SNSでコロナ対策に関する知識を積極的に発信しているとした。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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