自民重鎮も「後にずらすべき」 菅氏退陣で衆院選「先送り論」が現実味帯びる理由

菅義偉首相が自民党総裁選(2021年9月17日告示、29日投開票)への出馬を断念したことで、衆院選の投開票日が11月にずれこむ公算が大きくなってきた。衆院選は新首相のもとで行われることになるが、臨時国会で首相指名(首班指名)選挙を行うなどの手続きが必要になるからだ。衆院議員としての任期満了は21年10月21日で、任期満了後の投開票は史上初だ。

公職選挙法の規定では、任期満了日の前の30日以内に衆院選を行うとしており、最も遅い日曜日に投開票する場合で「10月5日公示、17日投開票」。だが、9月29日の新総裁選出から公示日前日の10月4日までに臨時国会を開いて新政権を発足させるのは現実的には困難。自民党の重鎮議員からも、公選法の別の規定を根拠に、日程の先送りを求める声が出てきた。

■9月29日の新総裁選出→首相指名では「10月17日投開票」に間に合わない

菅氏が解散権を縛られたまま事実上の退陣を表明し、残されたシナリオのひとつが任期満了選挙だ。現行憲法下での唯一の任期満了選挙が1976年12月5日に投開票された衆院選。三木武夫首相(当時)が解散を模索したものの、党内の反対で断念した末に行われた選挙で、自民党が過半数割れして敗北した。公示日が11月15日で、任期満了が12月9日。任期内に行われた総選挙だ。

今回、衆院選の先送り論が出ているのは、21年9月29日の新総裁選出から「10月5日公示、17日投開票」では、時間的に間に合わないからだ。仮にこのスケジュールに間に合わせるとすれば、9月30日〜10月4日の間に臨時国会を召集し、首相指名選挙を行った上で、慣例に従えば新首相の所信表明演説や各党代表質問も必要だ。だが、このスケジュールは現実的ではない。

次期衆院選には立候補しないことを表明している自民党の伊吹文明・元衆院議長も、9月6日午前、フェイスブックで、このスケジュールは「時間的に無理があります」と指摘。その上で、「従ってだれが考えても二つの案しかありません」として、(1)任期満了選挙後の臨時国会召集(2)衆院解散で総裁選を先送りする、の2つの選択肢があり、菅氏は前者を選んだ、としている。

■「野党も望んでいるのですから...」

任期満了日の前の30日以内に衆院選を行うという規定は、公職選挙法第31条第1項で定められている。ただ、第31条第2項には

「前項の規定により総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から30日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から31日以後35日以内に行う」

という規定もある。伊吹氏は、この条項を根拠に、臨時国会を召集した上で衆院選を先送りすべきだとした。

「野党も望んでいるのですから国会を開き、堂々と国民の前で質疑を行い、当初より総選挙日程を後にずらすべきでしょう」

憲法第53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば「内閣は召集を決定しなければならない」と規定しており、野党はこの条文を根拠に新型コロナ対策を議論する臨時国会の早期召集を求めている。だが、召集の期限は定められておらず、与党側は召集の先送りを続けている。伊吹氏の投稿の「野党も望んでいるのですから」の部分は、こういった経緯を念頭に置いている。

衆院選の投開票が任期満了後にズレ込む可能性は、8月下旬にも指摘されていた。当時根拠とされていたのは、憲法第54条にある、解散の日から40日以内に衆院選を行うとする規定だ。これに従うと、任期満了の10月21日に解散すれば原理的には11月30日まで投開票日を遅らせることができる。このうち最も遅い日曜日は11月28日だ。新首相が臨時国会を解散して総選挙に突入する可能性もある。

立憲民主党の枝野幸男代表は8月18日の記者会見で、憲法第54条の規定を「一種の『憲法のバグ』だと思っている」として、先送り論を

「10月21日以降にならないと総選挙ができないという状況であるとすれば、そのこと自体、政権与党が大きな政治責任を負わざるを得ない」

などと批判していた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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