殴られ破壊のレトロ自販機を「無償修理」 メーカー対応に称賛相次ぐ...なぜ協力?社長に聞いた

何者かにボタンが殴られて壊された神奈川県相模原市内の人気レトロ自販機が、名古屋市内の部品メーカーの協力で復活した。

この自販機は、「中古タイヤ市場」相模原店の敷地内に設置され、コックのおじいさんがパネルに描かれたレトロなデザインで人気だった。3種類のオリジナルハンバーガーを280円で販売している。

■部品の再現「最後は勘でしたね」

それが2021年9月5日の深夜、若い男が自販機の注文ボタンの1つを何度も殴って、ボタンのプラスチック部分が欠けるなどしてしまい、その様子を一緒にいた女が笑いながらスマホで撮影するなどしていた。この姿が防犯カメラに映っており、店が県警の相模原南署に器物損壊の被害届を出し、同署が捜査を始めていた。

自販機は、35年前に製造された古い機械のため、店では、同じボタンの部品が手に入らず、再稼働のメドが立たないと困惑していた。

人気の自販機だけに残念がる声がネット上で相次いでいたが、10月19日になって、店の運営会社社長の友人が、社長から伝言があったとして、この自販機が部品メーカー「エッチアイ技研」(名古屋市)の協力で直され、この日から稼働を始めたとツイッターで報告した。

その出来栄えについて、「今付いているボタンの色に合わせて頂き強度共に精度の高さに驚きました」と明かした。

自販機の写真も投稿され、ネット上では、復活を喜ぶ声とともに、その技術に驚きの声が上がっている。

「色再現できてる!すげぇ」「染料が経年劣化まで表現している」「素晴らしい技術ですね」...

一体どうやって古い部品を再現することができたのか。

エッチアイ技研の原隆二社長(50)は20日、J-CASTニュースの取材に対し、「そんな凄い技術ではない」と謙遜しながらも、こう明かした。

「古い樹脂で経年劣化して飴色になっていましたので、表面を塗るのではなく、内部まで色を染めました。樹脂専用の薬剤を何度も着けて、近い色になるよう試行錯誤を重ね、最後は勘でしたね」

■「みな悲しんでいるので、社会貢献を」と無償で引き受ける

ボタンを作るのに、色以上に苦労したのが、その中に空洞があったことだという。

「壊れていなかった隣のボタンを送ってもらいましたが、ボタンは2部品で構成されていました。もう1つの部品を裏からボンドでくっつけていたのです。中空部分を測定して作りたかったのですが、送られたボタンのボンドを剥がせないので苦労しましたね。本業の合間にやらなければいけなかったので、1か月弱かかりましたが、本気を出せばすぐにできると思いますよ」

エッチアイ技研では、「プラスチック試作・量産のプロ」をうたっており、自動車の試作車両に使う専用部品作りを得意にしている。衝突などの実験を繰り返して早期販売につなげるため、部品を作るスピードが大事だという。金型がない古い車両の部品も小ロットで作っており、今回は、その技術を生かしたそうだ。

壊された自販機のボタンを作ろうと思ったのは、当時のニュースを昼食中に見ていたときだったと原社長は明かす。

「僕が子供のころ、父に連れて行ってもらったドライブインで、コックのおじいさんが描かれたあの自販機をよく見かけました。今でも活躍しているのは凄いと思いましたが、思い出のある自販機でしたので、心が痛みました。みなも悲しんでいるのを見て、社会貢献できたらと思ったわけです。パーツを見たら直せると思いまして、2、3日後に店に電話しました」

仕事として依頼を受ければ、20万円弱ぐらいはかかるが、今回は、無償でボタン作りを引き受けたそうだ。

「ボタンは、3つ作りましたので、残りはスペアになりますね。19日に相模原まで持って行ったら、すぐに客がハンバーガーを買ってくれたので、やってよかったとうれしかったですね」

ボタン作りについては、会社のツイッターでも、「レトロ自販機復活プロジェクト」と題して詳しく解説している。ボタンを納品した後、店の運営会社社長からハンバーガーとラムネをたくさんお土産にもらい、帰ってからみなで美味しく食べたそうだ。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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