絶版本企画への批判に「いつまでもネチネチ叩くな」 SF作家「逆ギレnote」に波紋も...版元苦言で結局謝罪

早川書房が発行する雑誌「SFマガジン」に掲載予定だった、絶版となり入手困難となった本を想像で特集する企画が中止となった問題で、企画したSF作家の樋口恭介さんがnoteに公開した文章が波紋を呼んでいる。

中止までの経緯やそれに伴う炎上への見解、一部の批判への反論を記したもので、これを受けて早川書房が「弊社の見解とは異なる」と発表。その後、樋口さんは「樋口が全面的に悪かった」として謝罪し、noteを取り下げた。

■「不可解な炎上を経験した」

問題視されたのは、「読みたくても高騰していてなかなか読めない幻の絶版本を、読んだことのない人が、タイトルとあらすじと、それから読んだことのある人からのぼんやりとした噂話だけで想像しながら書いてみた特集」という企画だ。

樋口さんが2021年12月2日、特集を予定していることをツイッターで告知したところ、絶版書籍の著者や読者から不快感が示された。こうした反応を受けて樋口さんは、編集部と相談し、企画を中止するとツイッター上で発表した。

企画の中止はSFマガジンの編集者からも伝えられ、SNS上では一部から「面白そうだったのに残念」という声が寄せられた。一方で「作品に対する冒涜以外の何物でもない」、「出版に関わっている人達がやる企画ではない」などと批判する声も広がった。

こうした反響を受け樋口さんは6日、「不可解な炎上を経験した」として、自身のnoteに私見を公開した。

■「謝罪して中止・撤回されたものをいつまでもネチネチと叩くな」

樋口さんは6日、noteに「『SFマガジン』『読みたくても高騰していてなかなか読めない幻の絶版本を、読んだことのない人が、タイトルとあらすじと、それから読んだことのある人からのぼんやりとした噂話だけで想像しながら書いてみた特集』について」という記事を公開した。

これによれば、絶版本を空想した後、原本と照合することも視野に入れており、執筆を希望する作家も多かったという。しかし企画の取り下げ後に「『謝罪したツイート』が炎上していた」などと主張した。

そのうえで「謝罪して中止・撤回されたものをいつまでもネチネチと叩くな」と訴える。さらには、執筆を希望していた作家が炎上した途端に手のひらを返したなどと主張し、「不可解かつ信用ならない人」などと糾弾。ある批評家から送られたコメントに対しては「企画の実態とはかなり乖離した印象と憶測に基づく罵倒」だと断じた。

■早川書房「弊社の見解とは異なる」

早川書房は翌7日、「SFマガジン『幻の絶版本』特集の中止について」というお知らせを公式サイトで公開。樋口さんの見解は社の見解と異なると訴えた。

「12月7日朝、樋口氏が、弊社の見解とは異なる内容のnoteを、こちらへの事前通告なく公開しました。すぐに塩澤から、特定の方々への加害になりかねない内容の不適当さを指摘した上で、いったん取り下げられないか申し入れましたが、樋口氏には聞き入れられず現在に至っております」

樋口さんは早川書房の実施する「第5回ハヤカワSFコンテスト」を長篇「構造素子」で受賞してデビューした作家であり、同社の社員ではない。文中の「塩澤」はSFマガジン前編集長の塩澤快浩氏で、樋口さんは彼の依頼で今回の特集を企画した。

早川書房は「樋口氏のnoteでの見解はあくまで樋口氏個人のものですが、今回の事態の責任は、ひとえに樋口氏に特集企画を依頼した弊社にあります」としたうえで、note内で樋口さんが批判した人々と読者に謝罪した。

■「樋口が全面的に悪かったです...」

早川書房の発表から約1時間後、樋口さんはツイッターで、noteなどで批判した作家と批評家に謝罪した。

「樋口が全面的に悪かったです...本当に申し訳ありませんでした...。もう遅いかもしれませんが、発言を撤回させてください...」

樋口さんは「ずっと炎上状態で精神的に緊張状態にあったことから、視野狭窄になっていました」と振り返った。

翌8日にも改めて謝罪を重ねた。

「昨夜は眠れず、一晩深く考え、自分の言動や行動の不適切さについて反芻しておりました。あらためて、今回傷つけてしまった方々、ご迷惑をおかけした方々、不快に思われたすべての方々に対して深くお詫び申し上げます。今回の過ちは、今後の仕事で挽回していくしかないと思いますので、精進いたします」

8日17時現在までの間に、樋口さんの一部ツイートは削除され、前日に公開されたnoteは閲覧できない状態となっている。

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