高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 13兆円規模の緊急対策では「まったく不十分」である理由

政府は2022年4月26日、原油価格・物価高騰等総合緊急対策を決定した。その内容は政府サイトに掲載されている。13兆円規模と報道されている。

■30兆円以上の有効需要が必要だと思っている

経済対策では、GDPギャップを有効需要で埋めるという原則がある。というのは、GDPギャップがあると、その後(だいたい半年程度で)失業率が上昇するからだ。政府には最低限、雇用を確保する責務があると考えれば、余計な失業を放置しておくのは許さないという考えだ。もちろん、雇用を確保した上で、給与が高くなれば申し分ないが、経済策の一般則ではまず雇用を確保した上でないと給与は上がりにくい。

さて、GDPギャップを有効需要で埋めるべきという考えからみると、今回の景気対策はまったく不十分だ。

まず、GDPギャップの大きさであるが、その計測方法はいろいろだ。内閣府が公表しているものを見ておこう。それによれば、2021年10−12月期のGDPギャップは▲3.1%だ。それは17兆円程度になる。ただし、筆者は内閣府の推計は甘めであると思っている。過去にも、GDPギャップがプラスになっても完全雇用を達成しなかった場合もある。この意味で、内閣府は潜在GDPを低めに見積もっているのだろう。

いずれにしても、現時点で経済対策を考えるときには、昨年10−12月期のGDPギャップではなく、今年1−3月期のGDPギャップでみなければいけない。1−3月期のGDP(1次速報)は連休後の5月18日に公表される。昨年10−12月期は新型コロナも小休止で景気は悪くなかったが、今年1−3月期は新型コロナ第7波がきて、景気はやや悪くなった。以上により、内閣府の甘めの推計などを考慮すれば、筆者は30兆円以上の有効需要が必要だと思っている。

■一桁少ないと言わざるを得ない

今回の経済対策の数字を精査してみよう。報道は、国費6.2兆円、総事業費13.2兆円と数字を羅列するが、その経済効果には言及していない。これらの数字は、政府資料の中にある。

GDPギャップを埋めるための有効需要は追加的な「真水」といもいえる。政府の資料の中の数字でいれば、国費のうちの補正予算額である。この数字がもっとも適切な経済効果であるが、それは2.7兆円である。これでは、一桁少ないと言わざるを得ない。

タイトルに「物価高騰」とあるが、GDPギャップがある間は、原油「価格」は上がるが、「物価」は上がらないので、タイトルにも問題がある。政府は、「価格」と「物価」の違いを理解しているのか。

内容の中には、住宅の断熱改修などのいい点もあるが、予算金額があまり少ないので、経済対策の名に値しないものだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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