高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 国家戦略特区をめぐる「毎日の異様な報道」

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 国家戦略特区をめぐる「毎日の異様な報道」

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2019年9月30日に官邸で行われ、安倍総理や菅官房長官の出席した会議で、新聞では報道されていないが珍しい光景があった。

「もはや報道機関としての正当な活動ではなく、特区の運用に対する妨害」

その会議は、国家戦略特別区域諮問会議であり、議事録をみると、有識者議員の八田達夫氏(アジア成長研究所理事長、大阪大学名誉教授)は、

「毎日新聞が特区制度に関して誤った報道を続けております。例えば、特区は特定の新規参入者に特権を与える制度だという前提に基づいた報道をしています」
「さらに、取材と称して、規制改革の提案者の自宅を訪問して提案者を怯えさすというような事態が続いています。結果として、毎日新聞は、業界団体や既得権者を守る活動を続けています。これは、もはや報道機関としての正当な活動ではなく、特区の運用に対する妨害であります」

と発言している。毎日新聞は名指しされフェイクどころか報道機関としていかがなものかといわれている。このままでは毎日新聞としても不名誉だろうから官邸に抗議すべきだと思うが、今のところないようだ。

この話は、6月11日の毎日新聞1面トップ「特区提案者から指導料 WG委員関連会社 提案者から指導料200万円 会食も」が発端だ。特区WG委員の原氏の写真が掲載され、原氏が200万円、会食を受けたと思わせる記事だ。

原氏は事実無根として毎日新聞を名誉毀損で訴えている。裁判は進行中であるが、毎日新聞は原氏が指導料や会食を受けていないことをすでに認めているようだ。だとすれば、この記事は何だったのか。

特区WGをめぐる「誤解」

実は、筆者も毎日新聞からあらぬ疑いをかけられた。筆者の属する大学が、特区申請者になって、筆者の「力」で規制緩和をやろうとしたというストーリーだ。もちろん、筆者にそんな「力」はないし、そもそも筆者の属する大学は申請者にもなっていないので、フェイクだ。取材は筆者ではなく筆者の周辺に来たので迷惑した。筆者は、あるネット番組で筆者のところに取材に来なさいと呼びかけたが、まだ来ていないし、記事にもなっていない。

ただ、毎日新聞の筋書きはこうだ。筆者が、ビジネスパートナーであり特区WG委員でもある原氏に働きかけ、規制緩和を得ようとし、筆者と原氏を利得をむさぼる悪者としている。

この筋書きは完全に間違っている。というのは、毎日新聞記者は、特区WG委員は提案者からの提案を「審査」して規制緩和を決めていると誤解しているからだ。

こう書くと、多くの人は、審議会委員なのだから、政府や提案者と中立的な立場から規制緩和の是非を検討すべきで、毎日新聞の問題意識は正しいと思うかもしれない。しかし、それは規制緩和の仕組みの理解不足だ。

提案から規制緩和に至る過程は...

規制緩和の場合、最初の提案者だけでは規制官庁に太刀打ちできないので、WG委員は最初の提案者のサポートに回り、提案者+WG委員が、規制官庁と議論する。その結果、規制官庁も納得したものだけが、規制緩和される。規制緩和されれば、最初の提案者だけでなくすべての人に恩恵が及ぶので、最初の提案者とWGがタッグを組んでも、最初の提案者だけに利益をもたらすわけではなく問題ないのだ。

この点から見れば、筆者の場合、仮に所属大学が申請者になったとしても、金銭関係がなければ原氏の助言を受けていてもまったく問題ないのだ。もっとも申請者になっていないので、それ以前の事実関係で毎日新聞のミスがあるが。こうした制度の仕組みは、7月17日付の八田達夫・特区WG座長らの共同抗議声明にもはっきり書かれている。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「『バカ』を一撃で倒すニッポンの大正解」(ビジネス社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)など。