流出したススキノ感染店リスト、「本来は公表すべき」? 風評被害に懸念も...判断分かれる自治体

流出したススキノ感染店リスト、「本来は公表すべき」? 風評被害に懸念も...判断分かれる自治体

流出したススキノ感染店リスト、「本来は公表すべき」? 風評被害に懸念も...判断分かれる自治体の画像

札幌市保健所がつくった、新型コロナウイルスの感染者が出たキャバクラやガールズバーなど飲食店の実名リストが外部に流出した。店側からは「売り上げに悪影響が出るから本当に困る」と困惑の声が聞かれた一方、ネット上では「何も知らずに店に行けば感染しかねない。むしろ公表されるべき」との意見も。感染拡大防止のため、感染者が出た店名情報はどう扱われるべきなのか。

流出したのは、札幌市の歓楽街「ススキノ」にある、いわゆる「接待を伴う」飲食店のうち、店の利用客や従業員から陽性者が出るなどした27店のリスト。保健所のコロナ感染に関する電話相談窓口に27店の関係者から不安を訴える相談があれば、速やかにPCR検査を受けるよう促すためとして、窓口の職員用につくったものだ。

「ふざけんなよって感じです」「チンタラ公表しない市が問題」

2020年8月7日に地元紙・北海道新聞が報じた。保健所も流出の事実を認め、「ご迷惑をおかけした皆さまに深くお詫びするとともに、今後、情報管理の徹底を図り、再発防止に努めてまいります」とのコメントを出した。

27店は感染リスクの高さごとに3分類され、なぜかハートマークの数でリスクの高さを表現していた。このうち、従業員から陽性者が出たものの利用客からは出ておらず、リスクの高さが2番目に高いとされた店の店長(30代)は、J-CASTニュースに対し、こう話す。

「ふざけんなよって感じですよ。保健所には協力しないといけないと思って情報を伝えてきたのに、裏切られた感じです。これで客は遠ざかるだろうし、売り上げにも悪影響が出るでしょう。本当に困ります」

報道を受け、多くのネットユーザーが7日朝から反応した。内部資料が漏れてしまった保健所への批判の声が相次いだ一方で、「そもそも公表すべき」といった投稿も多かった。

「市民としては、風評被害云々じゃなく把握しておかなくてはいけないデータではある」
「なんで隠す? 隠さず公表するのが感染拡大に大いに役立つ」
「流出した札幌市じゃなくチンタラ公表しない札幌市が問題」

同じ東京でも対応わかれる 歌舞伎町を抱える新宿は?

札幌市保健所は3月、感染者が発生したススキノのライブバーの店名を公表したが、それ以降は非公表を続けている。健康企画課の担当者が説明する。

「3月の事例は不特定多数の客が出入りする店で、感染経路がわからなかったため、利用客の協力を求めるために、お店の協力のもと公表しました。しかし店名の公表はどうしても風評被害の対象になりかねず、営業上の利益に影響することを考えると、慎重さが求められます。これまで札幌では感染者が出たのに対策を取らず営業を続けるといった悪質な店もないので、積極的に公表する予定はありません」

東京でも、練馬区が8月5日に、利用客と従業員3人の感染がわかったキャバクラの店名を公表。区がクラスターになる可能性が高いとして休業を要請したにもかかわらず、営業を続けたことから公表に踏み切ったという。

足立区も7月20日、区内のフィリピンパブ2店で従業員ら計22人のクラスターが発生したとして店名を公表した。利用客が東京以外の広範囲にわたる可能性があるとして、利用客の特定のために公表したという。

一方で、ホストクラブなどで集団感染が確認されている新宿区はこれまで店名を公表していない。クラスターが発生した劇場「新宿シアターモリエール」のケースでは、劇場が公式サイトで公表したにも関わらず、区は非公表を貫いた。区健康政策課の担当者はこう説明する。

「区ではお店や事業者との協力関係を大切にしています。店名公表によって、現場の調査に協力してもらえなかったり、感染者が出ても名乗り出てもらえなかったりするのは困りますので。必要に応じて公表せざるを得ないケースもあるかと思いますが、むやみやたらに出すものではないと考えます」

国は「同意なしでも店名公表」を通知 「見せしめ」にならない?

クラスターが発生した飲食店などの店名公表については、厚生労働省が2月27日付と7月28日付で、感染経路が不明な場合は店側の同意なしで都道府県が店名を公表できるとする通知文を出している。7月28日付の通知では、感染防止対策が不十分だったことが発生原因と考えられる場合は、店名に加えてそのこともあわせて公表できるとしている。

7月28日の通知後、先述の練馬区の他にも、茨城県や群馬県、滋賀県などの自治体が、相次いで複数の感染者が出た飲食店名を公表している。結果的に国が公表に向けて「お墨付き」を与えたようにも見える。厚労省結核感染症課の担当者はこう話す。

「実際に公表するかどうかは、あくまで自治体の現場の判断です。公表の必要があるかどうかは、濃厚接触者をどれだけ追えているのか、不特定多数の人が出入りしているのか、保健所の調査に対して協力的なのかなど、ケースバイケースですから。『見せしめ』の意図が全く含まれていないわけではないですが、悪質なケースは公表していかなければいけないと考えています」