橋本聖子会長は「東京五輪中止」に舵を切った!?「国民が安心しないと開催しない」発言の真意を探る

橋本聖子会長「東京五輪中止」への布石か 「国民が安心しないと開催しない」と発言

記事まとめ

  • 東京五輪組織委員会の橋本聖子会長が、「国民が安心しないと開催しない」と発言した
  • 森喜朗前会長が「コロナがどういう状況であろうとやる」と話していたのとは真逆の発言
  • 「中止は100パーセントない」と発言の下村博文政調会長も4日、中止の可能性に言及

橋本聖子会長は「東京五輪中止」に舵を切った!?「国民が安心しないと開催しない」発言の真意を探る

橋本聖子会長は「東京五輪中止」に舵を切った!?「国民が安心しないと開催しない」発言の真意を探る

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東京五輪はいったい開催できるのか? 2021年3月25日の聖火リレーのスタートが迫るなか、東京五輪組織委員会の橋本聖子会長(56)が注目すべき発言を行った。

「これであればできるという安心感を国民に持っていただけない限り、開催は難しい」

と、組織委員会トップとして初めて「開催の可否」に言及した。

これまでは何が何でも開催するという強行姿勢だった政府・東京都、そして組織委。これは中止への布石か? いったいこの「発言はどう読めばいいのだろうか。

「無理やり何が何でも開催するわけではありません」

「国民に安心感がない限り(五輪の)開催は難しい」

橋本聖子・東京五輪組織員会会長(56)の驚きの発言が飛び出したのは、3月5日の「定例会見」の席上だった。2月18日に森喜朗前会長の後任に選ばれてから2週間。

「五輪の開催には国民の理解が欠かせない」

という思いから、週に1度ほどの定例会見を開くことになった。3月5日はその初日だった。まず、

「コロナの状況は依然楽観できない状況が続いており、五輪開催に向けてもご心配されている都民・国民の皆さまが多くいらっしゃいます。『安全最優先の大会』に向け、万全の体制で準備は進めており、定例的に記者会見を実施することで不安の払拭にも努めたいと考えています」

などと述べた後に質疑応答に移ったのだった。

スポーツニッポン(3月5日付)「五輪組織委・橋本聖子会長『国民に安心感ない限り難しい』五輪"開催ありき"より国民目線」はこう伝える。

「コロナがどういう状況であろうとやる」と話していた森喜朗前会長時代とは逆で、国民の理解を得ることが大事との姿勢を明確にした。「安心安全な大会」を目指すと繰り返す橋本会長には「どういう条件がそろえば開催できるのか、客観的な指標を示してほしい」との質問が出た。森会長は今年1月、同じ質問者に「明確な基準があるかと言えば、ない」と答えた。

橋本会長はどう答えたのか。

「昨春に延期、大会日程が7月に決定した。その時点でこの夏の東京大会は実施すると決定した」

と強調したうえで、

「本当にできるのか、できないのではないか、という国民の思いは非常に重要。しっかりしたコロナ対策をしていても、感染者が減っていかない状況で地域医療のひっ迫につながるのであれば、非常に難しいのではないか。そういった心配や不安が、開催すべきと思う方々が少ない要因と思う」

と国民側の視点を披露。さらに、

「医学的、科学的な知見を踏まえ、専門家、政府、都と連携して、国民に『これであればできるんだ』という安心感を持っていただけない限り、開催は難しいと思っている。無理やり何が何でも(開催)という捉え方をされているかもしれないが、決してそうではない」

と踏み込んで発言したのだった。

「無理やり何が何でも開くわけではない」という、この発言は重要である。これまでは最低限、「無観客という形でも開く」というのが組織委・政府・東京都側の公式コメントだったからだ。

下村博文・自民政調会長も「中止も考えないと」

折も折、自民党の重鎮、下村博文政調会長も「東京五輪の中止」に言及した。時事通信(3月4日付)「五輪中止の可能性に言及『主力国の参加無理なら』下村自民政調会長」がこう報じる。

「自民党の下村博文政調会長は3月4日のBS11番組で、東京五輪・パラリンピックの開催の可否について『主力国の選手が大量に来られない場合は国際オリンピック委員会(IOC)も考えざるを得ないだろう』と述べ、中止の可能性に言及した。下村氏はまた、政府が海外からの観客受け入れの見送りを検討していることに関し、『選択肢としてはあり得る』と指摘。首都圏の新型コロナの感染状況などを踏まえ、1カ月程度で結論が出るとの見通しも示した」

というのだ。

自民党の下村博文政調会長は今年1月20日、欧米メディアから「東京五輪中止論」が取り沙汰された時はすぐさま記者会見を開き、

「東京五輪中止は100パーセントない。菅義偉首相も(衆院本会議で)強い決意を述べている」

と自信を持って打ち消しに務めていた。どういう状況の変化があったのだろうか。

下村氏がテレビ番組で「東京五輪中止」に言及した前日の3月3日、東京五輪・パラリンピック開催に向けての組織委の橋本聖子会長、東京都の小池百合子知事、丸川珠代五輪担当相、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長による5者会議がオンラインで開かれた。

しかし、「開催」を確認しただけで、海外からの観客受け入れの是非など重要なことは何も決めず、結論を4月に持ち越した。この5者会議の結果について海外メディアは厳しい目を向けた。

英タイムズ紙「日本は止まらない暴走列車だ」

英ロンドン・タイムズ紙(3月3日付)が「It's time to cancel this year's Olympic Games」(今年の五輪大会を中止するべき時だ)という主見出しをつけ、アジア編集長のリチャード・ロイド・パリー氏のコラムを掲載した。主見出しの下には「日本だけではなく世界へのリスクが大きすぎる、東京の今夏のスーパー・スプレッダー(大量感染を引き起こす患者集団)・イベント」という見出しが付けられている」

1995年から東京に住み、日本の事情に精通しているパリー氏はこう主張した。

「英国で50年の歴史を誇り、約15万人を動員する野外音楽祭『グラストンベリー・フェスティバル』が(コロナによって)2年連続で中止されている。一方で、東京五輪は200カ国以上から1万5000人以上の選手が参加、その数倍の審判、スポンサー、報道陣らが来日、チケット販売数は1100万枚以上になる」

と数字を列挙。2つのイベントを対比させて、

「はるかに小規模で短期間のフェスティバルが犠牲になるならば、世界最大の都市で4週間にわたって開催される大規模イベントも中止されるべきであることは明らか。新たに変異ウイルスが急増し、五輪が感染源となって世界に数週間、数カ月間の停滞をもたらすかもしれない」

とバッサリ切った。

そして、菅義偉首相が「東京五輪を人類が新型コロナに打ち勝った証とする」と述べた発言を引用しつつ、

「五輪開催者は、勇気や人間性、抽象的な美徳を語るのを好むが、本当に開催したい理由はもっと実務的だ。すでに投入された莫大な資金と密接に絡み合った威信や権力だ。中止すれば五輪スポンサーである世界の大企業に損害があり、何年もかかる法的な議論になる」

と指摘。こうして何が何でも五輪開催へと向かおうとする様子を「止まらない暴走列車」と例えたのだった。

また、3月6日には「東京五輪中止」を求める市民たち約70人が、東京・新宿の日本オリンピック委員会(JOC)が入るビル周辺で抗議デモを行ったが、ロイター通信などいくつかの海外メディアも報じた。

ところで、下村博文・自民党政調会長は「主力国の選手が来ない」可能性について言及したが、「主力国」の国民は東京五輪の開催をどの程度望んでいるのだろうか。

独・仏・英・スウェーデンは開催反対が多数

独米グローバルコンサルタント会社「Kekst CNC」(ケクストCNC)が3月3日、「東京五輪に関する国際世論調査」(https://www.kekstcnc.com/jp/insights/covid−19−opin)を発表した。日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、フランスの6か国各1000人ずつ合計6000人を対象に、「今夏の東京五輪開催に賛成か反対か」を調べた(調査期間:2021年2月11日〜2月21日)。

開催に反対する人は、日本がもっとも多く56%(賛成16%)、次いでイギリス55%(賛成17%)、ドイツで52%(賛成19%)、スウェーデン46%(賛成23%)、フランス37%(賛成25%)といずれも反対が賛成を上回った。唯一、アメリカだけが反対と賛成が33%と同じだった。

ヨーロッパの主力国の多くが開催に反対しているわけだ。今回の結果について、「Kekst CNC」のアジア地域代表のヨッヘン・レゲヴィー氏は、世界中の多くの国がまだワクチンを手にしていない現状を指摘し、こうコメントしている。

「IOCと日本政府は、日本国内だけでなく、世界的にも今年の東京五輪開催に対して強い批判的な世論に直面しています。迅速かつ包括的で目に見えるワクチン接種の進展がなければ、世界中の懸念を払拭することができません。観客なしの規模を縮小した東京五輪の開催さえますます難しくなっています」

ネットでの意見はどうなのか。ヤフーニュース「みんなの意見」の「東京五輪・パラの今夏開催、あなたの考えは?」というアンケート調査によると、3月8日13時半現在で投票総数は58万6652票。「中止するべきだ」76%、「延期するべきだ」12%、「開催するべきだ」10%、「わからない」2%と、今夏の開催には88%が反対だった。

(福田和郎)