黒川温泉が全館再開=「街全体が一旅館」−熊本地震から再興へ

黒川温泉が全館再開=「街全体が一旅館」−熊本地震から再興へ

黒川温泉の全景。山あいの半径2キロの範囲に旅館30軒が並ぶ=熊本県南小国町(同温泉観光旅館協同組合提供)

 熊本・大分県境の山々に囲まれ、ひなびた雰囲気で人気を集める熊本県南小国町の黒川温泉。熊本地震で多くの旅館が休業を余儀なくされたが、最後の1軒が4月、営業を再開した。地区全体を一つの宿と見立てる「黒川温泉一旅館」を合言葉に盛り上げを図ってきた温泉街。3年ぶりに全館が復活し、一丸となって再興に向け動きだした。

 阿蘇や別府などの有名温泉地に挟まれ、かつて客足は鈍かった。1980年代ごろから若手経営者らが中心となり、半径2キロにある旅館30軒を一つの宿、道路は廊下と捉える「一旅館」の理念を掲げ、看板や植栽などを統一し景観づくりに取り組んだ。86年には全国に先駆けて各旅館の露天風呂巡りができる「入湯手形」を考案。その名を全国区に押し上げた。

 2016年4月の熊本地震で、13軒が全壊や一部損壊の被害を受けた。年間約30万人に上る宿泊客は16年度、約24万人に減少。1カ月後までに半数が再開したが、斜面に建ち全壊判定された「南城苑」は再建が遅れた。社長の下城誉裕さん(47)は「地域が共同して復興に取り組む中、引け目を感じた」と振り返る。

 今年4月中旬、南城苑は3年ぶりに営業を再開した。下城さんは「再開の日を夢見てきた。微力ながら今後も黒川温泉のため頑張っていきたい」とあいさつ。同温泉観光旅館協同組合組合長の北里有紀さん(41)は「地域全体で取り組んできた中、最後の1軒で心配が大きかった。3年かかったが、再開にたどり着き感慨深い」と涙を見せた。

 黒川温泉では、入湯手形を使って24カ所に入ると「湯めぐり達人」と認定され、観光案内所に氏名が掲示される。南城苑復活で、露天風呂28カ所の「完全制覇」もできるようになった。宿泊客数は18年度に約28万人まで回復、手形販売数は今秋には通算300万枚を突破する見通しだ。

 北里さんは「今後もみんなで景観や環境整備をし、都市と対極にある究極の田舎をつくり続ける」と意気込んでいる。 【時事通信社】