「平常心で懸け橋に」=黒子に徹するバンドボーカル−通訳の佐藤さん・ラグビーW杯

「平常心で懸け橋に」=黒子に徹するバンドボーカル−通訳の佐藤さん・ラグビーW杯

記者会見で日本代表ムーア選手(左)の通訳をする佐藤秀典さん=9日、東京都千代田区

 ラグビーワールドカップ日本代表は、合言葉「ワンチーム」の下、選手とスタッフが一丸となり躍進している。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)をはじめとする多くの外国人と日本人との懸け橋、通訳の佐藤秀典さん(38)は「平常心を心掛けている」と語る。

 佐藤さんは高校卒業後、約8年いたオーストラリアから帰国。2003年からトップリーグのワールドで通訳を始め、15年に当時の日本代表エディー・ジョーンズHCに誘われて以来、代表で通訳をしている。

 よく声が通ると評判の佐藤さんは、デスメタルバンドのボーカルとしても活動している。自分の通訳に価値があれば融通を利かせてもらえ、バンド活動を続けられると考え、「動機は不純だが、バンドのために本気で取り組んだ」。最初はラグビーのルールも分からなかったが、一つ一つ吸収し、今では「戦術理解は(通訳の)前提だ」と話す。

 チームは選手だけでも31人中15人が外国出身。早朝のミーティングから練習、コーチと選手の個別の面談まで、佐藤さんは多忙を極める。コミュニケーションを円滑にするため早口での通訳を心掛け、円陣で熱く話す際には関西弁を使い、ミーティングでは丁寧な言葉を使うなど、ニュアンスを正確に伝える努力もしている。

 ステージでは熱狂する佐藤さんだが、通訳時には「気持ちを鎮火させ続けている」と話す。一番大切にしているのは「感情を入れずに平常心で臨むこと」。通訳はあくまで黒子であり、ツールだと考え、解釈は一切加えない。

 コーチが選手を試すこともあり、選手が戸惑っていても助言はしない。厳しい言葉もそのまま伝え、選手にいら立ちを向けられたことも。自身について「ちょっと冷たいですね」と話す佐藤さんだが、日本が大金星を挙げたアイルランド戦後は「さすがに感情を抑えることができなかった」と振り返る。

 バンドは現在休止中だが、来年1月にはおよそ1年ぶりのライブを計画しているという。 【時事通信社】