老舗酒蔵に杉玉=兵庫県姫路市〔地域〕

 180年以上の歴史を持つ兵庫県姫路市の老舗酒蔵、田中酒造場に今年収穫した米で醸した新酒の完成を知らせる「杉玉」が玄関に掲げられた。蔵の中では、古来の製法「石掛式天秤搾り」で、もろみの初搾りが行われ、アルコール度数約20度の「あらばしり」が勢いよくおけに向かう。来年3月中旬までこの製法で20銘柄を仕込んでいく。

 姫路市を含む兵庫県の播州地域は、日本酒発祥の地とされ、酒造好適米の代表格「山田錦」も同地域から誕生した。20を超える酒蔵が構え、個性豊かな酒造りに力を入れる。田中酒造場は毎年、精米歩合の削減に挑み、今年は米を7.2%まで削り上げた純米大吟醸を完成させた。

 田中酒造場は、戦前までてんびん搾りを取り入れていたが、機器の近代化に伴い廃止。2000年、21世紀に残したい文化として復活させた。手間暇のかかる製法だが、機械式と比べて雑味のない、まろやかな味わいに仕上がるという。

 初搾りでは長年、倉庫で眠っていたという桜木製の箱に、もろみを流し込んだポリエステル系繊維の袋を60個ほど収容。ふたをした後、長さ約5メートルのてんびん棒の端に約120キロ分の石をつり、てこの原理でふたを押し下げていく。機械での圧搾は1日で終わるが、てんびん搾りは3日間続くという。

 このあらばしりを瓶詰めした「名刀正宗 しぼりたて 天秤搾り」は、1300円(720ミリリットル、税抜き)で12月初旬から販売。仕込みを始めた10月後半は気温が高く、もろみの温度管理に苦労したという杜氏(とうじ)の須川陽司さんは、「米のうま味が溶け込んだ、すっきりとしたうま口に仕上がった」と胸を張って話した。 【時事通信社】