河井前法相起訴「普通のこと」=「政治と検察」注目下―コロナで足止めも・検察当局

 東京地検特捜部は8日、衆院議員の河井克行前法相と妻の案里参院議員を公選法違反(買収)罪で起訴した。「政治と検察」の距離が注目を集めた中、政権中枢に近いとされた法務行政の前トップをターゲットとする捜査に当たった検事は、買収対象となった地元議員らに「命を懸けている」と話したという。

 検察当局が前法相の買収疑惑をつかんだのは、今年1月だ。車上運動員への違法報酬事件で夫妻の自宅や地元事務所を家宅捜索した際、地元議員らの名前と金額が列挙された2種類のリストを押収。買収を疑わせる物証を前に、現場は前法相を捜査のターゲットに据えた。

 直後の同月末、黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年延長が閣議決定される。検察人事への政権の介入には野党から異論が噴出。黒川氏が「政権に近い」と評される人物だったことも反発に拍車を掛けた。

 「逮捕許諾請求もやむを得ない」。検察当局の方針が固まり、広島に3月、特捜部が投入された。ちょうど、政府が延長を「後付け」で正当化するような検察庁法改正案を閣議決定した時期だった。

 「政治と検察の確執」が背景にあるとの見方も出たが、検察幹部は「証拠があったから逮捕したに尽きる」と一蹴。「普通のことをしただけだ」と説明した。捜査を知る関係者も「リストだけでは事件にできない。現金受領を認めた議員らの証言が大きかった」などと、証拠に基づいた捜査を強調する。

 順調に見えた捜査にブレーキをかけたのは、新型コロナウイルスだ。議員らへの一斉聴取でリストの記載を裏付けた特捜部が、国会会期中の逮捕に踏み切る構えを見せた矢先の4月、政府が緊急事態宣言を発令する。5月には、黒川氏の賭けマージャン問題も発覚した。検察当局は許諾請求を見送り、裏付け捜査を続行。先延ばしでできた時間を利用し、対象が90人を超える大型買収を一括して立件するという異例の逮捕につなげた。 【時事通信社】