専門家「企業会計に影響も」=ゴーン被告の報酬虚偽記載、初の刑事裁判

 日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(66)の報酬をめぐる今回の裁判では、同被告とグレッグ・ケリー被告(63)の共謀の有無に加え、有価証券報告書に記載するべき「未払い報酬」があったかも争点となる。刑事裁判で報酬額の虚偽記載が問われたケースはこれまでなく、専門家は「判決で刑事罰が認められれば、企業会計に大きな影響がある」と指摘する。

 検察側は、社内文書があった点をゴーン被告の未払い報酬の根拠の一つにしている。ただ、会社法に詳しい専門家は「報酬額を記した資料が残っていたからといって、会社が支払い義務を負うと決まっていたかは疑問だ」と話し、時期や方法が明示されていなければ、会社が支払いを決定したと判断するのは難しいとの見方を示す。

 ケリー被告側は、報酬の一部を有報に記載しなかったとしても、法解釈上は課徴金などの行政処分が相当で刑事罰の対象にはならないと主張する見通し。これに対し、金融商品取引法が専門の関西学院大石田真得教授は、「不記載が刑事罪にならないとの主張は違和感がある」と述べた上で、判決で有罪と認められた場合、「各企業は報酬開示の正確さに、より慎重になる。報酬の決め方や計算方法にもさらに注意を払うようになるのではないか」と話した。

 両被告が隠したとされる報酬額は8年で計約91億円。専門家の中には「事業規模に比べて少額で、投資行動には影響しない」との意見もあるが、会計監査に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「報酬額などの非財務情報を重要視するのは世界的な潮流だ」と強調。「高額報酬の開示義務は、経営の健全さと透明性を示すことが目的。それを裏切る行為は粉飾決算と同様に悪質性が高い虚偽記載だ」と話している。 【時事通信社】