熱海V字回復 温泉街はリバイバルブーム

過去に人気旅行先だった温泉街・熱海(静岡県)。2000年以降は失速ぎみだったが、ここ数年、人気を盛り返していると話題を集めている。

 しかも、熱海だけではなく、国内の温泉街全体に活気が戻りつつあるという。今、なぜ温泉街が再度人気を集めているのか。

 まず熱海の栄光と衰退を、経営アナリストが解説する。
「昭和の熱海は、新婚旅行のメッカであり、バブル前後は社員旅行などで団体客が大量に押し寄せ、1991年には年間440万人以上の宿泊客がいました。しかし、時代の変化と共に古臭い観光地として敬遠され始め、宿泊客は減少傾向が続きます。2002年以降は300万人を割り込み、東日本大震災が発生した2011年には、246万人となりました」

 だが、2012年頃から宿泊客が戻り始め、2015年には300万人を超えるV時回復となった。
「きっかけは、ホテル界の風雲児、星野リゾートグループが2011年にリゾートホテル『リゾナーレ熱海』をオープンさせたことでしょう。近代的なオシャレなデザインで、露天風呂からは熱海の絶景を一望できるため、女性から注目を集めました。託児サービスや子供向けの施設も充実していて、子供を持つ母親が訪れやすいのも人気の理由でしょう」(同)

 加えて、「若者の認知度も高くなった」と、観光業関係者は指摘する。

 「熱海市は番組ロケ支援事業『ADさん、いらっしゃい』を立ち上げ、お笑い、旅、トーク番組などを徹底的にサポート。他の市町村が断るようなロケも積極的に受け入れています。その結果、メディアの露出が増えて、若者の認知度が急激にアップすることにつながりました」

 全国的節約志向で、“安近短”の国内温泉旅行シフトが強まったのも再浮上に拍車かけている。

 安近短の国民志向は明治安田生命が今年、20〜59歳の男女を対象に行った「夏に関するアンケート調査」でも明白だ。「夏休みの過ごし方」のトップは「自宅でゆっくり」(75・9%)。その理由は「出費がかさむので」(52・5%)と節約志向が過半数を超えている。JTBが昨年末実施したアンケート調査でも同様で、2018年の国内旅行の平均消費額は約3万5000円(対前年比1.4%減)という結果が出ている。

 「アベノミクスは、庶民末端に恩恵があまり感じられておらず節約志向が強まっている。それでもどこか旅行したいとなれば、節約して国内の温泉街、その中でも東京駅から電車で50分、新横浜駅から25分で温泉に入れる熱海に一番注目が集まるのは当然でしょうね」

 さらに、外国人観光客が急増したのも温泉街に活気を与えていると、温泉観光アドバイザーは指摘する。
「外国人観光客は'17年度約2870万人。'11年度の621万人から急増しました。理由は円安、ビザ緩和、LCC普及などいくつもの要素がある。その客が世界でもまだ珍しい日本の温泉街に興味を持ち、熱海だけに限らず、全国の温泉街に殺到しています」

 特に外国人観光客に人気の温泉街に文豪・志賀直哉などが愛した城崎温泉(兵庫)がある。外国人宿泊客数は2011年1118人だったのに対して、2016年は4万人を突破。神戸からバスで3時間近くもかかる山あいの温泉に、なぜ外国人が急増したのか。

「温泉施設を持つ大型ホテルが軒を連ねる温泉地とは全く雰囲気が違います。城崎の場合、約80カ所ある旅館は小規模で家族経営が主体。旅館の部屋数は10〜15室程度です。そのため、中国人の団体旅行などを受け入れるのが難しかった。そこで市は生き残りをかけ、欧州など個人客向けにターゲットを絞り、予約システムを作り、さらに英語の観光情報サイトも立ち上げた。日本らしいひなびた旅館に外国人が興味を持ち、人気が沸騰したのです」

 とはいえ、いまだ客足が足踏みしている温泉街が大半だ。また、人気が再燃した熱海にもまだまだ課題が残っていると、前出の経営アナリストは指摘する。

 「熱海の人口は、60年代5万4000人でしたが、現在は4万人を切り、人口減少に歯止めがかかっていません。高齢化率も45%と高く、80年代は大型旅館、ホテルが200軒を超えていたが、今は半分となり、廃墟も多いです。本当の意味で復活するためには、これらの問題をどう解決するのかが大きな課題となるでしょう」

 熱海と同様の問題は日本全国の温泉街が抱えている。ここを各温泉街がどう乗り越え、オリンピック年である2020年に4000万人ともいわれる外国人観光客、さらに国内旅行者をどう取り込むかはまだまだ議論している最中という。
 V時回復となった熱海とはいえ、これからが正念場となりそうだ。

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