デフレ歓迎ムード再来! 値下げで好調ニッポン企業の未来

 安倍首相が最も恐れるデフレ歓迎ムードが再び強まっている。2年程度で物価上昇率2%を目指してきた政府内部からも「達成不可」のため息が漏れ、今後は期限を明示せず「できるだけ早期に」とする方向だ。

 傾向は庶民の間でさらに顕著。その象徴と言えるのが、全品税抜き280円均一の焼き鳥チェーン店『鳥貴族』(本社:大阪市)だ。物価上昇とは真逆の徹底した低価格とおいしさのダブルポイントで快進撃を続けている。
 「2014年にジャスダックに上場したばかりなのに、わずか2年で今年4月に東証1部上場と電撃躍進。先頃発表した、'16年7月期決算も売上高245億円(前期比31.3%増)、営業利益は15.9億円(同42.7%増)と過去最高を記録するなど、不況や若者の飲酒離れで頭打ちの居酒屋業界にあっては、まさに独り勝ち状態です」(飲食業界紙記者)

 続けて“勝因”をこう分析する。
 「アベノミクスでインフレ旗を振っても庶民はインフレ受け入れにはほど遠い。給料も大幅に上がらない中でモノの値段だけがジワジワ全般に上がっているので、外食やお父さんのお小遣いにしわ寄せがいき、安い方に安い方にと流れている。再びデフレ傾向が強まっているのです」(同)

 鳥貴族は鶏メニューに特化、しかも国産。店舗ごとに鳥を仕入れ、そこで切り分け、串に刺している。看板メニューの「もも貴族焼」は1串90グラムものジャンボサイズで飲み物もオール280円。
 「鶏肉は冷凍を使わないので柔らかくジューシー。発泡酒の金麦は280円だが大ジョッキ。高級ウイスキー響も280円。要は、鳥貴族は単に安いだけでなく、味や品質、ボリュームにこだわったお得感が満載。だから若い人、女性の間で『おいしくて安い焼き鳥居酒屋さん』と人気が高まったのです」(同)

 鳥貴族のIR広報担当者もこう言う。
 「おかげさまでお客さまに支持されているのは、やはりリーズナブルな280円価格と、それに相対する国産鶏へのこだわり、ボリューム感だと思います」
 現在の495店舗(8月)を'21年には1000店目標へと倍増を掲げ、鼻息は荒い。

 一方、一時は異物混入問題でドン底に追い詰められた『マクドナルド』も、昨年来の品質向上に加え、人気の「てりやきマックバーガー」などにトッピングを加えた“裏メニュー”やポケモンGOの出没店舗などのアイデア商品で息を吹き返した。そのマックがこの9月「昼メニュー400円」と低価格セットを投入、攻勢をかける。マックにデフレを意識しての低価格路線かと問うと、広報担当者は「あくまでお客さまの多様性に対応したもので、とりわけ何かを対象にしたものではございません」との答え。しかし経営コンサルタントは、この動きをこう分析する。
 「ランチの費用をできるだけ抑えたいサラリーマンやOLに、低価格のセットは魅力。昼のオフィス街のマックは明らかに客足が戻ってきています。さらには、こちらも低価格路線に一息入れていた牛丼チェーンが、その影響はやはり大と判断し、再び低価格を打ち出す可能性もあります」
 実際、吉野家などは牛丼並盛380円と一時の280円より100円も高い。だが、その一方で低価格の豚丼330円を復活させると、あっという間に牛丼をしのぐ大人気メニューに。確実に“デフレのにおい”が漂っている。

 今年4月に発表されたカジュアル衣料品店『ユニクロ』のファーストリテイリングの'16年8月期第2四半期決算は大幅な減益となった。営業利益は前年同期比33.8%減の993億円、純利益は55.1%減の470億円と苦境に立たされた。
 「ユニクロは'14年の秋冬物から、原材料費の上昇を理由に2年連続で平均10%を値上げした。これはアベノミクスのインフレ政策への賛意も含まれていましたが、深刻な客離れにつながりました。すると、慌ててジーンズやTシャツなどを再値下げ。消費者がこんなにも“割高感”に敏感だとは思わなかったのでしょう」(経済ライター)

 “衣”と“食”でこれほどデフレが歓迎されているとなれば、当然“住”も同様。
 エブリデー・ロー・プライス(EDLP)をキャッチフレーズにするのが、世界最大のスーパーマーケットチェーン・ウォルマート100%傘下の『西友』だ。
 「一定商品の値上げを半年凍結する『プライスロック』が人気です。今も1300品目を掲げ、実質値下げを断行中で、売上を伸ばしています」(同)
 総務省が発表した7月の全国消費者物価指数は99.6%(生鮮食料品を除く)で、前年同月比を0.5%も下回った。とはいえ、デフレを味方にする企業を見ると「デフレが悪いわけではない。インフレになれば景気がよくなるとの考えが浅はかなのだ」ということがよく分かる。

 かつての“本業”が完全崩壊しながらライフサイエンスや高機能材料、印刷、イメージング、関連会社の富士ゼロックスなど5領域が絶好調だった富士フイルムが図らずもつまずいた。8月30日、化粧品大手DHCに1億円の損害賠償を求めた特許訴訟で、同社の請求を棄却する判決が下されたのだ。同社はこれを不服として知的財産高等裁判所に控訴中だ。
 「とはいえライフサイエンス領域の躍進は目覚ましい。インフルエンザ薬『アビガン』はエボラ出血熱に有効性があると伝えられたばかり。4月には人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など、情報科学分野の研究開発を行う『インフォマティクス研究所』を設立して、新分野の事業化を画策中です」(株式市場ライター)

 同社はキヤノンによる東芝の医療機器子会社・東芝メディカルシステムズの買収について異議を唱え、6月30日には、これに同調した公取委が経団連会長輩出企業キヤノンに対して異例ともいえる「注意」を行っている。
 熊本地震で工場が被災したが、その収拾も早かった。同社の果敢な経営戦略は、こんなところにも反映されているようだ。

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