地銀のサバイバルと再編への動きが一気に表面化 来年誕生の『きらぼし銀行』に注目も

記事まとめ

  • 地方銀行の6割が“赤字転落”するとのシミュレーション結果を、金融庁が発表した
  • アベノミクスや円安効果で好調だったが、日銀のマイナス金利が影響しているという
  • 『東京TYFG』に『新銀行東京』が傘下入りし誕生予定の『きらぼし銀行』に俄然注目も

東京「きらぼし銀行」誕生で始まる 全国地銀サバイバルと再編の嵐

 現状のままでは10年後、地方銀行(一般社団法人地方銀行協会加盟銀行64行)の6割が“赤字転落”する−−。先頃、金融庁がそんなシミュレーション結果を発表。その衝撃とともに、地銀ではサバイバルと再編への動きが一気に表面化している。
 その背景を、金融専門誌記者はこう解説する。
 「地銀は数年前から地方の人口減少、地方企業の資金需要の乏しさ、運用難の三重苦に悩まされてきた。中でも筆頭に挙げられる問題は人口減少です」

 2015年の国勢調査では、実に39道府県で人口が減っている。地銀からすれば、人口減は預金者も貸し出し企業も激減することを意味している。
 「それらを踏まえ、金融庁は2年ほど前から“今のままではジリ貧。統合も含め対策を”と、統合再編のハッパをかけていました。それを徐々に進めようとしていた矢先に、新たな障壁が生まれたのです。慌てふためいた金融庁はさらにハッパをかけるため、“このままでは赤字で消えてしまうぞ”と、最後通告とも言えるカンフル剤が、今回のシミュレーションだったのです」(同)

 “新たな障壁”とは何か。
 「日銀のマイナス金利の直撃ですよ。'16年3月期の協会加盟行の純利益の合計は、過去最高を計上した。これは、アベノミクスや円安効果で好調だったためです。それが今年に入り一転してマイナス金利となり、協会の見通しでは'17年3月期の純利益が前期比17.7%減の7343億円にまで、一挙に落ち込む予測になってしまったのです」(地銀関係者)
 そのため、以前から水面下で進められていた統合が、ここへ来て一気に表面化したわけだ。

 注目される統合は、'18年5月を目途にスタート予定の『きらぼし銀行』だ。
 「'14年秋、『東京都民銀行』と『八千代銀行』が経営統合して、『東京TYFG』が発足。そこへ過去、東京都が出資していた『新銀行東京』が傘下入りし『きらぼし銀行』となる。総資産は約5.6兆円で全国の地銀グループでは20位程。しかし、4年後の東京五輪、再開発などの建設ラッシュで経済が活性化する東京での統合のため、俄然、注目を受けているのです」(前出・金融専門誌記者)

 続いて注目されるのは、'17年4月に国内最大の地銀グループとなる、『ふくおかFG』と『十八銀行』(長崎市)の経営統合だ。
 金融コンサルタントが言う。
 「今年4月、『横浜銀行』と『東日本銀行』が合併し、『コンコルディアFG』が総資産17・4兆円で地銀トップに立った。ところが、この新たな統合で総資産が18.7兆円となり、日本最大規模の地銀が誕生します」

 第2位となった『コンコルディアFG』に続く統合地銀は、10月1日に発足する『めぶきFG』。茨城県を中心に北関東で安定した経営を続ける『常陽銀行』と栃木県に根を張る『足利銀行』を傘下に持つ『足利HD』が統合、総資産15兆円規模の地銀グループが誕生する。
 「『めぶきFG』に続く『千葉銀行』は千葉県北部などで『常陽銀行』の激しい攻勢を受けており、今回の『めぶきFG』誕生にピリピリしている。そのため同行は福島の『東邦銀行』との統合を模索しているとも言われる。これは、『常陽銀行』が福島にも勢力を伸ばしているため、それを挟んで千葉と福島で統合しようという動きとも見られています」(金融関係者)

 『千葉銀行』単体で総資産は13.5兆円というから、統合すればトップに迫る地銀が誕生する可能性もある。
 千葉と福島といった遠隔地同士の統合については、'04年に富山市に本店を置く『北陸銀行』と札幌に本店を持つ『北海道銀行』が総資産11.7兆円の『ほくほくFG』として統合した実績もあり、問題はない。
 「地銀は本来、預金を集め、それを貸し出して稼ぐのが基本。預金者に支払う金利よりも融資先企業に貸し出し金利を高く設定して稼ぐ。マイナス金利だと今後、これに応じ地銀も貸出金利を下げていかざるを得なくなる。そうすると、利ざやが稼げず経営的に追い詰められてしまう。そんな中、同地域で地銀同士が貸出競争に走ると、どんどん金利が下がって利ざやが消え、やがて共倒れになってしまう。こうした危機感が再編を促しているのです」(同)

 ただし、急ピッチで進む地銀再編を危ぶむこんな声も聞こえてくる。
 「仮に、関東や北陸の広域で大地銀がひとつになるとする。そこへ大恐慌が起きて地銀が破綻すると、お金を流通させる機能がゼロになり、地域経済が崩壊の危機にさらされることにもなりかねない。地銀の大統合化は、新たなリスクを抱えることにもなる」(同)

 結果、四重苦、五重苦を招かなければいいが。

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