110番から119番へ 警備会社が競う合う介護サービスの今

 警備業界の平成26年の売り上げは約3兆5000億円で年々増加傾向にはあるものの、「約9000社がしのぎを削り業界は飽和状態にある」(業界関係者)という。
 凶悪な事件や重大な事故、災害など、近年われわれを取り巻く生活環境は悪化の一途をたどり、日本の安全神話など嘘のようだ。そうした中にあってこそ、警備会社の存在感が問われるのだが、今の業界は互いに食い合う状態が続いているというのだ。

 日本の警備会社の始まりは、1964年の東京五輪選手村の警備と言われる。
 「選手村は国際社会とも言っていい。自治的な側面が強いため、警察官が中に立ち入って警備をすることが困難だった。そこで、東京五輪開催の2年前に、『日本警備保障(現セコム)』が設立され、選手村の警備を行った。さらに、五輪後には『綜合警備保障(ALSOK)』が設立された。現在、業界第1位、2位がこの『セコム』と『ALSOK』。続く3位が『セントラル警備保障(CSP)』となっています」(同)

 業務内容としては、オフィスビルなどの施設管理、加えて、イベント会場などでの交通誘導などの雑踏警備業務が大半を占める。しかし、これらの分野を同業者間で食い合う中、新しい風が吹き始めたのが15年ほど前だ。
 「今、警備会社の間にはこんな言葉が定着しつつあるんです。110番から119番へ。つまり、介護会社の買収や業務提携を行い、そのノウハウと警備を融合させるサービスを開始したのです」(業界紙記者)

 例えば、『セコム』は1991年から日本初の民間企業による本格的な訪問看護サービスと、薬剤提供サービスの提供を開始した。現在は全国主要都市33カ所に「セコム訪問看護ステーション」を開設。地域に根ざした訪問看護サービスを提供している。
 「高齢者の個人情報を持つ介護会社などをフルに活用して、警備会社でありながら介護も付随させた高齢者見守りサービスを提供する会社は徐々に増えている。互いに食い合うのではなく、別の分野に参入して、市場拡大を図らなければ生き残ることができないのです」(大手警備会社社員)

 『セコム』や『ALSOK』は、それまで訪問介護で困難だった夜間サービスに対応するため、緊急通報用端末を配布。24時間体制の高齢者見守りサービスを提供している。通報ボタンが押されれば、警備員が駆けつけ安否確認や救急車を呼んだり、AEDも使用する。
 なるほど警備会社は、病院も顔負けのサービスを繰り広げていることが分かる。それが可能なのも、警備会社のネットワークシステムが十二分に活用できるからだ。

 加えて『セコム』は伊藤忠商事と組み、海外駐在員向けの高齢者見守りサービス「駐在員ふるさとケアサービス」を2011年から始めている。これは、働き盛りの中高年世代が直面する介護と仕事の両立を目的としている。
 「駐在員が心置きなく働くためには、一人暮らしの高齢者家族の生活や健康状態を把握し、必要な時に適切な対応が取れることへのニーズが高い。そこで、『セコム』のグループ企業であるセコム医療システム会社、セコムホームサービスの保有する業務を、『セコム』の救急通報システムと組み合わせたんです。これによって、遠く離れた駐在員にとって、心強いサポートとなったのです」(業界紙記者)

 ともあれ、警備会社にとってお年寄りのケアは社運を左右する重要課題。
 『CSP』の「見守りハピネス」では、コントローラーの相談ボタンを押すと、保健師や看護師、ケアマネージャーにつながり、24時間対応をしてくれる。
 また、自宅に設置したセンサーが一定時間反応しない場合、自動的に通報されてパトロール員が駆け付ける。
 「高齢者が老人ホームに入居すると、それまで住んでいた持ち家が空き家になってしまう。そこで『セコム』は、留守宅を定期的に訪問して、外部から侵入された形跡はないか、郵便物は溜まっていないかをチェックし、家の換気も同時に行う留守宅サービスを行っている。同様のサービスは『ALSOK』も在宅介護大手の『ニチイ』と組んで行っています」(同)

 まさしく至れり尽くせりのサービス競争を繰り広げるのが警備会社だ。
 「東京五輪をきっかけに需要が高まった警備会社は、その後、個人向けのセキュリティーサービスに裾野を広げ、介護サービスへとつなげてきた。そして、今度の東京五輪に向け、再度、警備サービスが注目を浴びる。そんな中、各社のせめぎ合いは熾烈を極めるでしょう」(業界関係者)

 安全・安心を売る業界の切磋琢磨が続きそうだ。

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