福島原発賠償バブルにいまだ沸くいわき市「表と裏」レポート(1)

 いわき市は太平洋沿岸の福島県南部に位置し、冬でも雪がめったに降らない温暖な気候が特徴だ。県内市町村トップの35万人の人口を誇り、県総人口の18%を占める。福島第一原発はいわき市から約50キロメートル北にあり、車で1時間ほどの距離となっている。

 2011年3月11日の原発事故により、いわき市に避難してきた人は双葉町や大熊町などから2万人以上に及ぶ。被災者は故郷を強制的に追い出され、未曾有の危険を乗り越え、ようやくたどり着いた地だった。
 しかし、渡辺敬夫・前いわき市長は'12年4月、被災者に対して、「東京電力から賠償金を受け、多くの人が働いていない。パチンコ店もすべて満員だ」と苦言を呈した。賠償金を手にした被災者の素行が市内で問題となり、同年12月には市役所の玄関や公民館など四つの公営施設に黒スプレーで「被災者帰れ」と落書きされる事件にまで発展した。

 多額の賠償金を手にした被災者は少なくない。東京電力からの賠償金として個人、法人に支払われた総額は7兆2560億円(今年5月12日現在)に達する。賠償の認定は各世帯、法人により多岐にわたるが、帰還困難区域、大熊町、双葉町で移住を余儀なくされたことに対する精神的賠償として1人700万円。加えて1人月10万円が支払われ、5人家族だと月50万円。これだけでも年収は600万円となる。さらに原発事故以前の所得を補償する就労不能損害もプラスされた。住居や家財、山林なども補償の対象となり、総額1億円、2億円といった億単位の賠償金を得た世帯も少なくないといわれている。

 これまでいわき市の賠償金バブルの象徴として幾度も報道されてきたのが、前述の渡辺前市長の苦言にもあった市内のパチンコ店だ。駐車場にはベンツやBMW、レクサスといった高級車が多数並ぶと噂された。
 実際に、駐車場が設置されている2軒のパチンコ店に平日の昼間に行ってみると、駐車場はベンツなどの高級車が溢れていることもなく、確認できたベンツは2軒で1台のみ。

 では、被災者が賠償金で高級車を購入しているという話は間違いなのだろうか。
 「カタログを取りに来るお客様は増えました。その際、『オーナーになるだけの金は持っている』とはっきりおっしゃられる方もいます。しかし、やはり周囲の目を気にしてか、国産大衆車の新車を選んで乗っている人が多いですね」(いわき市内高級車ディーラー)

 一方、いわき市内で50年以上経営する老舗の日本料理店は、羽振りのよい被災者を数多く目の当たりにしてきたという。
 「やっぱり外(いわき市外)から来た被災したお客さんは大胆というか、お金の使い方が全然違います。お客さんの数は一気に増えて、土日は予約なしでは入れない状態になりました」(日本料理店の女将)

 いわき市内の運送会社で働く大熊町出身の20代女性は、'11年1月に結婚し、その2カ月後に大熊町で被災した。それまで福島第一原発で仕事をしていた夫は、新潟県の柏崎刈羽原発で働くことになり、彼女自身は妊娠していたため親戚のいる会津若松市に避難。2人目の子どもができたことで昨年、いわき市内に新築の一戸建てを購入。ようやく家族4人での暮らしが始まった。
 現在、夫は派遣社員として働きながら正社員の求職活動をしている。
 「家族バラバラの4年間の生活はずっと不安だったし、大雪に見舞われる会津の気候に慣れなくてつらかった。私たちの賠償金は大したことない。いらないから元の生活に戻してほしいです」

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