ICBM発射の報復 米軍が北朝鮮・平壌へ向け出撃へ

 7月4日、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星14』の発射に成功したと発表した。この日は米国の独立記念日で、象徴的な意味でも現実的な意味でも、紛れもない“ゲーム・チェンジャー(試合の流れを一気に変える要因)”の一発と言える。
 果たして、金正恩党委員長はトランプ大統領の虎の尾を踏んだのか――。
 「北朝鮮が核実験とミサイル発射を繰り返すのは、米本土に届く核ミサイルをカードにして米国に自らを『核保有国』と認めさせ、体制維持の保証を取り付けるためです。対するトランプ政権は北朝鮮の核保有を容認せず、軍事オプションを含む『すべての選択肢』がテーブルの上にあると繰り返してきました。ですからICBM発射を受けて、軍事攻撃か交渉かは不明ですが、近いうちに解決に向けて動くはずです。ただ中露、特にプーチン大統領が北朝鮮問題を引っかき回しており、ロシア次第で、米国が直面する不快な現実から目をそらしてしまう可能性もゼロではありません」(国際関係アナリスト)

 プーチン大統領は、米韓による“斬首作戦”に怯える金委員長に泣きつかれ、対特殊部隊作戦を得意とする旧KGBの精鋭部隊の一部を送り込んで身辺警護に当たらせるなど、後見人として振る舞い始めた。狙いは、米国に北朝鮮カードをチラつかせ、ウクライナ問題を巡る経済制裁を解除させることだ。
 一方、トランプ政権が表明している北朝鮮軍事攻撃以外のオプションは次の三つになる。(1)中国を制裁圧力・説得工作に当たらせる、(2)米朝トップの直接会談による決着、(3)ロシアとの関係をテコにした解決策。だが、いずれも視界は不良だ。中でも(1)についてトランプ大統領は、ドイツで7月8日に行われた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)での米中首脳会談で、もはや中国への幻想を捨てたとみられる。
 「G20で日米は一致して北朝鮮への強硬策を求めたものの、結局は中露の賛成が得られず、当たり障りのない非難声明を出すのが精一杯でした。中国はすでにロシアの言いなりで、米国の意向などハナから聞く気がありません。ですから、北朝鮮の行動を容認できないなどと繰り返し述べてはいますが、米国が韓国で配備を進めるTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を引き揚げるべきとの意見をロシアと歩調を合わせる形で表明していますし、また米韓が北朝鮮国境近くで実施している合同軍事演習の停止をも求めています。中国にすれば、対北制裁などという返り血を浴びるような面倒くさいことをしなくても、文在寅大統領をいたぶっているだけで米韓関係はどんどん悪くなり、黙っていても在韓米軍は撤収し、さらには米韓同盟破棄まで期待できるようになったのです。こうなると中国にとっては、北朝鮮の核・ミサイル問題は解決しない方がベターなのです」(国際ジャーナリスト)

 トランプ大統領は事前にこうした空気を察していたのか、去る6月20日、ツイッターに《北朝鮮を巡る習主席と中国の努力には感謝しているが、うまくいっていない》と書き込んでいる。
 「トランプが軍事行動を取る場合の障害となるものは、現状“ロシアゲート”疑惑で追い詰められている中で国民の信頼を得るのが難しいという点。しかし、その状況に変化の兆しがあるのです。疑惑を巡り、トランプを司法妨害容疑で弾劾に追い込もうとしている元FBI長官のミュラー特別検察官に対する評価が、ここに来て揺らいでいるからです。徐々にですが、弾劾に追い込まれる可能性は小さくなっており、反対に大統領の支持率は上昇して、退勢挽回のチャンスを迎えているのです」(在米日本人ジャーナリスト)

 仮にプーチン大統領の仲介で米朝トップ会談が実現することになれば、それこそロシアゲート疑惑など吹っ飛んでしまうだろう。
 「ストックホルム国際平和研究所が7月3日に発表した世界の核軍備に関する最新報告書によると『北朝鮮は今年1月現在、10〜20発の核弾頭を保有していると推定される』としています。ただし実戦配備はいまだ整わず、米国に核を打ち込む能力を備えるまでには技術的ハードルが残されています。核弾頭をICBM先端に搭載可能なほどの小型化に成功していない上、今回の発射が示すように北のミサイルにはまだ米国中央部に到達するほどの飛距離がありません。しかし、モタついているとICBMの性能をさらに向上させるばかりか、核の小型化にまい進させてしまいます。トランプは、さすがにこれ以上の暴走を許すつもりはありません」(軍事ジャーナリスト)

 韓国在住の米民間人は6月に避難訓練を行っているし、8月中旬から再び米韓合同軍事演習が予定されており、北朝鮮との間に軍事的緊張が高まるのは確実だ。
 「米国はイラク戦争で長期戦に懲りていますから、トランプ政権が軍事力行使に踏み切るとしたら金委員長の斬首作戦などではなく、物量作戦で軍事拠点を一気にたたくことになると思います。平壌や金委員長が潜むアジトは、闇夜となる新月の8月22日前には緊張状態に入るでしょう」(北朝鮮ウオッチャー)

 実質的にトランプ政権には、軍事力行使に踏み切るか、北朝鮮の威嚇に屈するかの二つの選択肢しかない。トランプ大統領はG20の前段として訪問したポーランドのワルシャワにおける演説で、「西側文明は危機にさらされており、生き延びようとするなら行動しなければならない」と訴えた。
 米国の過去の“行動規範”からすれば、前者、つまり平壌に向けて出撃するのは明らかな状況だ。

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