吉野家の本格参入で激変するか 飲食業界のデリバリー革命

 大手牛丼店チェーンの中で、最近、やや売り上げの低迷に悩む『吉野家』が、巻き返しを狙ってか、宅配デリバリーサービスに本格参入した。
 まずは、『吉野家』の広報担当者の話。
 「今年3月から都内恵比寿の店で実験的に始めていましたが、好調だったため6月から本格的にスタートしました。今は東京、千葉、埼玉、福岡などの10店舗でデリバリーをしています。きっかけは、もともと『吉野家』は『出前館』と2015年からスマートフォンで事前注文、予約しテイクアウトする方法を導入しており、全店舗で展開していたことにあります。その『出前館』がシェアリングデリバリーシステムを新たに導入したため、利用することにしたのです」

 これまでも『出前館』は、飲食店のあらゆるジャンルを網羅するため、宅配のポータルサイトでは、注文すると待ち時間表示まで含め、宅配注文をスムーズに行ってきた。さらに6000万人が加入する「Tポイント」も利用可能で、その会員とも連動し、今や、全国約1万5000店舗が登録する国内最大級宅配サイトにまで成長した。
 経営コンサルタントが言う。
 「しかし、このシステムは、自前のデリバリーシステムがないところではなかなか利用しにくかった。当然、『吉野家』も自社で配達システムを導入するには困難が伴う。なにしろ自社でデリバリーの仕組みを構築するためには、受注システム、スタッフの確保、バイクや車、燃料など多大なコストが必要。売り上げが伸びると分かっていても、コストがかさばれば意味がない。そのため二の足を踏む企業も多く、『吉野家』もしかりだった。それをクリアしたのが、シェアリングデリバリーなのです」

 夢の街創造委員会株式会社(大阪市)が運営する『出前館』のシェアリングデリバリーシステムとは何か。
 『出前館』が『吉野家』のデリバリーに利用したのが、新聞配達店だ。朝夕刊の配達の“隙間”に牛丼配達を担ってもらうのだ。
 『吉野家』広報担当がこう続ける。
 「売上高や利用者数などは公表する予定はありませんが、一部では大変好評をいただいています。例えば、女性の方で、牛丼を食べてはみたいが店には1人で足がお運びにくいというお客様もいらっしゃいます。今後、ご要望があれば、ご利用いただける店舗はさらに拡大させていくつもりです」

 関係者らの話を総合すると、『吉野家』は近々、数百店舗までデリバリー規模を拡大させる予定だという。こうした店舗から自宅への宅配システムの動きは、今後、飲食店で加速する傾向が強い。
 「高齢化社会の中で、'16年の経産省の発表では、高齢者の買い物弱者数は約700万人に達し、10年前より100万人も増えていると推計している。加えて、働く主婦の数も増加の一途をたどり、たまには夕食もデリバリーでひと息つきたい人も多い。そのため、今後も飲食デリバリーは需要が拡大するでしょう。これまで、さほどもてはやされなかったのは、ヤマト運輸など宅配関連の人手不足が深刻だったからです」(経済記者)

 しかし、その人手不足を解決させ、飲食デリバリーに新たな期待感を抱かせているのが、シェアリングデリバリーなのだ。
 「頭打ちの飲食業界にとって、デリバリーは売り上げ増加につながる有効な分野と見られています。そのため『マクドナルド』も、『マックデリバリー』と名付けた自前のデリバリーサービスを導入し、徐々に拡大しています」(同)

 日本マクドナルドが、配達員の人手不足として頼るのが、スマートフォンによる配車サービスを手掛けるアメリカのウーバー社。
 同社は、回転寿司チェーンの『スシロー』も活用し宅配を始めている。UberEATSを利用し、南池袋店、五反田店の2店舗で出前サービスを開始。UberEATSは'15年、カナダ・トロントでスタートした宅配サービスで、現在、世界7カ国33都市にまで広がっている。注文を受けてから届けるまでの時間は平均34分。店員ではない一般人が隙間時間を利用し、自分の自転車や原付きバイクでアプリの指示に従って届ける仕組みだ。
 「回転寿司業界は『スシロー』、『はま寿司』、『くら寿司』、『かっぱ寿司』などの大手が生き残りをかけ死闘中です。トップを走る『スシロー』に対し、最近は『はま寿司』の出店攻勢が続いている。『かっぱ寿司』は6〜7月、期間限定の“食べ放題”で大盛況。行列ができたほどです。そんな中での、『スシロー』のウーバー利用のデリバリーでの巻き返し。これを、他の回転寿司が黙って見ているはずがありません」(外食産業関係者)

 今は決して安価ではないデリバリー料金。この価格破壊時が勝負時か。

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