〈企業・経済深層レポート〉 市場規模が12倍に拡大 沸き立つ日本のeスポーツ業界

大手IT企業サイバーエージェントの系列会社・サイゲームスが配信するスマホ向けの人気カードゲーム『シャドウバース』のeスポーツ大会が、2018年12月に幕張メッセで開催された。この大会はなんと、国内大会では史上最高額となる優勝賞金が100万㌦(約1億1000万円)となり、業界関係者の注目を集めた。

 そもそもeスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、電子機器を使用する娯楽、競技、スポーツ全般を指す。2018年の流行語大賞トップ10にも選ばれ、2018年はまさに日本の“eスポーツ元年”と呼ぶに相応しい年となった。

 しかし、日本ではまだまだ認知度は低く、他国と比べて大分遅れている。オランダの市場調査会社Newzooによれば、現在、全世界のeスポーツ競技人口は1億3000万人となり、数年後には3億人を突破する勢いだという。サッカーの競技人口(約3億人)に迫る。

「アメリカでは、プロバスケットのNBAやメジャーリーグMLBに迫るほどeスポーツは人気があります。賞金も優勝者には億単位が支払われる大会が多くあり、一つの大会で賞金総額28億円というビッグ大会まで出てきています。トッププレーヤーは、賞金だけで年間4億円も稼ぐ人もいますし、さまざまなオプション収入がつけば年収数十億ともいわれ、NBAプレーヤーと匹敵するほどです」(eスポーツ関係者)

 そんなアメリカを後追いするのが中国だ。
「近い将来、中国はアメリカを超えるeスポーツ大国になる気配があります。上海の『宇宙eスポーツセンター』と称される場所には、eスポーツ関連企業が続々集中。大会規模も年々大きくなり、日本円で2億円の優勝賞金を出す大会や、2019年には賞金総額100億円突破の大会も予定され、注目を集めています」(同)

 国がeスポーツ事業を後押ししているのが韓国だ。
「韓国は2004年に、eスポーツ発展の中長期ビジョンを発表し、法律改正がされました。2016年にはソウル市と文化観光体育部が共同でeスポーツ専用競技場を建設したほど。国が後押しした結果、世界で年収1億円前後の韓国人プレーヤーが続出しています。韓国のeスポーツ人口も膨張し、プロは600人でアメリカの700人に次ぐ。韓国では、eスポーツのプロプレーヤーはアイドル以上の人気がありますね」(同)

 それに対して日本は、韓国からは10年以上、そして世界からも5、6年は遅れているという。

 なぜ日本では、アメリカ、韓国、中国ほどeスポーツが盛んにならなかったのか。
「大人世代ではコンピューターゲーム=子どもの遊びという捉え方が多かった。加えて世界ではスポーツという概念が『ともに楽しみながら競うこと』なのです。それに対し日本は、スポーツ=体を動かすという概念のため、海外のようにeスポーツがピンとこなかったのでしょう」(IT関係者)

 さらに日本では、コンピューターゲームというと「ファミコン」に代表されるように家庭用コンピューターが盛んになり、PCゲームが一歩遅れたことも大きな要因という。

 さらに日本では、冒頭に記したように優勝者に1億円の賞金が支払われる大会が現れたとはいえ、海外大会と比較して、まだまだ高額賞金を提供できていない。背景には賭博罪、風俗営業法といった“法の壁”が高くそびえ、大型スポンサーが参入しにくい環境がある。また、他国と比べてeスポーツ教育が出遅れたのも大きい。
「米中などでは、eスポーツを専門的に学べる大学も多いのです。eスポーツの技術に加えてコンピューターの基礎、プログラミングの知識を学ぶことができるのです」(同)

 アメリカはeスポーツ関連の学部を持つ大学が約50校、中国も20校前後に達するが、日本ではゼロに等しい。そんな中、角川ドワンゴ学園「N高校」が今年10月にeスポーツ部を設け、注目されている。

 2018年末には、日本初のeスポーツ高校生全国大会が開かれた。eスポーツを通じ、IT技術者育成に目を向ける傾向が強まっている。
「2019年の茨城国体では、初のeスポーツ都道府県大会を開催。また民間企業の中には、2020年の小学生プログラミング必修化に向け、eスポーツを取り入れたサービスを提供する企業も出てきました」(同)

 デジタルメディア協会主催の大会に、清水建設、大和証券などが投資。関係者らの法の壁クリアの努力も続く。

 そうした努力もあり、2018年度の国内eスポーツ市場規模は、2017年度の4億円から48億円に拡大した。2022年度には、100億円の大台も見据え始めた。

 今後、本格始動した日本のeスポーツ業界が、先行する他国を追随する。

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