〈企業・経済深層レポート〉 ドラッグストアが攻勢 薬局業界で過熱する処方箋争奪バトル

〈企業・経済深層レポート〉 ドラッグストアが攻勢 薬局業界で過熱する処方箋争奪バトル

(提供:週刊実話)

今、ドラッグストアと調剤専門薬局で、処方箋の争奪戦が激化している。

 というのもドラッグストアが調剤薬局併設店舗を急増させており、他の健康食品、簡易医薬品、雑貨商品や食糧品などの品ぞろえの豊富さという利便性で客を吸引し、同時に処方箋の上積みを図っているのだ。

 一方、従来からの調剤専門薬局は、このドラッグストアの攻勢に、さまざまな対抗策と専門性を磨き、対抗の度を強めているという。

 まずはドラッグストアの躍進を見てみよう。日本チェーンドラッグストア協会によると、2018年度の全国のドラッグストアの総売上高は、前年度比6.2%増の7兆2744億円だった。

 「2015年のドラッグストアの総売上高は約6兆円だったので、これが3年で1兆円以上も増加しました。その大きなポイントは、外国人訪日客がドラッグストアでオムツや化粧品など、さまざまな製品を爆買いしたことが大きいでしょう。それに加え、店内に設けられた薬局で薬を処方してもらう客が増えているのです」(ドラッグストア協会関係者)

 あるドラッグストアでは、店内に処方箋を扱う薬局を設けたところ、店舗全体の売り上げが倍以上伸びたという。こうした傾向を踏まえて、各ドラッグストアの個別の動きを見てみよう。

 イオングループでドラッグストア業界トップの「ウエルシア」は、総売上高約7791億円(2019年2月期)。1年後には、調剤併設店舗数を前期比10・8%増の1423店にする計画を発表し、売上高も前年比9.1%増の8500億円を見込む。

 「ウエルシアの調剤薬局の特徴は、カウンセリングの丁寧さ。さらに介護業界でも手薄な訪問介護部門にも進出し、そこで得た顧客を中心に処方箋の売り上げを拡大させています」(業界関係者)

 ドラッグストアの業界シェア2位の「ツルハホールディングス」は、2018年5月期の連結決算では売上高約6732億円だった。これは前年同期比16・7%増となり、純利益も約248億円(6.7%増)と大幅に増収している。その原動力となっているのが、店内併設の調剤薬局なのだ。

 「ツルハは店内の調剤薬局に力を入れ、5年後に売上高1兆円を目指すと超強気の姿勢を示すほど好調です」(業界関係者)

 このように調剤薬局に力を入れて業績を伸ばしているドラッグストア。対する調剤専門薬局は、この動きをどう見るか。

 「ドラッグストアでは、処方箋調剤が終わるまでの間に食料品や日用品の買い物できるため、確かに利便性は高いと思います。しかし、調剤専門薬局は、買い物の利便性こそありませんが、薬剤師の教育を徹底しています。ドラッグストアよりも、顧客の信頼度は高いというのが大きな強みです」(調剤薬局勤務の薬剤師)

 その強みを活かして、調剤専門薬局はドラッグストアとの差別化を図っている。例えば、調剤専門薬局でトップを走る「アイングループ」は、全1077店舗のうち、約9割の店舗でいつでも相談できる「かかりつけ薬局」としての機能を持つ。
「さらに薬剤師が訪問する在宅医療を700店舗で実施しています」(薬局業界記者)

 アイングループは、従来の強みを活かすだけでなく、反撃にも打って出ている。
「女性の美容健康相談や、美容健康品を売るドラッグストア『アインズ&トルぺ』の展開も開始しています。つまり、調剤専門薬局がグループとして、ドラッグストアにも切り込んでいるのです」(薬剤業界関係者)

 2018年の総売上高1455億円の調剤専門薬局大手の「クオール」は、JR西日本やビックカメラなど、異業種と連携して「街ナカ」「駅チカ」「駅ナカ」などに設置する調剤専門薬局の展開に力を入れている。

 「通勤途中で薬を調剤してもらうのも便利ですし、なにかと忙しい社会人から小回りの利く調剤専門薬局として浸透しつつあります」(同)

 激しい処方箋争奪戦が繰り広げられているが、現状は利便性の高いドラッグストアに軍配が上がる見方をする専門家が多い。ただ、専門調剤薬局が有利な部分もある。
「42兆円を突破する膨大な医療費が問題になっていて、そのうち約8兆円に及ぶのが調剤費。調剤薬局には、医療機関と連携し、服薬情報の一元的・継続的な管理をして、調剤費の削減が求められています。これに伴い、薬剤師個人の役割も高まり、これまで以上に高度な知識を求められることになります」(同)

 つまり、教育が徹底している調剤専門薬局の需要も高まっているのだ。

 薬局業界の処方箋を巡る激しい争奪戦は、今後もますます過熱しそうな気配だ。

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