大学職員が提訴へ(2)背任罪で刑事告発検討

「世間の常識が通用しないのが私学の世界です。しかも、田中理事長はJOC(日本オリンピック委員会)副会長も務めていたが、反社会勢力との黒い交際疑惑が発覚し辞任した過去がある。日大からは東京五輪に出場する学生も何人かいるので、これ以上、責任の取り方をめぐって追及されることはないと判断したのではないでしょうか」(同)

 いくら日本一の学生数を誇る日大とはいえ、田中理事長が居座り続けることで「将来的に経営環境が傾くのではないか」という疑念もある。

 「このままでは日大は大学、付属高校ともに志願者が減少する可能性が少なくありません。日大の総収入は平成28年度で約2700億円あり、そのうち約1100億円が学費や受験料で占められている。しかし、田中理事長が自身の進退も含め何の改革もしないのであれば、志望者が減り続け、収入が大幅に減る恐れさえある」(教育関係者)

 これからの私立大学にとって、本当に重要なものとは、学生、教授、職員を含めた人材や、寄付金などを集める源泉となる「ブランド力」と「組織力」だ。

 「不祥事、その後の対応で後手後手に回った日大のブランド力が著しく低下したのは間違いありません。経営トップの田中理事長が地位にしがみつけばしがみつくほど、組織力も減退する一方です。不透明な学校経営が改善されなければ、銀行も融資を躊躇するでしょう。つまり、日大は抜け出すことのできない負のスパイラルに陥ることもあり得るのです」(同)

 人の噂も七十五日。いずれ事件は忘れ去られるとばかりに事態を軽く考えているフシのある田中理事長。これだけガバナンスの問題が指摘されても、執行部の体質は変わりそうにない。日大に関わる多くの関係者が「組織の健全化は望めない」とソッポを向くのは目に見えている。

 ノンフィクション作家の織田淳太郎氏がバッサリ切り捨てる。
「誰が見てもおかしいと思うことであっても、それを発言すると、自分の立場が悪くなってしまう。長い物には巻かれろで、口をつぐんでしまうのはワンマン経営にありがちなことです。トップはポストを守りたい、配下の取り巻きは甘い汁を吸いたい。しかし、問題提起すべき時に何もしないと、取り返しのつかないことになってしまいます」

 日大の付属校には、難関国立大学にも進学できる優秀な生徒が少なからずいる。
「これまでの日大は付属高校の優秀な生徒が内部進学して力を発揮し、大学を支えてきた。今後はそんな優秀な生徒が日大を見限るでしょう。大学の偏差値は下がり、さらに優秀な受験生からは敬遠される。ここでも負のスパイラルが起きるはずです」(事情通)

 日大を取り巻く環境からして、それが現実のものとなる可能性は少なくない。
「相撲界は八百長問題や力士の稽古不足などが問題山積なのに、長らくほったらかしにしてきた。この10年来、積もり積もった膿で本場所が中止になり、相撲協会の倒産まで噂された。横綱輪島の先輩であり、学生横綱に輝いたこともある田中理事長は相撲協会とのつながりが深い。そして、臭いものにはフタという体質まで染みついているのではないか。令和の新しい時代に同じことを繰り返していると、行きつく先は倒産です」(スポーツ紙記者)

 日大アメフト部員による悪質タックル問題が起きてから1年。前述の牧野元副総長は会見でこう訴えた。
「昨年度の私学助成金が35%減額され、今年の入試で志願者が減少するなど事態は深刻だが、理事長は説明責任を果たしていない」

 また、『新しい日本大学をつくる会』のメンバーが背任罪で刑事告発を行う考えも示した。
「会のメンバーは日大の教職員OBら約25人。OBでは大学のイメージ悪化を理由とする慰謝料請求が難しいため、日大の複数の現役教職員が原告となるほか、大学院生にも参加を呼びかけます」(日大関係者)

 私学助成金カットというペナルティーが加えられたのに、頑として辞任しない田中理事長。一方、日大職員らの今回の提訴について疑問を呈する意見もある。漫画家のやくみつる氏だ。
「田中氏が責任を取る取らないというのは、日大内部で相談することです。責任を取るなら、あそこまで社会問題になった時点で辞めるべきだった。あくまで私学ですから、田中氏に反対派の人が世間様に向かって発表することだろうか」

 日大で学生相撲、相撲部監督など半世紀以上に渡り密接に関わってきた田中理事長には、とてつもない忍耐力があるという。
「JOC副会長はいわば公職です。そのため、黒い交際疑惑ではさっさと辞めたが、日大理事長の座は簡単に投げ出すはずがない。ここは我慢のしどころと思えば、世間の批判などどこ吹く風です。ヘタに会見し墓穴を掘ることは避けたいのが、田中理事長のスタンスです」(スポーツ紙デスク)

 政財界を見渡しても、潔く責任を取らない権力者が溢れている現代ニッポン。田中理事長はその鏡か…。

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