世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第331回 財政破綻論による衰退

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第331回 財政破綻論による衰退

(提供:週刊実話)

7月21日に投開票が行われた参議院選挙で、与党が過半数の議席を獲得。結果的に、10月の消費税率10%への引き上げは確定的になった。麻生財務大臣は23日の閣議後記者会見で、10月に予定する消費税増税について、参院選により「信認をいただいた」との認識を示した。

 世論調査では、消費税増税について過半数が反対している。それにも関わらず、増税を掲げた自民党は、議席こそ減らしたものの、大敗することはなかった。もっとも、消費税廃止を掲げた「れいわ新選組」が228万もの票を得票し、党の公約に逆らい「消費税ゼロ」を掲げた石垣のりこ氏(立憲民主党)が、自民現職を破って当選したことからも、「反・消費税」「反・緊縮財政」の声は確実に高まっている。

 とはいえ、現在の野党勢力の消費税反対論の多くは、
「消費税増税は必要だが、今はタイミング的にまずい」という「穏やかな緊縮財政」にすぎず、これでは国民の支持を得ることはできないだろう。野党もまた、財政破綻論という呪縛に囚われたままなのだ。

 日本国民の多くは、「日本は財政赤字が膨らみ、国の借金で破綻する」という、財務省発のプロパガンダに騙されているのだが、とりあえず落ち着いて「他の国」と比較してみよう。まずは、主要国の中で日本ほど「政府の負債(財務省の言う“国の借金”)」を増やしていない国はない、という現実を抑えてほしい(書き違いではない)。

 左図の通り、2001年を1とすると、日本政府の債務残高は2018年時点で1.7倍になっている。それに対し、アメリカは3.9倍、中国は16・5倍(!)だ。この手のデータを、日本国民は全く教えられていない。結果的に、「日本ほど『国の借金』を増やしている国は存在しない」などと、まさに“愚民”として財務省の財政破綻プロパガンダを信じ込まされている。図が「事実」なのである。日本ほど政府の負債を“増やしていない”国は存在しない。

 そして、日本政府はアメリカや中国の政府とは異なり「国民のために支出していない」というのも、これまた事実だ。ちなみに、政府支出を対2001年比で見てみると、アメリカが2.1倍、中国が15・7倍に対し、日本はわずか1・08倍。ほぼ横ばいなのである。

 「いや、中国やアメリカは経済成長しているから、政府の負債や支出を増やしても構わないが、日本は経済成長していないから政府の負債や支出を増やせない」
 と、反発したくなった読者は少なくないだろうが、話はまるで逆だ。日本は経済成長率が低迷しているため、政府の負債・支出を増やせないのではない。政府の負債・支出を増やさないからこそ、経済成長しないのである。

 経済成長の定義は、GDP(国内総生産)の拡大である。そして、支出面(需要面)で見たGDPの中には「政府最終消費支出」「公的固定資本形成」という政府支出が含まれているのだ。

 GDPには政府の支出が含まれている。政府の支出を増やさない国は、GDPが増えない。小学生でも理解できる理屈である。

 しかも、日本は1997年の橋本緊縮財政以降、民間(企業・家計)が支出を絞り込むデフレーションが続いているのだ。デフレで需要、市場が拡大しない状況で、企業が設備投資を拡大することはない。さらには、実質賃金が落ち込む貧困化が続く以上、国民が消費や住宅投資を増やすこともない。

 デフレーションは、政府が支出(政府最終消費支出と公的固定資本形成)を増大させ、需要不足を埋めない限り解消しない。ところが、現実の日本政府は支出を全く増やさず、デフレが継続し、日本国は背筋が寒くなる勢いで小国化、衰退国化している。

 「いや、そんなこと言っても、国の借金が〜」
 と、財務省の洗脳のままに「現実」を否定しようとする人は少なくないだろうが、ならば、なぜアメリカや中国は、政府の負債を日本とは比較にならないペースで拡大しているにも関わらず「財政破綻(政府の債務不履行)」とやらに陥っていないのか。理由は簡単。米中両国は、日本同様に独自通貨国で、政府債務が「自国通貨建て」のためだ。

 ちなみに、本連載が始まったのは2012年であるが、連載当初から筆者は「日本の財政破綻論の嘘」「国の借金の嘘」について解説をしてきた。7年が経過し、相変わらず日本国は「クニノシャッキンデハタンスル」という存在しない財政問題に手足を縛られ、デフレーションから脱却できずにいる。

 改めて、日本政府の負債(メインが国債)は日本円建てなのである。子会社の日銀に国債を買い取らせると、国債の返済負担が消滅する日本政府が、いったいどうすれば「財政破綻」に陥ることができるというのか。絶対に不可能だ。

 あるいは「日銀が国債を買い取ればハイパーインフレーションになる」と、奇想天外な破綻論を述べる者もいるが、2013年以降、日銀は何と370兆円ものマネタリーベースを拡大し(=おカネ発行)、国債を買い取ってきた。結果的に、ハイパーインフレとやらになったのか。インフレ率は、コアコアCPIでゼロであり、GDPデフレータベースではマイナスだ。

 日本は財政破綻論という“嘘”により衰退していっている。財政破綻論が根本から間違えていることは、日本の「実績」が証明したのだが、過去に破綻論やハイパーインフレ論を叫んだ嘘つきたちは、罰せられることはない。それどころか、相も変わらず「クニノシャッキンデハタンスル」と叫び続け、日本は衰退国に向かって坂を転げ落ちている。

 この「財政破綻論による衰退」にストップをかけることが可能な“考え方”が、まさに「MMT(現代貨幣理論)」なのである。というわけで、次回はMMTが明らかにしてしまった2つの事実、すなわち「財政赤字は、実は民間の黒字」「政府債務残高は、実は貨幣発行残高」について解説しよう。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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