森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★首都圏住民がカジノ漬けに

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★首都圏住民がカジノ漬けに

(提供:週刊実話)

横浜市の林文子市長が誘致を表明したカジノの誘致関連費用2億6000万円を含む横浜市の補正予算案が、9月20日の市議会本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。これで事実上、横浜市にカジノができることが、ほぼ確実になった。

 林市長は、市長選のときを含めてカジノ誘致に関して「白紙」だと言い続けてきた。神奈川新聞社とJX通信社が合同で実施した市民意向調査によると、横浜市民の64%がカジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致に反対している。なぜ林市長がカジノ導入に突然舵を切ったのか。私は、背後に米国からの要求があったのではないかと思う。

 もともと、カジノは大阪府大阪市の夢洲(ゆめしま)に作られることで、ほぼ決定していた。2025年の大阪万博に世界からやってくる大量の観客を運ぶためには、地下鉄を夢洲まで延伸しないといけない。ただ、万博だけのために延伸をすると、万博終了後に電車がガラガラになってしまう。そこでカジノ誘致と同時に進めることで、万博終了後の地下鉄を支えるというのが大阪府や大阪市の構想だ。さらに、地下鉄延伸費用をカジノの事業者に負担させれば、丸儲けになる。このシナリオ通りに事態は着々と進んでいるとみられていた。ところが、カジノ運営事業者の最有力と言われた米国のラスベガス・サンズが、8月22日に大阪からの撤退を表明。照準を横浜に移すというのだ。サンズの撤退表明は、林市長がカジノ誘致を表明した同日だった。

 サンズは、大阪の夢洲に1兆円規模の投資をすると言ってきた。そんな巨額の投資を行う場所を瞬時に切り替えられるだろうか。私は、サンズが少なくとも横浜市の誘致を事前に知っていたと思うし、横浜市の誘致表明自体がサンズによって仕掛けられたものである可能性もあるとみている。

 カジノ誘致が予定されている横浜の山下ふ頭は、地下鉄の駅が目前にあり、首都圏からのアクセスがきわめてよい。近畿圏の人口が2100万人に対して、関東圏の人口は4300万人と2倍以上。横浜は羽田空港も近く、全国からの集客も期待できる。ビジネスとして考えれば、横浜は夢洲よりも圧倒的に魅力的だ。

 証拠はないのだが、横浜のカジノがいきなり候補地のトップに躍り出た理由は、日米貿易交渉で日本から輸入する自動車への関税引き上げなど、厳しい要求を突き付けられた日本が、横浜のカジノ設置を差し出さざるを得なくなった可能性もあるのではないだろうか。

 横浜のカジノ設置は、日本人の暮らしに深刻な被害をもたらすだろう。私は、ラスベガスのカジノに一度行っただけだが、カジノはとてつもなく楽しかった。私は、財布の中に旅行費用の一部だけ入れて出かけたのだが、案の定、財布の中はすっからかんになった。カジノの経済効果が大きいのは、パチンコや公営ギャンブルとは比べ物にならないほど高い射幸性にある。その射幸性で稼いだ収益の7割は、運営事業者のものになる。米国にとっては、日本からの輸入に関税をかけるよりも、はるかに効果的な“経済政策”なのだ。

 博打で負けるのは、カネのない人だ。今回の林市長の決断で、日本人の実質的な所得格差は、ますます拡大していくだろう。

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