森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★関西電力の三文芝居

「返したくても返せず、我慢を重ねてきた」

 関西電力の幹部20人が福井県高浜町の元助役、森山栄治氏らから3億2000万円の金品を受け取っていた事件で、岩根社長は、やむを得ない対応であったと強調した。どうやら関電は、森山氏にすべての責任をなすりつけたかったようだ。岩根社長の就任祝いとして渡された菓子箱の底には金貨が入っていたという。これだと、森山氏は、時代劇の「越後屋」の扱いだ。

 しかし、冷静に事実を振り返れば、関電の「返却を強く拒絶されたための一時的な保管だった」という説明は、無理がありすぎる。まず、金貨などの高額の金品の保管が最長11年に及んでいることだ。また、個人による保管が行われていたことも異常だ。森山氏への配慮から、どうしても金品の返却ができなかったとしても、その場合は会社として保管すべき。それをせずに個人で保管していたというのは、事実上、着服したとみられても仕方がない。受領した金品の大部分は、すでに返却したとされたが、3487万円分が未返却となっている。この未返却分は75着分のスーツのお仕立券だとされる。なぜ、返せないのかといえば、もう仕立ててしまったからだろう。つまり、1着50万円のスーツは、もはや着服されていたのだ。

 すでに返却されたとされる2億8358万円についても、疑惑が残る。昨年1月に森山氏が顧問を務めていた吉田開発に税務調査が入り、事件が発覚することになったのだが、返却された金品の56%が、税務調査後に返却された。鈴木聡常務を除く19人についてみると、実に73%が税務調査後に返却されている。

 こうした事実から考えると、吉田開発への税務調査で金品の受領が発覚して、あわてて返却したというのが、実態なのではないか。しかも、受領した金品は、着服されていた可能性もある。お金や金貨に色はついていないから、後から「一時保管していました」と言って、自分の預金から返却しても分からないのだ。

 さらに大きな疑問は、会社としての対応だ。金品受領問題は、昨年7月に社内委員会が調査を開始し、9月には報告書が取りまとめられている。しかし、その調査結果は、取締役会に報告されることなく、隠ぺいされてきた。そして、今年3月に森山氏が死去した後、今回の会見となったのだ。

 森山氏が亡くなったことで、贈賄側の証言が取れなくなったため、関西電力幹部の会社法上の収賄罪や特別背任罪での立件は、難しくなったという。

 しかし、少なくとも脱税での強制捜査はすべき。豊松秀己元副社長と鈴木常務は、それぞれ1億円以上の金品を受領しているからだ。

 昨年12月、大阪城公園内でたこ焼きなどを販売する売店が売上を申告せず、約1億3200万円を脱税したとして所得税法違反に問われた経営者に大阪地裁は、懲役1年、執行猶予3年、罰金2600万円の判決を言い渡した。「確定申告の方法が分からず、納税できなかった」という被告の主張は一切認められなかった。

 たこ焼き屋の経営者と関電の幹部のどちらが悪質かと言えば、働きもせず大金を得た関電幹部だろう。だから、国税が動くべき。「一時保管」という言い逃れを認めたら、誰も税金を払わなくなるからだ。

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