〈企業・経済深層レポート〉過去10年間で最高の売上高 絶好調のゼネンコン業界に漂う不安要素

2020年の東京オリンピックなどのビッグプロジェクトの影響なのか、日本のゼネコンの売上高が伸びている。大手信用調査会社の東京商工リサーチによれば、上場ゼネコン57社の単体決算(2019年3月期)の売上高合計は12兆8148億円(前年比6.0%増)で、2009年以降の10年間で最高を記録。伸び率も2014年(同7.4%増)に次ぐ、2番目の高水準だった。

 企業単独の売上高を見ると、トップの清水建設は1兆4067億円、2位の大林組は1兆3982億円、3位の大成建設は1兆3284億円、4位の鹿島建設は1兆2803億円となっている。

 売上高の対前年比の伸び率も、大成建設の4・32%増から清水建設の11.4%増まで、いずれも増加と順調だ。
「今後もビッグプロジェクトが目白押しで、ゼネコン業界の売上高は伸びることが予想されています」(建設コンサルタント)

 例えば、「国土強靭化政策」だ。
「国内の主要インフラは、1964年に開催された東京オリンピック前後の、高度経済成長期に集中的に整備されました。あれから55年経った現在、老朽化が進んでいます」(同)

 日本のインフラの大半は耐用年数限度50年。近い将来に予測されている自然災害での被害想定額(土木学会発表)は、南海トラフ地震1410兆円、首都直下型地震778兆円と発表されており、現在のまま放置した場合の被害は甚大だ。

 そのため国は、どのような災害が発生しても、被害を最小限に抑え、迅速に復旧・復興できる社会を構築するために「国土強靭化政策」を策定し、2018年12月14日に全面リニューアルされた国土強靭化基本計画が閣議決定された。
「’19年度だけでも5兆3000億円を超える予算が組まれ、所要の資金総額は200兆円に及ぶと目されている超巨大施策です」(同)

 ビッグプロジェクトはこれだけではない。
「’25年に開催が決定した大阪万博は、会場建設費が約1250億円、それに周辺整備も加わります。また、全国3カ所に設置予定のカジノもある。ほかにも、リニア新幹線建設もあり、ビッグプロジェクトは目白押しです」(同)

 現状、将来予測ともに、安泰に見えるゼネコン業界。しかし、不安要素もある。

 ゼネコン57社の肝心の利益に目をやると、売上総利益が1兆6516億円で対前年比0.2%減、営業利益が9958億円で同3.5%減となりマイナスなのだ。
「売上高が伸びているのに対して、6年ぶりに各利益が前年を下回りました。ゼネコンの利益のピークアウト(頂点に達して、これ以上成長しないという段階)が鮮明になりましたね」(建設業界関係者)

 その背景を前出の建設業関係者は「原価の高騰」と分析する。

 1992年当時、日本はバブル景気で建設投資総額は約84兆円に達した。だが、その後、バブル崩壊、リーマンショックで’10年までには40兆円規模に落ちる。業界も倒産ラッシュで’97年685万人だった建設業従事者も400万人台まで激減している。

 その後、2011年の東日本大震災で大復興の建設ラッシュ、そして東京五輪開催決定で国全体の建設投資額は再び急上昇。2018年57兆1700億円、対前年比2.1%増となった。
「しかし、一度縮小した業界に、急には人が集まりません。人がいないため人件費は高騰し、加えて、急な仕事が急増したことで材料不足も深刻化しているのです」(同)

 橋梁やビル建築に不可欠の高力ボルトが不足し、工期が1年遅れなどザラで、観光ブームの宮古島では、作業員の日当が3万円にまで高騰しているという。
「国交省によれば、2012年と比べて2017年の人件費は13%前後アップし、材料費は2011年を100とすれば、2017年には107にまで上がりました。人件費と材料費がダブルで高騰してるため、建設業の売り上げが伸びても利益率が伸びない。当然、ゼネコンは人材確保、材料確保のため高い管理費が強いられ、それが業界利益率圧迫につながっているのです」(同)

 業界では、今後、どう利益率を上げられるかが最大の課題となっている。
「ゼネコンは今の環境でITを駆使し、生産性の向上をどう図れるかを懸命に模索しています」(大手ゼネコン関係者)

 例えば、大林組だ。
「人工知能(AI)を活用したシステムの開発を進めていて、トンネル工事の安全性とスピードを高める方法を模索しています。清水建設も建設ロボット技術の開発を進め、人件費抑制や安全性向上に努めている」(同)

 大手ゼネコンは「利益ある成長」を目指し必死だ。

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