北朝鮮 金正恩委員長が父親・金正日総書記「批判」の裏

北朝鮮 金正恩委員長が父親・金正日総書記「批判」の裏

(提供:週刊実話)

10月23日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、北朝鮮の金正恩党委員長が韓国との経済協力のシンボルとして開発された金剛山観光地区を視察したと伝えた。しかし、ここでの正恩氏の発言が波紋を広げている。
「そもそも金剛山観光地区は2000年に史上初の南北首脳会談で、先代の金正日総書記と金大中元韓国大統領との間で合意された、開城工業団地と並ぶ南北融和の象徴と位置付けられた一大リゾート観光事業地。ただ、’08年に軍事区域に迷い込んだ韓国人観光客を、北朝鮮兵士が射殺した事件に怒った李明博大統領(当時)が、観光ツアーを停止。以後11年経った現在も、観光の再開はされていません」(北朝鮮ウオッチャー)

 朝鮮中央通信によると、正恩氏は同地を『先任者らの間違った政策』と批判した上で、「わが国の名山(朝鮮半島5大霊山の1つ)にそぐわないひどい施設だ」とボロクソにけなしている。そして「わが共和国の力で、霊山にふさわしい施設に造り直せ」と命じたというのだ。
「正恩氏は発言の中で『先任者』『党中央委員会の当該部署』という表現を使っているものの、父親である正日総書記が進めた政策を否定したものと受け取れるのです。北朝鮮では先代の政策を批判するのは極めて稀なことです」(同)

 正恩氏による“父親批判”は、今年3月6〜7日に開催された朝鮮労働党の活動家大会でもあった。大会に寄せた宣言文の中で、〈偉大性教育で重要なのは、首領は人民とかけ離れた存在ではなく、人民と生死苦楽をともにし、人民の幸福のために献身する、人民の領導者であるということを、深く認識させることです。もし、偉大性を強調するために、首領の革命活動と風貌を神秘化するならば、真実を隠してしまうことになる〉と述べている。
「これは表に出ることを嫌った父親への皮肉とも取れる批判です。遠回しとはいえ、1度ならず2度までも公然と父親批判したからには、彼の心の中には“父親への憎悪”があるのではないでしょうか」(同)

“父親への憎悪”とは、具体的に何か。それは「母親の扱い」だという。
「正恩氏の母親・高英姫は、大阪生まれの在日朝鮮人というのに加えて、正日氏の正妻ではない。正妻は金日成国家主席が認めた金英淑だけ。“妻”だけで4人、愛人に至ってはトラック1台分いたと言われ、英姫はそのうちの1人にすぎません。しかも、英姫は“夜の務め”ができない体になった後、自らの秘書役だった金玉を正日氏にあてがいました。正恩氏は最愛の母親が涙を流す姿を見た可能性が高く、父親としての正日氏を恨んでいたとしても不思議ではない」(同)

 また、正恩氏は父親の「異常な女性遍歴」に嫌悪感を抱いている節も見受けられる。

 正日氏はかつて、愛人だった女優が別の男性との間でスキャンダルを起こし、父である日成氏に自分との関係がバレるのを恐れ、口封じのために公開処刑したと言われている。
「北朝鮮の国内外で広く流布している話だけに、正恩氏がこのエピソードを知らないはずはありません。公開処刑の残忍さにかけては、日成氏や正日氏以上とも言われている正恩氏ですが、現在のところ、父親のような女性関係での傍若無人な振る舞いは聞こえてきません。むしろ、金正恩政権は女性が活躍しているのが、大きな特徴でもありますからね。女性に対しての扱いが父親と明らかに違うことからも、女にだらしない正日氏を軽蔑していたはずです」(特派記者)

 正恩氏が“父親批判”する理由は分かったが、なぜ、このタイミングだったのか。国際ジャーナリストは「大きな危機を目前にしているため、求心力を高める狙いがあるのではないか」と分析する。

 10月23日に国連のキンタナ特別報告官が「北朝鮮は国民の半数近くにあたる1100万人が栄養不足に陥っていて、警告すべきレベルに達している」と述べている。
「さらに国際社会からの経済制裁によって重油も不足していて、冬が目前だというのに暖を取る方法がありません。このまま行くと、大量の凍死者や餓死者が出る恐れがある。正恩氏は先代の政策を堂々と批判することで自信を示し、求心力を高めて今冬に訪れる大きな試練を乗り越えようとしているのではないでしょうか」(同)

 さらに正恩氏が力を入れている大規模リゾート開発事業「元山葛麻海岸観光地区」の事業停滞が原因で軍から怨嗟の声が上がっているため、その溜飲を下げる狙いもあるという。
「多くの軍人を工事に駆り出していますが、経済制裁によって重油もなければ資材もないですし、工事は遅々として進んでいません。昨秋には、現地を視察に訪れた正恩氏を、一部の軍人が暗殺に動くという事件まであったと言われていますからね」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

 工事の完成目標は何度も延長され、’20年4月15日の「太陽節(金日成の誕生日)」には完成とうたっている。
「それも間に合うかどうか怪しいところ。そこで軍の溜飲を下げるためにも『わが国独自の方式で、金剛山を改善した』と、太陽節での成果にあげるつもりではないでしょうか」(同)

 父を否定しなければならないほど、北朝鮮も追い詰められているようだ。

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