六代目山口組 戦線拡大の裏にある最終計画 五龍会本部に車両突入

六代目山口組 戦線拡大の裏にある最終計画 五龍会本部に車両突入

(提供:週刊実話)

積雪が観測され、早くも本格的な冬を迎えた北海道で、予想外の事件が発生した。11月19日の午前8時ごろ、神戸山口組(井上邦雄組長)の直系組織で、青木和重幹部率いる札幌市の五龍会本部に、ワンボックスカーが突っ込んだのである。

 車両はバックで突入し、駐車場のシャッターや止められていた車のフロントガラスを破壊。犯行はこれにとどまらず、運転手の男は車両から降りて、スコップで本部の窓ガラスも壊そうとした。通報を受けて警察官が駆け付けると、男は関与を認め、建造物損壊容疑で現行犯逮捕されたのだ。

 実行犯は、六代目山口組(司忍組長)・三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)傘下の福島連合に所属する塚本大平組員と判明。六代目側が仕掛けたとして、業界内には事件の一報が瞬時に広まった。北海道警も両山口組による対立抗争の可能性が高いとみているようで、翌20日には札幌市内にある福島連合の組事務所に家宅捜索を実施した。

「事件自体は物理的な被害を受けたのみで、直前に双方で揉め事があったとも聞いていなかった。だから、六代目側、神戸側、双方の本部などに使用制限の本命令が出て、警察当局がピリピリしている時期に、なぜ犯行に及んだのか不可解だった。六代目側に何らかの戦略があって、今回の事件は始まりにすぎないという見方も関係者の間ではされている」(関東の組織関係者)

 福島連合のトップである福島康正会長は、この1週間ほど前に弘道会の舎弟頭補佐から舎弟頭に昇格。組織の中枢を担う執行部メンバーとなっていた。このことも、事件に影響を及ぼしているのではないかと、一部では取り沙汰されたのだ。

「舎弟頭ともなれば執行部内での発言力が増し、組織としての勢いもつくだろう。事件が起きる直前には、六代目側の髙山清司若頭が北海道入りしたという情報も出回っていたし、塚本組員の血の気が増す理由でもあったんじゃないか」(同)

 しかし、地元関係者らはこの見方を一様に否定した。

「ますます警察の締め付けが強まっているというのに、余計、刺激する結果になった。事件を引き起こすメリットなどないだろう」

「北海道には特有の利権がある。山口組分裂によって対立関係ができ、地元では利権を巡る混乱が続いていたとも考えられる」

 ただ、被害者側である五龍会・青木会長の経歴や、車両特攻の前日に熊本県でも神戸側が被害に遭う事件が起きていたことから、対立抗争との見方が強まっているのも事実だ。青木会長は山口組が分裂した平成27年末に、四代目誠友会(渡部隆会長=北海道)から処分を受けて脱退。神戸山口組への参画が噂される中、翌年の7月に加入が正式発表された。その直後、五龍会本部に車両特攻が発生し、誠友会系組幹部らが組織犯罪処罰法違反(建造物損壊)の容疑で逮捕されたのだ。

「つまり、ここへの車両特攻事件は二度目となるわけだ。五龍会本部は事務所と自宅を兼ねているから、今回の発生当時、青木会長も在宅していたようだ。福島連合の組員が逮捕されているし、弘道会による警告の意味があったように思うが」(前出・関東の組織関係者)

 ましてや、前日の18日には、熊本県で同じく神戸山口組の「幹部」である清崎達也・四代目大門会会長(熊本)が、同会事務所で六代目側・二代目伊豆組(青山千尋組長=福岡)系組幹部らに切り付けられる事件が起きていた。
「応対に出たところをいきなり攻撃され、清崎幹部の命に別状はなかったが、腕を縫うケガを負った。神戸山口組の直系組長に直接的な被害が及んだ事件で、実行犯の伊豆組系組幹部たちは、その後に出頭して殺人未遂容疑で逮捕されている。出頭したのは犯行を知らしめるためだったとも思われ、この事件にも警告がうかがえた」(山口組ウオッチャー)

★現地に“応援部隊”が

 また、六代目側・四代目石井一家(生野靖道総長=大分)と神戸側・池田組(池田孝志組長=岡山)との対立が続く宮崎県では、11月17日に再び衝突が起きており、双方とも逮捕者を出す事態に発展。

「早朝のことで、石井一家系組長と組員が歩いているところを、偶然にも池田組系組員が発見し、2人に迫ったようです。揉み合いに発展し、池田組系組員は杖のようなもので暴行したとする容疑で逮捕され、石井一家系組長たちも傷害容疑で宮崎県警に逮捕されました。この池田組系組員は以前、自宅近くで待ち伏せしていた男たちと衝突するなどしており、宮崎県内でも両山口組の対立が深刻化しているといえます」(全国紙社会部記者)

 宮崎での事件は突発的であったことがうかがえるが、熊本県で清崎幹部が刺傷された事件と、今回の五龍会本部への車両特攻には、計画性が感じられた。

「いずれの事件も朝方に発生し、清崎幹部を切り付けた伊豆組系組幹部たちは出頭、五龍会本部に攻撃を仕掛けた福島連合の塚本組員も、その日のうちに逮捕されたという共通点がある。塚本組員に関しては犯行後、すぐ逃走せずに敷地内で暴れ回るなど、警察官が駆け付けるまで、その場にいた。意図的でなかったにせよ、警察官を前に暴れることはなかったようだから、犯行当初から逮捕も覚悟の上だった可能性はある」(前出・山口組ウオッチャー)

 10月18日に髙山若頭が出所して以降、六代目山口組は立て続けに昇格人事を発表し、弘道会においても野内正博・野内組組長が統括委員長から若頭に就任するなど体制を刷新。そのため、熊本県と北海道で神戸山口組側が被害に遭う事件が相次いで起きた背景には、不穏さが感じられたのだ。

「神戸側は事件後、応援部隊を現地に送り込んだと聞くで。守りを固めると同時に、結束の強さを見せつけた格好やな。六代目側の思い通りにはさせない、いう意味もあったのかもしれん」(関西の組織関係者)

 なぜならば、両事件の発生場所と被害状況が、六代目山口組の意図を物語っているからだという。

「これまで、六代目側と神戸側の双方が本拠を置く兵庫県神戸市で事件が起きたやろ。4月に五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)の與則和若頭が刺され、8月には弘道会の神戸拠点で組員が銃撃された。さらに、髙山若頭の出所直前となる10月には、山健組本部近くで組員2人が射殺される事件まで起きて、神戸市内では警察も警戒を強めとる。

 ところが、熊本や北海道は静かやったし、山健組側が被害に遭ったわけでもなかったから、そこで事件が起きたこと自体が意外やった。せやけど、六代目側が全体を見渡した上で攻勢に打って出たのなら、まさに隙を突く格好で、敵は山健組だけやない、いうメッセージにも受け取れるで。拳銃を使わなかったのも、当初から威嚇が目的で、神戸側に動揺を与えようとしとったからなんやないか」(同)

 一方、本部近くで組員2名を射殺された山健組は沈黙を守っているが、報復が起きる可能性も指摘される。

「死亡した組員の四十九日法要が営まれるだろうから、危ないのは、それが終わって以降だ。矛先がどこに向くのか分からんが、自分たちのテリトリー内で犠牲者が出たことは大きい。名古屋という“敵陣”に乗り込む可能性も、ゼロではないとみている」(他団体幹部)

 六代目山口組は山健組による報復を見込んでいるためか、すでに厳しい規制が掛かる特定抗争指定を受けた場合に備えているという。

「具体的にどういった規制が掛かるのか、リスクなど各組織で周知徹底されたようだ。特定抗争指定を受ければ、警戒区域内で会合を開くこともできなくなり、複数人が集まっただけで即逮捕となる。あくまで状況説明であって、対策が通達されたわけではないが、“持久戦”になった際の準備を万全にしておくように、という意味が含まれているのは想像に難くない」(業界ジャーナリスト)

 特定抗争指定は、凄まじい戦いを繰り広げた道仁会(小林哲治会長=福岡)と、九州誠道会が平成24年に受け、実質的に抗争終結を早めたといわれた。この血の抗争も分裂が要因であるが、現在に至るまで合流は実現されていない。

「六代目山口組は再統合を掲げており、武力行使と政治的な動きによって、目的を遂げようとしているはずだ。特定抗争指定は通過点にしかすぎず、その中で敵対組織に代紋を下ろさせるという最終計画を、進めていくのではないか。熊本県や北海道での事件は“ジャブ”であり、これからが本番になってくるだろう」(同)

 警察当局も不穏さを感じているのか、弘道会の人事が刷新された直後の11月12日、竹内会長の“側近”といわれる組幹部を詐欺などの疑いで逮捕。警視庁と静岡県警が合同で捜査していた特殊詐欺事件において、被害者から金品を受け取る「受け子」を手配したとして、弘道会傘下の四次団体組員ら7人が一斉逮捕され、組幹部には指示役との疑いが掛けられた。

「“突き上げ捜査”やから、警察が躍起になっとるのが分かるで。今後も、あらゆる手を使って厳しい取り締まりをするんやろうが、牽制でしかないわな」(事情通)

 令和元年も残すところ約1カ月となったが、分裂から五度目の年越しは、波乱に満ちている。

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