森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★環境破壊で敵視される日本

国連環境計画(UNEP)が11月26日に発表した年次報告書で、2018年に排出された温室効果ガスが過去最高の533億トンとなったことを明らかにした。過去最悪更新は2年連続だ。

 世界の平均気温を産業革命前と比べて1.5度の上昇にとどめるためには、温室効果ガス排出量を’30年までに毎年7.6%ずつ削減しなければならない。しかし、排出量が増え続ける現状を考えると、その達成は不可能に近い。UNEPは、パリ協定で各国が表明した削減策が実行されても、今世紀末に世界の平均気温が3.2度上昇する可能性があるとしている。そうなれば、地球は壊れてしまう。10月29日に「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表されたプリンストン大学の研究では、海面上昇により今世紀末までに3億4000万人の住居が高潮で浸水するという。

 地球温暖化の被害は、未来の話だけではない。今年、ベネチアは3度も浸水の被害を受けている。日本も、昨年の西日本豪雨、今年の台風15号、19号が、甚大な被害をもたらした。異常気象の最大の要因は、海面温度の上昇。温暖化対策は、待ったなしなのだ。

 ところが温暖化対策の面で、いま日本は世界から冷たい視線を向けられている。二酸化炭素排出量の多い石炭火力を推進しているからだ。11月29日の中日新聞の報道によると、9月にニューヨークで開催された国連の気候行動サミットで、日本政府は安倍総理の演説を要望したが、国連から断られていたことが分かった。6月に日本がまとめた温暖化対策は、21世紀後半のできるだけ早期に温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを掲げたが、世界の多くが’50年という年次を明示して表明するなかで、時期を明示しないことが石炭火力推進ととらえられ、世界の不興を買っているのだ。

 本来なら、再生可能エネルギーをもっと活用すれば、よいだけなのだが、なぜ日本政府はそれをしないのか。

 おそらく、再生可能エネルギーが大きな地位を占めてしまうと、原発の出番がなくなってしまうからだろう。実際、政府は、住宅用や余剰売電を除く中規模(10kW以上)の産業用太陽光の固定価格買取制度を’19年度(買取単価14円)を最後に廃止する方針だ。

 たぶん経済産業省の論理立てはこうだ。現在、電気料金に上乗せされる再生可能エネルギー発電促進賦課金は、1kWhあたり2.9円まで高まっており、このまま続けると、家計の電気代負担が大きくなる。一方、世界から温室効果ガス抑制の圧力が高まっているため、温室効果ガスを出さない原発を再稼働するしか道がないというものだ。

 実際、東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機(宮城県)が、11月27日に再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で事実上合格した。東北の太平洋側では、過去に大地震や津波が繰り返されており、東日本大震災の際に女川原発が重大事故寸前だったという事実は、無視された。

 現在、稼働中の原発は、玄海、川内、高浜、大飯、伊方という西日本にある5原発9基だが、審査に合格して未稼働の原発が5原発7基存在する。福島第一原発が引き起こした環境汚染がどれだけ厳しいものであっても、政府は温室効果ガス削減という錦の御旗の下、再稼働を断行するのだ。

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