森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★銀行が庶民を切り捨てる

12月6日付の日本経済新聞が、〈不稼働口座に手数料三菱UFJ銀、年1200円〉と報じた。三菱UFJ銀行が、2年間取引のない不稼働口座について、2020年10月から口座管理手数料を取る検討に入ったというのだ。管理料を取り続けて残高がゼロになった口座は、自動解約する方針だという。銀行口座を放置しておくと、消滅してしまうという構造だ。当面は、新規開設口座だけが対象としているが、既存口座についても今後検討をしていくという。三菱UFJ銀行の個人口座は、4000万件程度あるが、そのうち2割、800万件程度が不稼働口座になっているとみられる、と日経新聞は報じている。

 実は、三菱UFJ銀行が導入しようとしている口座管理手数料は、すでにりそな銀行が導入しているものと、ほぼ同じ仕組みだ。りそな銀行は’04年4月以降に新規開設した口座について、2年以上、預入れや払戻しがない場合は、事前に文書で通知のうえ、年間1200円(消費税別)の手数料を徴収している。

 ただ、残高が1万円以上ある場合などは適用対象外。三菱UFJ銀行の場合は、この1万円制限の適用は報じられていないので、より影響が大きくなる可能性がある。

 また、三菱UFJ銀行は、紙の通帳も有料化の方針だという。さらに、880円を徴収している窓口での3万円以上の振込手数料を、来春にも1000円程度に引き上げ予定だという。

 LINEペイなど、スマホ払いのアプリでは、口座の管理手数料は取っておらず、手数料無料で送金もできる。なぜ大手銀行が口座管理手数料を取ったり、送金手数料を大幅に値上げしないといけないのか。

 私には、銀行が庶民を切り捨てにきたようにみえる。庶民が支店の窓口にやってくると、行員が相手をしなければならないから、人件費がかかってしまう。だから、庶民はネットやATMに追いやり、富裕層だけを相手にする。そうすれば、支店の人員を大幅に削減できるから、収益を確保できるという仕掛けだ。

 かつては、銀行口座を開設すると、貯金箱をはじめとするノベルティグッズがもらえた。しかし、バブル崩壊後くらいから貯金箱は姿を消し、これからは、口座を作ると毎年手数料を取られる時代になる。なぜこんな変化が起きているのか。

 それは銀行貸出に対するニーズが低迷して、銀行が本来の業務で稼げなくなってきているからだ。貸出需要の低迷は、企業が設備投資をしなくなったためだ。

 法人企業統計によると、企業が保有する現預金は、223兆円に達している。10年前は143兆円だったから、80兆円も増えたことになる。企業が資金をため込むことが問題なのだから、解決方法は簡単だ。法人税率を引き上げて、その分を消費税率の引き下げに回せばよい。そうすれば庶民の所得が増えて、消費が拡大する。消費が拡大すれば、企業も設備投資をするようになるから銀行の貸出も拡大して、庶民を切り捨てようとは、考えなくなる。

 政府税調は、膨れ上がる企業の内部留保への対策として、設備投資をした企業への優遇策を検討しているが、それは内部留保をため込んだ企業に補助金を出すのと同じだ。減税で一般国民の手取り所得を増やすなど、国民の方を向いた税制改革を考えるべきだろう。

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