南海トラフ、首都直下「ダブル巨大地震」Xデー

南海トラフ、首都直下「ダブル巨大地震」Xデー

(提供:週刊実話)

関東北部を震源とする震度3、4クラスの地震が、12月に入り続発している。NHKが『体感 首都直下地震ウイーク』と題し、12月1日から8日まで「首都直下大地震」についてドラマやドキュメンタリーなどを連続して放映している時期と重なったため、「首都直下地震近し」と思った読者も多いのではないか。

 まず、専門家はどう考えているのか。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。
「首都直下には、東から太平洋プレートが入り、南からはフィリピン海プレートがのびている。2つのプレートが入っているなんて、世界中でここだけですよ。一方、フィリピン海プレートの先端は茨城県にまでのびています。従って、同県は非常に地震が多い。12月3、4日に震度4の地震が続けて起こったのも、不思議ではないのです。しかし、気象庁は首都直下地震との関連性を聞かれると、『ない』と答えたそうです。正確に言うなら、これは今の地震学では『分からない』ということです」

 地震には海溝型地震と直下型地震があるが、そのいずれもが東京直下で発生する危険性がある。
「一連の地震の震源域がフィリピン海プレートの先端にあたるので心配です。フィリピン海プレートは年に4.5センチ動いていて、尚かつ、大きなエネルギーを溜め込んでいる。これが首都圏に大地震を引き起こす原因になる」(同)

 また、首都圏の現状についてはこう分析する。
「首都圏はいつ大地震が起きてもおかしくない状態です。元禄地震(1703年12月)から300年。2011年に東日本大震災が発生し、日本列島の地下深くにある基盤岩を動かしてしまった。宮城県の牡鹿半島は5.4メートル南東にずれた。首都圏でも30〜40センチ動いている。大震災によって数十年分が一気に移動してしまった。そのため、関東で地震の起こる周期が従来の想定より早まっている。30〜40センチのずれというのは非常に大きな動きに違いない」(同)

 東日本大震災以降、太平洋プレートが活性化し、各地で地震を起こしている。
「東日本大震災で富士山噴火や関東地震の時期も早まったうえ、日本中の基盤岩が壊れてしまいました。その影響がジワジワ出ている。地震は今後も増えていくでしょう」(同)

 首都直下地震の間隔も狭まった。直下地震の一つ、1855年の安政江戸地震以来、大正関東地震の間に1894年の明治東京地震が発生した。最近では1987年の千葉県東方沖地震、昨年も同地域でM6、震度5弱の地震が起きている。

 地震調査委員会は岩手県沖から千葉県東方沖にかけての広い範囲で「今後も長期間にわたって規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある」と注意喚起しているほど。

 目下、関東の各地で今年の干支であるイノシシが相次いで目撃されている。
「東京都足立区や埼玉県富士見市など、これまで余り目撃情報がないところで、イノシシが出没している。去り際に大地震の前触れを知らせているというのは大袈裟か。大阪・堺市の河川でイワシが大挙して遡上したことといい、非常に気がかりです」(サイエンスライター)

 また、近い将来発生が予想される南海トラフ巨大地震。直近では、東側半分のプレート境界が破壊されて発生したのが、1944年の昭和東南海地震だ。その2年後に、西側半分のプレートが壊れて昭和南海地震が急襲した。
「南海トラフの地震史を見ると、1854年には東側で安政東海地震が起き、約30時間後に、西側で安政南海地震が起きている。日本最大級の地震とされる1707年の宝永地震では、東西で一挙に起こった」(地震担当ライター)

★次の南海トラフは史上最大級

 では、次に起きる南海トラフ地震はどれくらいの規模になるのか。島村氏が解説する。
「南海トラフ地震は歴史上知られている限りでは、13回起きており、だいたい90年から150年くらいの周期です。前回の昭和南海地震から73年が経過している。しかし、昭和の地震は南海トラフ地震としては規模が小ぶりで、南海トラフの最北端の駿河トラフは壊れなかった。つまり、安政東海地震から165年間経っていますから、駿河トラフのある東側半分のプレートは相当なエネルギーが溜まっているはずです。次の南海トラフ地震は最大級になる怖れがあります」

 その駿河湾の異変が首都圏直下地震を誘発する見方もある。駿河湾で大きなエネルギーが放出されれば、東京も震度5強から6弱の揺れが想定される。
「安政東海地震の翌年の1855年に安政江戸地震(M7クラス)が江戸を襲っているが、これは安政東海地震によって刺激されて発生した地震とも考えられている。ちなみに、東日本大震災の直後、首都圏でも地震活動が活発化したのは、まだ記憶に新しいところです」(前出・サイエンスライター)

 予測できないのは、首都圏を走っている活断層で、これまで知られていない断層が激しく動くこともありうるのだ。
「恐ろしいのは、東京23区内の推定活断層が動くことです。推定活断層は資料が乏しく、詳しく調査をしない限り、明確な場所を特定できない。都内には約2000本走っているらしいが、もし、これが動くと大惨禍になりかねません」(全国紙社会部記者)

 南海地震や東南海地震が東海地震を誘発し、その東海地震が首都直下地震へと連鎖する可能性もあるといいう。これまで人類が体験したことがない超巨大地震の可能性について島村氏は「フィリピン海プレートが今、活性化しているので、可能性はなくはない」と否定しない。

 また、防災ジャーナリストの渡辺実氏はこう語る。
「理論上はないと思うが、あっても不思議ではない状況だと思う。869年には東日本大震災と同じ震源域で貞観地震が発生した。その9年後の878年にM7.4の内陸直下型地震(相模・武蔵地震)。2011年の東日本大震災で例えるなら、首都直下地震は2020年に起きる計算になる」

 もちろん、これは史実からの見立てであるが、備えあれば患いなし。南海トラフ巨大地震が先に起き、首都直下地震を誘発するケースなど様々な想定をしておかなければなるまい。

★大地震で怖い火災旋風被害

 さて、首都直下地震が発生した際、最も恐ろしいのは火災旋風である。火災旋風とは、地震の際、発生する炎の旋風(つむじ風)。大きな被害をもたらす現象である。しかし、発生条件やメカニズムはまだ分かっていない。竜巻に似た外観になることもあるが、東京都防災会議は1979年、「大震火災時における火災旋風の研究」という報告書をまとめている。

〈調査の結果、都が指定している避難場所約200カ所のうち、延焼の激しい地域に囲まれる27カ所は火災旋風の観点からきわめてきびしい環境下に置かれるものも出てくる〉

 報告書で名前が記されたのは、次の7カ所だ。
大田区 蒲田電車区一帯
世田谷区 羽根木公園一帯
新宿区・中野区 哲学堂公園一帯
中野区 公社鷲宮西住宅一帯
杉並区・練馬区 上井草スポーツセンター一帯
板橋区 公社向原住宅一帯
葛飾区 都営高砂団地一帯

 渡辺氏が火災旋風に遭遇した際の対処の仕方について伝授する。
「500メートル先に炎の柱が見えたら、避難してほしいですね。柱がどちらに行くのか、自分の方へ来るのかという見極めは難しく、素人ではなかなか判断できないところですが、すぐさまRC(鉄筋コンクリート)の硬い建物の中に入り、窓、扉を閉めることです。NHKの首都直下地震特集番組でやっていたように、地下に逃げ込んではダメです。熱風が来て、蒸し焼きになってしまう。番組上に問題があるのでNHKに連絡したところ、担当者は“今度再放送した時にテロップを流す”と言っていました」

 火災旋風が通りすぎる時の温度は700〜800度と言われる。言ってみれば、都内で火砕流が発生したようなもの。惨禍に巻き込まれないよう正しい避難の仕方を家族や学校、会社等で話し合ってほしいものである。

 火災による犠牲を逃れたとしても、首都直下地震のような人口密集地帯での災害は人による犠牲も出る。群衆雪崩である。
「帰宅困難者は1都4県で515万人に上ると見られている。東日本大震災の時がそうだった。ターミナル駅周辺に溢れる人、道路までハミ出して家に向かう人の光景は衝撃的だった。国の推計では、東京都内だけで352万人に上った。人が集中して動けなくなり、折り重なって倒れるのが群衆雪崩。言わば人災です」(前出・サイエンスライター)

 渡辺氏が続ける。
「満員電車は1平米に10人くらいいます。しかし、満員電車の乗客は全員目的が同じだから、押しくら饅頭、密室でも流れに身を任せておけばいい。ところが、人ごみは駅に行きたい人、会社に向かう人など目的が異なる。こういう中では1人だけ立ち止まったり、つまづいたりするだけで群衆雪崩が起きる可能性がある。群衆雪崩に巻き込まれないためには、傍らの路地や建物にエスケープして、その群衆から離れることです。NHKの番組の中でも『火災旋風がくる』と誰かが言ったために、一刻も早く逃れようと先を急ぎ、群衆雪崩が発生したという想定になっていました」

 令和の新しい時代は「受難の時代」になるのか。
「台風は大型化し、ダムは50年に1度という災害を想定して造ってあるのに、それ以上という災害が毎年起こる」(島村氏)
「平成も地震が多かったが、令和はさらに規模の大きな地震がもっと発生すると思う。まさに地震、火山活発化の時代です。そういう最中に東京オリンピックを開催するなんて…。何事もないことを、ただただ祈るだけです」(渡辺氏)

 東日本大震災で周期が早まったとしたら、2020年に首都直下と南海トラフがダブルで襲ったとしても不思議ではない。

関連記事(外部サイト)