森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★バブルは必ず崩壊する

「バブルがいつ弾けるのか、それを予測することは誰にもできない。ただ、バブルは必ず崩壊する」
 そう言ったのは、生涯をバブル研究に捧げた経済学者のガルブレイスだ。

 いまの世界経済は、明らかにバブルだ。なかでも最も激しいバブルを起こしているのは、米国だ。米国の株価は、過去最高値を更新し続けている。しかし、それは経済の好調を背景にしたものではない。その証拠に米国の長期金利は2018年秋まで3%だった。しかし、その後は低下を続けて、いまでは1.9%前後である。長期金利は経済の体温。経済が低迷して、体温が下がっているのだ。

 株価バブルの証拠は、まだある。元日銀副総裁で日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏が8月に『金融リスクと日本経済』という論文を発表した。その中で山口氏は、CAPEレシオという株価の割高指標を用いてバブルの分析をしている。同指標が25倍を超える期間がある程度続くと、バブルが崩壊するという。過去をみると、ITバブル時が79カ月、リーマンショック前が52カ月でバブル崩壊したが、今回はすでに67カ月が経過している。バブルは、いつ弾けても不思議ではないところに来ている。

 しかも深刻なのは、今回バブルが崩壊すると、中国がけん引して回復させるというシナリオが成り立たないことだ。中国経済に詳しい津上俊哉日本国際問題研究所・客員研究員によると、リーマンショックの後、中国は10年間で500兆元(8000兆円)にのぼる固定資本投資を行った。そのときの中国の投資がいかに凄まじいものであったのかを物語るもう一つの数字がある。リーマンショック後、中国はたった2年間で米国が20世紀の100年間に消費した1・45倍のセメントを消費したと、デヴィッド・ハーヴェイが、近著『経済的理性の狂気』のなかで述べている。しかも、その投資の一部は、いまや廃墟と化している。中国には従業員が誰もいない工場や誰も住まないマンションが生まれているのだ。中国政府は、いまだに6%の経済成長が続いているとしているが、それを信じる経済専門家はほとんどいない。中国経済はすでにゼロ成長、あるいはマイナス成長に陥っているという説もあるのだ。

 米国のバブルが崩壊したら、日本はリーマンショック時以上の被害を受ける可能性がある。大手銀行、農林中央金庫、ゆうちょ銀行などが、CLOという証券を大量に買い込んでいるからだ。CLOというのは、米国の金融機関が、信用度の低い企業に貸し付けた融資を証券化したものだ。つまり、米国の景気が悪化して返済が滞ったら、紙クズになる性格を持っている。リーマンショックが発生した原因は、低所得層への住宅ローンを証券化したCDOという証券の価格が暴落したことだった。つまり、いまの状況は、まさにリーマンショック前夜なのだ。

 米国バブルの崩壊は、経済の好調を背景に支持を得てきたトランプ大統領の政治生命が終わることも意味する。だから’20年、トランプ大統領はあらゆる手段を講じて、バブル崩壊を防ぎにくるはず。金融緩和の拡大、中国への制裁の段階的解除などだ。ただ、バブルは一度崩壊が始まると、誰にも止められない。その時期が’20年になる可能性はかなり高いのではないか。

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