〈企業・経済深層レポート〉 23年ぶり社長交代が意図する巨大流通グループ「イオン」の経営戦略

1月10日、国内の流通最大手イオンが、3月1日付で創業家出身の岡田元也社長が会長職に付き、吉田昭夫副社長が社長に昇格することを公表した。

 23年間もの長期にわたりトップに君臨し、イオンを大手企業に育てた上げた元也社長。優秀な経営者だっただけに、専門家からは突然の交代に驚きの声が上がっている。

 イオンの前身である「ジャスコ」を創り、現在のイオンの基礎を築いたのはカリスマ創業者岡田卓也・名誉会長で、元也氏は拓也氏の息子だ。1997年に社長に就任すると、2013年に経営再建中だったダイエーを子会社化。また、大阪に本社を持ち、全国展開していたスーパー「マイカル」を傘下に入れるなど、積極的に買収を仕掛けたことで、イオングループを店舗数約2万1000店、連結売上高で約8兆5000億円に達する巨大流通グループに育て上げた。流通業界関係者が交代の背景を語る。

「『中興の祖』とまで言わたやり手経営者の元也氏ですが、ここ数年、イオンが収益の核としてきた総合スーパー(GMS)、食料品中心スーパー(SM)を取り巻く経営環境が厳しくなっていて、今後の戦略に悩んでいました。そこで元也氏は、自ら身を引くことでトップの若返りを図り、突破口を開きたいと思ったようです」

 イオンの経営環境の厳しさは、直近の決算数字を見ても明らかだ。経営コンサルタントが解説する。

「’19年2月期決算の総売上高は約8兆5000億円で営業利益も対前年比0.9%増と一見順調に見えますが、GMS事業とSM事業の売上と利益は、ここ数年伸びていません」

 GMS部門の売上高は3兆800億円だが伸び率は対前年0%。営業利益は115億円で、売上高に対する営業利益率はたった0.4%だ。SMも売上高3兆2000億円ではあるが、対前年比0.2%減少。営業利益は252億円で同18%減となっている。

 とはいえ、イオン全体でみれば売上高は9期連続過去最高を更新している。

「GMSとSMの不振をカバーしているのが、金融部門と不動産部門です」(同)

 実際、金融部門の営業利益は約708億4000万円で対前年比1.5%増、不動産部門が約556億円で7.9%増だ。2部門の合計利益は1264億円となり、GMSとSMの併せた営業利益(367億円)を上回る。

 それならイオンはスーパーより金融や不動産部門を伸ばせば結果オーライとも思えるが、事はそう簡単にはいかない。

「金融部門の伸びは、スーパーの顧客が使用するATMの手数料、クレジットカード払いによって成り立っています。不動産部門の伸びもイオンモールに入る多数のテナント賃貸料がメインです。スーパーが核にならないと不動産も金融も立ち行かないのです」(前出・流通業界関係者)

 イオンの経営環境をよくするにはやはりGMS、SMの活性化が必須というわけだ。

 ゆえに、不安材料がある。米国ではすでにアマゾンなどのネット通販に対抗できず、老舗百貨店の経営破綻やショッピングモールの空洞化が起きているのだ。

「世界的金融機関クレディ・スイスが衝撃の予測をしている。米国内には’17年時点でショッピングモールが11万6000店あったが、このうち25%が’22年までには閉店に追い込まれるという。その波が近いうちに日本に波及してくるのは必至です」(外資系コンサルタント)

 イオンも、そうした事態を予測しているため、ネット通販などEC(電子商取引)部門の事業拡大を急ピッチで進めている。

「このEC事業を重要視しているのが吉田氏です。昨年、吉田氏はイギリスのネットスーパーを運営する『オカド』と提携。’21年までに5000億円を投資して、’30年にはネット通販で6000億円の売上を目指しています。また、吉田氏は実店舗がある強みを活かして、アマゾンなどのネット通販に対抗していくことも考えているようです。吉田氏の社長就任は、イオンがEC部門を強くするための経営戦略でもあるのです」(前出・流通業界関係者)

 一方で、今回の社長交代には別の目的があるともいう。

「36歳になる息子の尚也氏を、将来的には社長にさせるための戦略ともうわさされています」(財界関係者)

 尚也氏は外資系金融機関を経て、’15年にイオンに入社。現在、フランス発祥のオーガニック食品を扱うグループ内スーパー「ビオセボン・ジャポン」の社長をしている。

「元也氏は社長就任時、卓也氏からの世襲と批判されました。そこで一旦、吉田氏を社長に就任させることで世襲感を薄めようとしているのかもしれません」(同)

 どちらにせよ、イオンからしばらく目が離せそうにない。

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