森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★GDP半減の恐怖。

森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★GDP半減の恐怖。

(提供:週刊実話)

水際対策の封じ込めから感染防止と治療へと、軸足を移さなければならない。新型コロナウイルスに関して、専門家がそう口を揃えている。政府も2月16日に開いた専門家会議の議論を踏まえ、感染経路がたどれない患者が国内各地で出ることを前提とした対策に取りかかると方針を転換した。

 ただ、政府は重症患者や死亡者を抑制することを主眼にしているが、私は感染の拡大そのものが、大きな問題を引き起こすとみている。新型コロナウイルスは、ワクチンも有効な治療薬も現時点では開発されておらず、このままではパンデミック(爆発的な感染拡大)に結びつく可能性が否定できないからだ。

 20世紀に限っても、1918年のスペインインフルエンザ、1957年のアジアインフルエンザ、1968年の香港インフルエンザと、3回もパンデミックが発生している。新型コロナウイルスは、致死率はさほど高くないものの、ダイヤモンド・プリンセスでの大規模感染や屋形船でのタクシー運転手の感染などをみれば、非常に感染力が強いことは明らかだろう。

 パンデミックが発生すると人口の20〜30%が感染すると言われている。感染者のうち死亡するのは数%にとどまるだろうが、問題は経済に及ぼす影響だ。感染が明らかになれば、入院か少なくとも自宅待機になる。そうなれば、労働力とはならない。もちろん、在宅勤務に切り替えて、会議はネット回線を使ったテレビ会議というやり方はあり得るし、実際、そうしている会社も存在する。しかし、そんな対応が可能なのは、IT企業を中心にしたごく一部にとどまるだろう。

 そこで、仮に労働力が30%失われると何が起きるのかを計算してみた。細かい説明は省略するが、資本ストックと労働力を説明変数とするコブ・ダグラス型生産関数を推計して、労働力が30%失われたときに、国内総生産(GDP)がどうなるのかを計算したのだ。結果は、GDPが50%失われるというものだった。

 日本のGDPがいまの半分だったのは1981年のことだ。つまり、パンデミックが起きると、日本経済は39年前にタイムスリップしてしまう。

 それを防ぐための唯一の方法は、短期間でワクチンや治療薬を開発することだろう。例えば、インフルエンザは、ゾフルーザという新薬の登場で、短時間で治療が可能になった。ただ、問題は開発期間だ。ゾフルーザは、当初から有用性が高いとみられていて、先駆け審査指定制度の適用を受けて短期間での承認を得られたが、それでも’15年の臨床試験の開始から、製造販売承認が得られたのは’18年だ。今回は、そんな悠長なことは言っていられない。

 感染症の専門家に聞くと、すでにウイルスが分離され、培養が可能になったので、その遺伝子配列を解析すると、どのようなウイルスと似通っているのかが判明する。そうなれば、似通ったウイルスに有効な治療薬を次々に新型コロナウイルスの感染者に投与していくことで、治療薬に近付いていけるだろうというのだ。

 実際、海外では、新型コロナウイルスに効果を持つ可能性のある治療薬を発見したという報告がいくつも出されている。日本は世界と協力して、その検証に参加していくべきではないだろうか。

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