東京五輪 「1年延期」攻防戦 IOC再び強権発動へ

死者1万4000人以上を出し、アメリカで猛威を振るっている「インフルエンザ」が、実は「新型コロナウイルス」の感染者である可能性が高まっている。このため、国際オリンピック委員会(IOC)は東京五輪の中止・延期の検討を本格化。秋への延期は米テレビ局が拒否し、日米連携で来夏開催に緊急避難か。

 中国・武漢で発生した新型コロナだが、米国内での感染者数は2月末時点で22人。このため、当初は「対岸の火事」とばかり冷ややかに見ていたアメリカのトランプ大統領にとって、米国内で2600万人以上(死者1万以上)いるインフルエンザ対策の方が急務だった。

「ところが、ここに来て風向きが変わりました。米疾病対策センター(CDC)の調査で、インフルエンザ患者の中に新型コロナの感染者が混在していることが分かったのです。インフル患者が新型コロナに感染したのか、元々新型コロナだったのか因果関係は調査中ですが、全米に拡大するのは時間の問題。民主党の支持者が多いカリフォルニア州では『緊急事態宣言』が出され、すでにパニック状態。今年11月には大統領選挙が控えており、トランプ陣営は危機感を募らせています」(全国紙五輪取材班)

 現在、米国ではインフル患者に新型コロナ感染の検査を受けさせる準備を進めているが、感染者数が中国国内を上回る可能性もあるという。新型コロナの主戦場が中国から米国に拡大移転すれば、日米を行き来する人はゴマンといるため、5カ月後に迫った東京五輪の開催は事実上、不可能になるのだ。

 これらの情報は日本政府にも伝わっていて、2月15日には名古屋市内在住の60代日本人夫妻がハワイに渡航した際に新型コロナに感染した経緯もあり、事態を深刻に受け止めている。これまでは中国や韓国など一部地域からの入国を禁止するなど“水際作戦”を徹底してきたが、盲点を突かれた格好となり、政府は感染防止に躍起なのだ。

 安倍晋三首相は2月26日、「全国的なスポーツ、文化イベント等について今後2週間は中止・延期、または規模縮小」を国民に要請。さらに、全国すべての小中高校などについて、3月2日から春休みに入るまで臨時休校にするよう通達するなど、二の矢も放った。

 この要請を受け、国内ではスポーツ界で開催を延期したり、無観客で試合を行うなどが相次いでいるが、それでも収束の気配すら見せない新型コロナ感染は、極東から米国やイタリア、イランなど全世界へ拡大。これを見たIOCのディック・パウンド委員(カナダ)は2月25日、通信社のインタビューで「3カ月経っても事態が収束していない場合、おそらく中止を検討するだろう」と見解を示し、この“最悪のシナリオ”について開催可否の判断は「5月下旬が期限となる」との見解を示した。

 東京五輪組織委員会や小池百合子都知事は、トーマス・バッハIOC会長の「予定通り開催する」という言葉を信じ、パウンド氏の発言を個人的な意見としているが、大手広告代理店の五輪担当者はこう異を唱える。

「IOC委員の中で、英国、米国を主軸にカナダ、豪州、ニュージーランドなどのアングロ・サクソン派を束ねるのがパウンド氏です。数の上ではバッハ会長派に劣りますが、北米や英国のテレビ局の支持を得ています。彼の意見は、すなわちテレビ局の意向。IOCの財布を握る男だけに、バッハ会長も無視できません」

 日本としては、感染収束へ時間を稼ぎ、「10月への延期」をバッハ会長に働きかけているが、これは不可能。秋はNFL(フットボール)、NBA(バスケットボール)、MLB(大リーグ)、欧州各国のサッカーのリーグ戦開幕と重なり、巨額の放映権料をそれぞれに支払っている欧米のテレビ局は、時期がかぶる東京五輪の秋開催には断固反対するのは間違いない。

「五輪放映権料の返還訴訟に及びかねない」

 と明かすのは民放テレビ局幹部。

「1984年のロサンゼルス五輪以降、オリンピックは莫大なスポンサー料と世界各国のテレビ局から得る放映権料で成り立っており、IOCはテレビ局が納得しない秋の五輪開催は認めていない。前回の東京五輪当時(10月開催)とは取り巻く環境が一変している」

 そこで浮上してきたのが、五輪開催時期の「1年延期」案だ。1年中断して夏に開催すれば、アングロ・サクソン派のIOC委員も応じ、テレビ局の放映権料も手に入る。それより何より、最悪のシナリオである「中止」が回避できる。

 米国にとっても、新型コロナが収束しないまま東京五輪が開かれた場合、感染防止から、米国人選手の日本への入国審査が厳しくなると同時に、日本行きを拒否する選手も増えるだろう。そこで感染が確認されたら、選手村の封鎖にもつながりかねない。

 今夏に強行開催し、新型コロナの混乱で米国選手が不甲斐ない結果となれば、大統領選挙にも影響を及ぼす――。東京五輪の「1年延期」は、安倍首相のみならず、トランプ大統領の願いでもある。

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