〈企業・経済深層レポート〉新型コロナ直撃でキャンセル続出 沈没危機の“クルーズ船”業界

〈企業・経済深層レポート〉新型コロナ直撃でキャンセル続出 沈没危機の“クルーズ船”業界

(提供:週刊実話)

米プリンセス・クルーズの豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」(乗客・乗員定員3700人)にて新型コロナウイルスによる感染症の集団感染が問題になったことで、近年高まっていた“クルーズ船ブーム”が沈静化してしまうのでないかと、関係者らは懸念を強めている。

 このまま、クルーズ船業界は沈没してしまうのか。まず、ここ数年のクルーズ船ブームを解説する。
「国土交通省の資料によると、1989年頃から2015年まで、クルーズ船の日本人乗客数は20万人前後を推移していました。しかし、’16年に約25万人、’17年に30万人を突破し、’18年も32万1000人と、過去最多を更新しました」(全国紙記者)

 なぜ、ここまでクルーズ船は人気を集めていたのか。
「日本発着の外国船が増え、外国船の大型で素晴らしい外観を目にすることが増えた。その結果、豪華な大型客船に乗ってみたいという日本人が増えたのです」(クルーズ船業界関係者)

 実際、人気があるのは外国の大型客船だ。’03年に約5万人だった日本人乗客数が、’18年には20万人にまで増えている。
「さらにクルーズ船は価格が低下しました。外国の船会社は大型客船を何隻も持つところが増えています。それによって、食材や備品を大量発注でき、全体コストを引き下げられるようになったのです」(同)

 例えば、日本、香港、韓国を結ぶ1週間程度のクルーズなら7万円前後からのプランもある。
「クルーズ船は、『動くリゾートホテル』と呼ばれているように、乗船の目的が移動ではなく“滞在”にあります。船内では、飲食店、本格的エンターテインメントショー、大型プール、アクティビティー、カジノ、スパなどが充実していて、他の交通機関には絶対に真似できない。しかも、一部は別料金がかかるものもありますが、ほとんどの客船は3食の食事代、ショーやプール、アクティビティーの利用費は乗船代に含まれています」(同)

 ちなみに今回注目を受けたダイヤモンド・プリンセスの「16日間東南アジアツアー」は、最安値一人約20万円で、1泊で計算すると1万5000円以下となる。
「日本で高級なホテルに泊まると、平均で1泊2食付きで1万5000円ほどになります。それと比較しても、リーズナブルですからね」(観光業界関係者)

 価格の低下でクルーズ船の利用者は右肩上がりで増えていたが、その矢先に新型コロナが業界を直撃した。

 日本人向けにクルーズ船旅行を手配する大手旅行代理店関係者が語る。

「今年3〜4月の、アジアが寄港地に含まれるツアーでは、数百人規模でキャンセルが入っているクルーズ企画もあります。中には、大学生の卒業旅行でクルーズ船旅行を計画していたのに、万が一を考えて中止にしたと言う人もいました」

 クルーズ船業界に詳しい経営アナリストは、シニア層のキャンセルが相次いでいることを嘆く。

「クルーズ船は単価が安くなったとはいえ、メインの利用客はリッチなシニア層に支えられています。ところが、今回の新型コロナウイルスは、免疫力の低くなった年配の人がかかりやすい。隔離状態のクルーズ船は、特に危ないです。それだけにシニア層のキャンセルが相次いでいると聞く。治療薬が見つかるなど、事態が完全鎮静化しなければ、今後も予約に二の足を踏むシニア層が増え、業界は大きなダメージを受けることになりそうです」

 新型コロナウイルスに伴うクルーズのキャンセルは、日本の地方経済にも影響を及ぼしつつある。

「騒動が起きてから、日本各地で外国のクルーズ船の寄港キャンセルが相次いでいる。横浜や舞鶴などの国内8港では、客船の女王『クイーン・エリザベス』の春先の寄港キャンセルが決まった。共同通信の調べでは、国内主要10港で2月21日時点のキャンセルが206回に上っていることが明らかになっています。寄港地で乗船客の消費などによる経済損失は、数十億円規模。国交省調べでも、寄港数は2月だけでも昨年末の予定より4割減の見込み。損失は拡大の気配です」(同)

 プリンセス・クルーズの親会社「カーニバル」は、4月までアジア全域でのクルーズを停止した場合、純利益が1割程度の減益を強いられる厳しい見方を打ち出し、業界に衝撃を与えた。

「カーニバルのクルーズ船は年間1150万人近くが利用し、世界のクルーズ市場で5割程度のシェアを占めているだけに、1割の減益は大きい。中国や日本のアジアを、クルーズ船市場が今後、成長するカギと見て力を注ぎ始めた矢先でした」(同)

 クルーズ業界の視界が晴れるのはいつか。

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