北朝鮮 在韓米軍撤退へ圧力を強める「4週連続ミサイル発射」

北朝鮮 在韓米軍撤退へ圧力を強める「4週連続ミサイル発射」

(提供:週刊実話)

韓国軍合同参謀本部は3月29日、北朝鮮が東部の元山付近から短距離弾道ミサイルと推定される2発の飛翔体を日本海に向けて発射したと発表した。北朝鮮のミサイル発射は、3月2日に発射したのを皮切りに、3月だけで4回目となる。

 北朝鮮が1カ月の間に4度もミサイル発射を行ったのは、現在行われている北朝鮮軍の冬季訓練の一環だが、それだけが目的ではないようだ。

 多くの専門家からは「北朝鮮を窮地に追い込んでいる米国主導の経済制裁を解除してもらおうと、ミサイルで挑発している」という意見が上がっている。

「ただ、北朝鮮が発射したミサイルは、最大でも射程距離が600キロ。米国まで到達しないミサイルをいくら撃ったところで、トランプ大統領が関心を寄せるはずはありません。そうした事情は、金正恩党委員長も十分に承知しているはずです」(北朝鮮ウオッチャー)

 北朝鮮の一連のミサイル発射では、主体砲(射程約60キロの170ミリ砲)と呼ばれる「野戦砲」や、「240ミリ多連装ロケット」(射程同)といったロケット砲が登場している。

「DMZから韓国の政治・経済の中枢であるソウル(人口1042万人=韓国人口の約20%)までは、わずか40キロしかないことからも、このロケット砲はソウルをターゲットとしているのは明らかです」(軍事ブロガー)

 これらのロケット砲は、軍事境界線(DMZ)に配備済みだという。

 韓国の国防白書によると、北朝鮮と韓国の砲兵戦力は、韓国軍を1とすると北朝鮮軍が2.4となり、韓国軍が劣勢だ。

「北朝鮮が南北会談などで『ソウルを火の海にする』と威嚇できるのは、戦力数で有利に立っているためで、決して嘘ではないのです。ロケット砲によってソウル市民を“人質”にすることで、米韓連合軍の北朝鮮攻撃を抑止している。それに加え、在韓米軍人2万8500人、その家族約3万人をも人質にしているのです。このことからも、北朝鮮のミサイル発射は“在韓米軍の撤退”が目的の一つにあるのでしょうね」(軍事ライター)

 3月9日のミサイル発射時には、口径600ミリ級と推定される「超大型ロケット砲」(超大型放射砲=射程200〜600キロ)の使用が確認され、同ロケット砲の3連続発射試験に成功した可能性が高い。この連続発射成功の裏には、ある目的が隠されているという。

「これによって、米韓軍のキルチェーン(北朝鮮への先制打撃網)を事実上無力化したことになります。それを米国と韓国にアピールする意図もありそうです」(同)

★ミサイルで文政権を援護

 そしてもう一つ、ミサイル連続発射の目的は、米軍のドローンを使って金正恩氏を暗殺する計画「斬首作戦」を阻止することだという。

「今年の1月3日、イランコッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍の空爆で暗殺されましたが、この暗殺にはドローンが使用されました。それに怯えた正恩氏は、北朝鮮軍総参謀長や人民武力相らに『オレを暗殺させない方策を考えよ』と命じ、その回答が、今回の『軍事挑発』だったのでしょう」(同)

「軍事挑発」は、韓国の与党『共に民主党』および文在寅政権への“援護射撃”としての意味合いも持つ。

「韓国では、4月15日に国会議員300人を選ぶ総選挙が行われます。北朝鮮がミサイル発射を行って戦争の恐怖を助長すれば、安全保障を意識する保守(野党)よりも、平和安定の左派(与党)の指示票が多くなることが予測されます。左派与党の『共に民主党』と同じく左派政党である『正義党』に勝利させ、与党単独で定数300議席の6割、民主党が負けても正義党との連立で最低でも6割(過半数では法案を原則本会議に上程できない)を確保させ、親北政権を維持させるという目的があるのです」(国際ジャーナリスト)

 今回の国会議員選挙で親北左派が6割の議席確保、さらには’22年の大統領選挙で『共に民主党』の候補者が当選できなければ、北朝鮮としては大きな後ろ盾を失うことになる。それによる負の影響は計り知れないため、『共に民主党』を勝たせるために、積極的に選挙に介入しようとしているのだ。

「実際、北朝鮮の対外宣伝媒体『メアリ』は、韓国の保守系野党だけを激しく批判しています。特に脱北者としては初の地域選挙区候補で、保守系の資産家が多いソウル江南甲区から未来統合党候補として出馬した元・英国駐在北朝鮮大使館公使の太永浩氏を、酷い言葉を使ってののしっている。北朝鮮宣伝媒体の保守系野党と野党候補に対する非難が、韓国の左派有権者に送るメッセージであることは言うまでもありません」(韓国ウオッチャー)

 また、対韓国という意味では、別の意図もあるかもしれない。
「文政権は、弾劾を防ぐためにも今回の選挙には必ず勝たなければいけません。そんな切迫した文氏の状況に正恩氏が気づき、短距離ミサイル発射で強力な援護をしつつ、その代わりに資金援助を要求している可能性も否定できません」(同)

 新型コロナウイルスの流入を恐れる北朝鮮は、中国・ロシアとの航空便と鉄道の運行を停止し、事実上の鎖国状態。一方で、昨年から食糧難に陥っていて、国内は危機的状況だ。

 昨年の労働党全員会議で「国家統制力を失いつつある」と吐露した正恩氏は、ミサイル4週連続発射で朝鮮半島から在韓米軍の追い出しを図り、親北の韓国を併呑するという賭けに出た。

 果たして、この博打に勝てるのか。

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