森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★いまこそ財政について議論を!

安倍政権は5月27日に、総額32兆円の第二次補正予算案を閣議決定した。最大の支出は企業の資金繰り支援の11.6兆円、2番目が予備費の10兆円、3番目は医療体制の強化で3兆円、4番目は持続化給付金2兆円と続いている。10兆円という巨額の予備費は、今後の第二波に備えたもので、実際に使われるかどうかは未知数だが、これで第一次補正予算と合わせた補正予算の総額は57兆円となった。

 今回の補正予算の財源はすべて赤字国債で、それを事実上、日銀が全額買い取ることで賄われる。いまは緊急事態なので、誰も負担の話をしないが、このまま放置すると、財務省は来年度に大規模な増税を要求してくるだろう。東日本大震災の復興予算の前例があるからだ。

 東日本大震災の復興予算は、国家財政の部分では、3つの増税で賄われることになった。第一は、国家公務員の給与を7.8%削減すること、第二は法人税を10%上乗せする復興特別法人税、第三は所得税を25年間にわたって2.1%上乗せする復興特別所得税だ。

 ところが、公務員給与の削減と復興特別法人税は、たった2年間で廃止され、復興特別所得税だけが、いまだに課税され続けている。なぜ公務員給与の削減と法人税増税が2年間だけで廃止となったのかは謎だが、自民党政権がこの2つに後ろ向きだということは、はっきりしている。

 そうなると、今回、財務省は所得税の増税だけを主張してくる可能性が高い。令和2年度の所得税は20兆円だから、57兆円の補正予算額を25年間の所得税増税で賄おうとすると、所得税を11・4%上乗せする必要が出てくる。ただ、復興特別所得税があと17年も残っているから、合わせて13・5%もの上乗せが所得税に対してなされることになる。

 いま日本では所得が4000万円を超えると、最高税率の45%の所得税が課せられる。もし、コロナ特別税と復興特別税の両方がかかるとすると、最高税率は実質的に50%を超え、地方税の10%を加えたら60%を超えてしまう。そんなのは、大金持ちの話だから自分には関係のない話だと思わないでほしい。すべての国民の所得税額が、一律に13・5%増えることになるのだ。

 コロナ後の経済は、少なくとも数年間は元に戻らないとみられている。そのなかで、こんな大増税をしたら、経済は恐慌状態に陥ってしまうだろう。

 だからこそ、最も重要なのは、いまから補正予算の財源をきちんと議論すべきだということだ。先に述べたように補正予算に伴って発行される赤字国債は、全額日銀が買い取る。買い取った国債を永久に日銀に持ち続けてもらえば、国民に負担は発生しない。

 もちろん、政府は日銀に国債の利子を支払わなければならないが、ほぼ全額が国庫納付金の形で返ってくるから、政府の負担はないのだ。こうしたやり方は、財政ファイナンスとも呼ばれて、インフレを招く危険なやり方だという批判もなされる。

 しかし、今年4月の消費者物価指数(生鮮品を除く総合)は、前年比でマイナス0.4%だ。しかも、昨年10月に消費税率を引き上げた影響で0.5%上振れしているから、本当の物価上昇率はマイナス0.9%と、とんでもないデフレに陥っている。インフレの懸念は微塵もないのだ。政府は増税せずと宣言すべきだろう。

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