首都移転 有力候補地に浮上した「リニア中央新幹線」沿線

首都移転 有力候補地に浮上した「リニア中央新幹線」沿線

(提供:週刊実話)

自民党で長らく塩漬けにされていた首都機能移転議論が再燃している。背景には、新型コロナウイルス感染拡大による首都機能マヒを警戒してのものだ。移転先の最有力候補として急浮上しているのがリニア開通で東京から40分圏前後とされる中部・畿央圏の2カ所。これらの地区は移転の旗振り官庁の国交省、内閣府などに大きな影響力を持つ、安倍首相、二階幹事長、菅官房長官とも縁が深い。

 一連の経緯を全国紙政治部記者が解説する。

「新型コロナ感染者は、7月31日に東京で400人を突破し、どうにも手がつけられない勢い。東京が1日1000人単位の大流行になったら、中央省庁や大企業の本社が集中している首都は封鎖だ。そうなれば、日本全体が機能不全に陥り日本沈没となる。こうした事態を踏まえ、自民党内では、リスク回避のために東京一極集中を早急に是正へと動き出した。さらに、経済効果が期待された東京五輪は、世界の感染状況を見ても中止が濃厚。今後の日本経済成長の目玉事業が消えつつある。そんな中、首都機能移転は30〜40兆円の経済効果が期待できる。だから安倍政権は目の色を変えだしたんです」

 自民党内では首都機能移転を睨み、6月に『社会機能の全国分散を実現する議員連盟』(会長・古屋圭司元国家公安委員長)が設立され、年内に提言をまとめる予定だ。このほか、安倍首相の弟、岸信夫衆院議員ら中堅・若手約20人が中心となり、首都移転の勉強会を開く。ポスト安倍の石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長も7月に相次いで首都機能移転に言及した。

 首都機能移転の一連の経緯を振り返ると、そもそもは1990年代に議論が本格化した。自民党ベテラン議員が述懐する。

「1990年前後、東京23区内の土地価格でアメリカ全土が購入できるといわれたほど東京は異常なバブル経済に陥った。そのため『東京一極集中の緩和』が叫ばれ、国会等移転審議会が設置された」

 試算では、首都機能施設建設には総額20兆円(東京都試算)の資金と2000万坪前後の広大な土地が必要だ。国会、霞が関移転で、中央官庁の職員など関連人口は約60万人となり、静岡市規模の都市となる。

 候補地の選定規準として、(1)混雑、過密回避のため人口100万人都市から離れた場所(2)電力、水源豊富(3)地震など災害の心配が低い(4)飛行場や鉄道の便がいいとされた。その結果、最終的に『栃木・福島』、『岐阜・愛知』、『三重・畿央』などが主要候補地として小渕内閣に答申された。1999年のことだ。

「しかし、移転費用が20兆円と莫大なうえ、すでに大企業本社が軒並み東京に集中していた。財界は猛反対、加えて当時の石原都知事の反発で、首都移転は下火となった」(同)

 ただ2011年、東日本大震災が起きると、大都市被災の危機管理の観点から再び首都機能移転の話が燻り始め、そして、新型コロナ感染拡大の現在へと繋がるわけだ。

「首都移転を加速させているのは、リニア中央新幹線の開通だ。通過地域の静岡県とは工事着工をめぐり揉めているが、一応、2027年予定で進行しており、東京―名古屋間が40分圏になる。つまり、国会、行政機能は新首都に移し、企業は東京に本社を置き金融経済都市として継続する。国との連携もスピード対応できる。もう1つ、移転を強烈に後押しているのは、コロナで普及しつつあるテレワークです」(同)

 内閣府が6月に行った意識調査では、就業者の34・6%がテレワークを経験、遠方でも仕事に不都合を生じない結果が出た。冒頭の政治部記者が指摘した30〜40兆円の経済効果も現実味を帯びてくるのだ。

 さて、そうなると最終候補地はどこか。霞が関官僚が明かす。

「現在の最有力は、1990年代候補地の『岐阜・愛知』地区、『三重・畿央(奈良、滋賀、京都)』地区です。いずれも、リニア新幹線予定新駅に近い。『岐阜・愛知』は多治見市、豊田市などが含まれる。自民党議連会長の古屋議員は岐阜選出。しかも、古屋氏は首相の父、安倍晋太郎元外相秘書から政界入りし、首相とは成蹊大時代の同窓です。安倍内閣で初入閣を果たすなど首相側近だ。そして、愛知には日本最大の企業、世界のトヨタがある。『三重・畿央』は京都、奈良を含み、伊勢神宮にも近い。伊賀地方の高原地帯は地盤が固い。二階幹事長の選挙区、和歌山にも近く庭のようなもの。ここに移転すれば、二階氏の功績は後世に語り継がれるでしょう」

 菅官房長官は首都移転の旗振り役となり、国交省、内閣府など人事面から霞が関を牛耳る。また、二階幹事長は自民党が2013年に掲げた10年で200兆円を投資するとされた『国土強靭化』の自民党責任者で、インフラ投資のドン。首都機能移転も二階―菅ラインで推し進められるはずだ。

 かつての候補地『栃木・福島』はどうか。

「那須野が原は、東京から車で2時間とアクセスはいいし、霞が関がすっぽり入る約120万坪の国有地もあるが、経済効果は2つの候補地ほど見込めない」(同)

 コロナ同様、小池都知事は首都機能移転に「東京一極集中是正が日本の成長や発展につながるとは思えない」と国に猛反発している。安倍政権は7月17日に一極集中是正方針を閣議決定した。いよいよ経済効果40兆円事業が動き出す。

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