女帝・金与正 「金正恩動向」前に台風トップニュースの異例

北朝鮮で「金正恩動向」前に台風への警戒報じる 人民の生活を最優先する与正氏の意向

記事まとめ

  • 北朝鮮で台風8号が接近した際、「金正恩動向」前に台風への警戒が報じられた
  • この報道姿勢は金与正氏の意向に沿ったもので、異例中の異例と言えるという
  • 北朝鮮が自国の災害について大々的に報じることは、これまでほとんどなかったという

女帝・金与正 「金正恩動向」前に台風トップニュースの異例

女帝・金与正 「金正恩動向」前に台風トップニュースの異例

(提供:週刊実話)

最近の北朝鮮では異変が次々と起きている。8月26日から27日にかけて、台風8号「バービー」が朝鮮半島に接近した際、金正恩朝鮮労働党委員長の動静を伝えるニュースよりも先に、臨時で台風への警戒が報じられたのだ。

「朝鮮中央通信は8月26日、朝鮮労働党政治局拡大会議と政務局会議が、25日に相次ぎ開かれたと報じました。会議では正恩氏が、新型コロナウイルスの防疫対策について指摘し、台風8号の接近に備えた緊急対策についても討議されました。その際、正恩氏は『人命被害を徹底的に防ぎ、なおかつ農作物被害を抑えることは、一瞬もおろそかにできない重大な問題だ』と強調したそうです」(北朝鮮ウオッチャー)

 この報道姿勢は、人民の生活を最優先するという金与正党第1副部長の意向に沿ったものだが、異例中の異例と言える。北朝鮮が自国の災害について大々的に報じることは、これまでほとんどなかったからだ。

「加えて違和感を覚えるのは、従来、北朝鮮の最高指導者が会議に出席した場合、会議を“指導した”という表現が使われてきました。ところが、6月7日の党政治局会議や7月2日の党政治局拡大会議では、一様に“司会した”と報じられています。つまり、指導ではなく司会なら、たとえ成果が出なくても『自分の責任ではない』と言い逃れができるからです」(同)

 実際、新型コロナの影響や自身の健康問題もあって、正恩氏の現地視察の回数は急減しており、その代わりに幹部会議や記念行事への出席でお茶を濁している。経済状況のさらなる悪化で、正恩氏が現地指導したくても成果を強調できる場面がない。そもそも国政に対する自信を失って、表に出たがらないのだ。

「韓国統一省は8月25日の国会報告で、北朝鮮が国際社会の経済制裁や新型コロナの感染拡大に伴う中朝国境の閉鎖措置、最近の豪雨による被害といった三重苦に直面していると説明した。対中貿易の今年前半期の総額は約4億1000万ドル(約437億円)で、前年同期から67%も減少している。対外貿易の9割以上を対中貿易が占める北朝鮮にとって、餓死者が出た1990年代後半の状況に近づきつつある」(同)

 この事態に正恩氏は、呆然として立ち尽くしているようだ。今や2010年代の経済回復時に貯めた貯金を使い切っており、その困窮ぶりは国全体の士気にも悪影響を及ぼしている。8月18日から28日まで、米韓両軍の合同指揮所演習が行われたが、弾道ミサイル発射などの対抗措置をとる様子もなかった。

「11月の米大統領選を見据えて挑発を控えていることに加え、新型コロナや水害被害への対応など、内政を優先せざるを得ない事情があります。また、飢餓に直面している軍の暴発やクーデターを恐れて、何も手を打てないのです」(国際ジャーナリスト)

 また、正恩氏の健康不安と相まって、与正氏の後継急浮上については「垂簾聴政」説が有力だ。

「垂簾聴政とは、皇帝が政務を執り行えない場合に、皇后や皇太后のような女性が権力を握って摂政政治を行うことです。女性である執政者が、男性である朝臣と直接対面するのを避けるため、皇帝の玉座の後ろに御簾を垂らし、その中で政務を行ったことで、こう呼ばれています。朝鮮半島の歴史では李氏朝鮮の時代に見られた施政で、執務不能に陥っている正恩氏の代行役として、妹の与正氏が政治をつかさどる、これが正恩氏の描く危機管理のシナリオでしょう」(同)

 7月27日、朝鮮戦争の停戦協定67周年記念式で、正恩氏は軍の主要指揮官らに自身の名前入り拳銃を授与したが、これを最後に与正氏は1カ月以上も姿を見せていない。北朝鮮ではナンバー2としての処遇を受けた途端、その地位を剥奪される事例が続いており、たとえ与正氏が白頭血統(最高指導者の直系血統)であっても、身構えるのは当然だろう。

 来年1月に予定されている党大会をきっかけに、北朝鮮は経済の中央集権化を図るという。しかし、そうなると既得権を奪われる軍が黙っていないだろう。平壌の支配者層や市民のために軍の備蓄米まで取り上げられ、すでに不満は頂点に達している。仮に軍によるクーデターが起きるとすれば、中心人物と目されるのが李炳哲党中央軍事委員会副委員長だ。

「李炳哲氏は核・ミサイルなど戦略兵器の開発を担当し、最上級の特権を与えられている人物。正恩氏に面と向かってタバコをふかしても、とがめられることがないそうです」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

 終戦直後の1945年8月24日、帰国する数千人の朝鮮半島出身者を乗せた輸送船「浮島丸」が、京都の舞鶴港沖で沈没した(浮島丸事件)。それから75年を迎えた8月24日、北朝鮮の「朝鮮人強制連行被害者・遺族協会」が、日本に対して謝罪と賠償を求めてきたという。

「日本政府は機雷に接触したことを沈没の原因としていますが、北朝鮮の生存者と遺族は、日本が意図的に船を爆発させたと主張しています。これを機に日本と接触し、米国との橋渡しを企図しているのではないでしょうか」(前出・国際ジャーナリスト)

 しかし、安倍晋三首相が退陣を決めた現在、このような目論見も途絶えようとしている。北朝鮮の迷走はやはり根が深い。

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