台風19号3カ月 復旧工事進む福島・本宮 目立つ空き家、転居する人も

台風19号3カ月 復旧工事進む福島・本宮 目立つ空き家、転居する人も

浸水した自宅の乾燥を続ける高橋一郎さん=福島県本宮市本宮で2020年1月9日午後2時55分、寺町六花撮影

 台風19号の上陸から12日で3カ月となる。安達太良川の堤防決壊で甚大な浸水被害を受けた福島県本宮市本宮の舘町地区では、被災家屋の復旧工事が進む一方、住民が転居を決めたため、空き家となった住宅も目立つ。住み慣れた土地にとどまることを選んだ人々は、地域への愛着を感じながらも、人けの減った町の様子を心配している。

 高橋一郎さん(86)は避難している大玉村の借り上げアパートから舘町地区に通う。浸水した自宅を乾燥させるためだ。家を解体し引っ越すことも考えたが、市による住宅取り壊しの申請期限を迎えた昨年末、迷った末に自宅を改修し、地区に残る決断をした。

 妻と長女の3人で暮らしていた築25年以上の自宅は床上2・3メートルまで浸水。1階の畳はめくれ上がり、家財道具はすべて処分した。

 人生で初めてのアパート暮らしは、隣近所の物音が気になる。「また水害が起こる可能性はある。それでも残りの人生の年数を考えれば、新しい土地で人間関係を作るのはストレスがたまる」。妻も「近所の人とおしゃべりがしたい」と舘町地区での生活を希望しているという。

 現在は大工の最終的な見積もりを待つ。借り上げアパートの入居期限は今年の10月だ。「復旧は進まないけれど、焦らずにいるよ」と構えている。

 「いつも来てくれたお客さんも、家を買って出て行ってしまった」。今月8日に美容室の仮営業を始めた安達ふみ子さん(69)はそうつぶやく。

 店舗兼住宅は床上2・5メートルまで浸水し、店のほとんどの道具が使えなくなった。一時は再開を諦めたが、常連客の声に後押しされた。

 住宅部分の1階は改修工事中で、2階での不便な生活が続く。自宅を乾燥させるために1階部分の床をはがした後、家の中は冷え込みが厳しくなり、夫は体調を崩して入院した。店と病院を行き来する日々。「先は見通せないけれど、店はやれるだけやろう」と決めている。

 舘町地区の町内会長を務める門馬秋夫さん(76)によると、町内会106世帯のうち、昨年末までに9世帯から転居の報告があった。町内会費の徴収も滞るようになり、当面は徴収自体を見合わせることにした。地区の集会所も浸水し、新年会など恒例行事も開催は未定だ。改修か転居か、費用の不安や家庭の事情から決断できない住民も多くいるという。

 床上1・8メートルが浸水した門馬さんの自宅は、大みそかにようやく1階部分での生活ができるようになった。明かりの消えた夜の町に、「山の中の一軒家にいる気分」とこぼす。「一軒ずつでも夜に明かりがついてくれればいい」と願うが、どれくらいの住民が戻るかは不透明だ。

 地区に住み続ける以上、次にいつ水害が来るかはわからない。だからこそ従来通り、地域の防災訓練を入念に続けていくつもりだ。「命さえあれば、復興はできる」と信じている。【寺町六花】

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