笑顔と涙のラストラン みやこ浄土ケ浜遊覧船、「三陸の絶景ここに」58年の歴史に幕

笑顔と涙のラストラン みやこ浄土ケ浜遊覧船、「三陸の絶景ここに」58年の歴史に幕

地元の山口太鼓などに見送られながら坂本繁行船長(72)、鳥居栄運航管理者(70)、ガイドの金沢明美さん(62)らの操船でラストランに出航する、みやこ浄土ケ浜遊覧船「第16陸中丸」=宮古市日立浜町で、2021年1月11日午後1時44分、中尾卓英撮影

 三陸を代表する景勝地を巡る観光船「みやこ浄土ケ浜遊覧船」は11日、58年の歴史に終止符を打った。東日本大震災で唯一、難を逃れた「第16陸中丸」のラストランやセレモニーがあり岩手県宮古市内外から集まった263人が乗船。その雄姿と、三陸リアス式海岸の景勝美をまぶたに焼き付けた。【中尾卓英】

 この日は家族連れやカップルが早朝から集結。宮古湾を約40分航行して浄土ケ浜や高さ40メートルのローソク岩など天然記念物を巡った。この道24年のガイド、金沢明美さん(62)が名調子で案内し、灯台守を描いた名画「喜びも悲しみも幾歳月」の主題歌も披露。盛岡市の団体職員、清水崇さん(47)は長男朝陽(あさひ)さん(13)ら家族4人で乗船し「絶景はここにしかない」「ウミネコの餌づけが単純に楽しかった」と名残を惜しんだ。

 遊覧船は1962年に「第1陸中丸」が就航。東北新幹線の開通を受けた80年代のピーク時には修学旅行客ら年十数万人を集め、10隻のクルーズ船が浄土ケ浜から田野畑村、山田町など4コースを巡った。震災後も第16陸中丸が運航を続けたが、利用客は年3万人台に落ち込んでいた。

 約35年勤務した船長の坂本繁行さん(72)はこの日も舵(かじ)をとった。震災発生時は停泊中の船を沖出しして被害を免れ、ウミネコパンなどで2日間飢えをしのいだ。「浄土ケ浜が好きで何度も来てくれたファンに安全運航で感謝を示せた。趣味の庭いじりなどで休みたいが、自分の経験を後輩に伝える機会があれば」と話した。

 16年間遊覧船事業に携わった八重樫真・県北バス同事業部長(57)は、笑顔と涙でこの日を迎え「ラストランイベントでは郷土芸能や飲食業者らが参加してくれ、三陸沿岸の観光の魅力と民間の底力を示すことができた。きっと明日につながる」と前を見据えた。

 宮古市は先月、新しい船を建造したうえで、2022年のゴールデンウイークから遊覧船を運航する考えを示している。

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